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私の隠し事、彼の秘め事
25.あんたはこれで報告できそうか?
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「……素直だな」
唇が離れた。
私の呼吸は乱れている。恥ずかしすぎてルビを見ることが出来ず、腕で顔を隠した。
「……嫌じゃないから」
「そうか。俺も、好きだ」
ルビは私に好きだとよく告げる。人間の恋愛感情とは違うのだろうと彼は言うけれど、そもそも普通の恋愛感情がよくわからない私からしてみれば、そんなことはどうでもいいことだ。
ルビは私を好いている。それは嘘偽りない気持ちだ。
ルビが私の耳元に唇を寄せた。
「続きは家でゆっくりしよう」
囁かれて、私はこくこくと頷く。オパールに見せつけておくためなのだろうけれど、こんなのはずるい。まだ心臓はバクバクと激しく運動しているし、全身が熱くてたまらない。ただの口づけのはずなのに。
「――あんたはこれで報告できそうか?」
ルビはいつものお仕事のテンションで、起き上がるなりオパールに言い放った。
「お、おう。このまままぐわうんじゃないかって、一瞬期待した……君、仕事なら、女も抱くんだろ?」
「さすがに見せつけるのはここまでだがな」
「ルビってやっぱすごいんだな……」
「オパールだって遊ぶときは遊んでいるんじゃないのか?」
「否定しないが、オレは彼女に本気だった」
「……そうか」
私が動けないのがわかったのか、ルビは私を横抱きにしてベッドに下ろしてくれる。
――ルビさんは仕事でならそういうことができるんだな……いや、私もたぶん、そういう選択をするんだろうけど。
感情で動くわけじゃない。私たちにとって、肌を合わせることは仕事と同義なのだ。必要だったらするし、必要ないからしないだけ。
――でも、なんか靄るな。
ルビに煽られてその気になってしまったのだろうか。彼は別にそういうつもりはなかった、それが不満なのだろうか。
私がじっとルビを無言で見つめると、彼は苦笑した。
「なんだ、オパールに見せてもいいなら、期待に応えてやらんでもないぞ。そのほうが、あいつのためになるかもしれないし」
「報告ができるから?」
「気持ちの問題だ」
ルビはそう答えて、私の次の質問を口づけで奪った。
「んんん……」
抵抗しようとした私の手はあっさり捕まえられてまとめて枕に押しつけられる。
「や、そんなにされたら、だめ」
「今日は本当に素直だな」
残念そうな声。ルビはきっとこれ以上のことはしない。
「だが、もう眠ったほうがいい。家に帰ったら、ちゃんと――」
「ルビさん。一緒に家に帰りましょうね」
この仕事は、一緒に家を出ても一緒に戻って来られるとは限らない仕事だ。今さら、なぜかそれを強く意識した。
――私は、ルビさんと一緒に生きたいんだな。
私がニコッと笑うと、ルビははにかんだように笑った。
「当然だろ」
「……おやすみなさい」
眠い、と思ったときには意識を手放していた。
唇が離れた。
私の呼吸は乱れている。恥ずかしすぎてルビを見ることが出来ず、腕で顔を隠した。
「……嫌じゃないから」
「そうか。俺も、好きだ」
ルビは私に好きだとよく告げる。人間の恋愛感情とは違うのだろうと彼は言うけれど、そもそも普通の恋愛感情がよくわからない私からしてみれば、そんなことはどうでもいいことだ。
ルビは私を好いている。それは嘘偽りない気持ちだ。
ルビが私の耳元に唇を寄せた。
「続きは家でゆっくりしよう」
囁かれて、私はこくこくと頷く。オパールに見せつけておくためなのだろうけれど、こんなのはずるい。まだ心臓はバクバクと激しく運動しているし、全身が熱くてたまらない。ただの口づけのはずなのに。
「――あんたはこれで報告できそうか?」
ルビはいつものお仕事のテンションで、起き上がるなりオパールに言い放った。
「お、おう。このまままぐわうんじゃないかって、一瞬期待した……君、仕事なら、女も抱くんだろ?」
「さすがに見せつけるのはここまでだがな」
「ルビってやっぱすごいんだな……」
「オパールだって遊ぶときは遊んでいるんじゃないのか?」
「否定しないが、オレは彼女に本気だった」
「……そうか」
私が動けないのがわかったのか、ルビは私を横抱きにしてベッドに下ろしてくれる。
――ルビさんは仕事でならそういうことができるんだな……いや、私もたぶん、そういう選択をするんだろうけど。
感情で動くわけじゃない。私たちにとって、肌を合わせることは仕事と同義なのだ。必要だったらするし、必要ないからしないだけ。
――でも、なんか靄るな。
ルビに煽られてその気になってしまったのだろうか。彼は別にそういうつもりはなかった、それが不満なのだろうか。
私がじっとルビを無言で見つめると、彼は苦笑した。
「なんだ、オパールに見せてもいいなら、期待に応えてやらんでもないぞ。そのほうが、あいつのためになるかもしれないし」
「報告ができるから?」
「気持ちの問題だ」
ルビはそう答えて、私の次の質問を口づけで奪った。
「んんん……」
抵抗しようとした私の手はあっさり捕まえられてまとめて枕に押しつけられる。
「や、そんなにされたら、だめ」
「今日は本当に素直だな」
残念そうな声。ルビはきっとこれ以上のことはしない。
「だが、もう眠ったほうがいい。家に帰ったら、ちゃんと――」
「ルビさん。一緒に家に帰りましょうね」
この仕事は、一緒に家を出ても一緒に戻って来られるとは限らない仕事だ。今さら、なぜかそれを強く意識した。
――私は、ルビさんと一緒に生きたいんだな。
私がニコッと笑うと、ルビははにかんだように笑った。
「当然だろ」
「……おやすみなさい」
眠い、と思ったときには意識を手放していた。
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