一花カナウ

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 夢の中は雨であることが多かった。


 場面が見知らぬ街であったり懐かしい故郷だったとしても、その全体は雨で霞んでいる。そしてそこの空気は嫌悪感を覚えるもので、そのときはっと目が覚めるのだ。




 夢にストーリーなど存在しない。否、単に覚えていないだけかもしれない。


 夢の中の感情を現実にそのまま引きずってしまうぼくの心と呼応するかのように、夢の中の雨は現実世界でも続いていた。


 商店街を彷徨う自分の中にぼくは戻った。


 どこをどう歩いたのか、もはや思い出せない。商店街の脇にそれて店の終わりのような場所に出ていた。


 見たことのない場所だ。


 中心部の現代的な建物が支配している空間とは違い、数十年前の木造建築の家屋が隙間を埋めて建っている。


 振り向いて来た道を確かめるが、いまいちこの場所がどこなのかわからない。アーケードの屋根すら見えず、いつの間にか髪から滴が落ちていた。


 弱った。


 高いビルは遠くに幾つか群をなして立っているも、どれも無個性でランドマークには適さない。さらに遠いところにある建築物なら場所を少しは絞れたのだが、生憎この雨で視界は悪かった。
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