魔導師として宮廷入りしたので、殿下の愛人にはなりません?

一花カナウ

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魔導師として宮廷入りしたので、殿下の愛人にはなりません?

密かに誓って

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 それはさておき。

「――メルヒオールは私のことが嫌いなんですか? 世話を焼いてはくれましたけど、色仕掛けにも無反応で面白くないんですが」

 メルが嫌がった、と聞いて、私は少し傷ついていた。
 メルヒオールは恩人で、いつか親友になれるだろうとも思っている男性だ。性的に興味を持ってほしいと願っているわけではないが、自分が持っている知識や技術は男性に奉仕することに今でも偏っている。何かしてやりたいのにできないのはもどかしい。
 私が膨れると、リシャール殿下はくすくすと小さく笑った。

「メルには想い人がいるのです。彼女のために、遊ぶのは控えているそうですよ」

 そんなことしてないで、もっと楽しめばいいのに、とリシャール殿下の言葉は続く。私もその言葉には同意だ。

「片想いってことですか? 彼ほど引く手あまたな人材はいないと思うのですが」

 メルヒオールのように容姿も魔導師としての能力も知性も持ち合わせている人間はそういない。告白してしまえば、どんな女性でもすぐに手に入れられるだろう。なのにそうしないということは、家柄の事情で断られる可能性が高い相手なのだろうか。

 そうでなければ、偽名や今の立場だとまずい相手ってことよね?

 どんな相手を想っているのだろうかと、私は好奇心で思わず訊ねていた。

「未成年者に手は出せないから、と。彼女が宮廷魔導師になるのを待っているのです」
「あー、なるほど。メルヒオールは生真面目ですもんね」

 未成年……そうか、そういう場合もあるか。でも、求婚してしまえばいいんじゃない? 婚約者ではいけないのかしら。

 メルヒオールの想い人を思い浮かべる。もしその人と関わりができたなら、全力で応援しようと密かに誓った。

「――ところで」

 私の頬に手が添えられて、目と目を合わさせられた。リシャール殿下の瞳がちょっと怒っている。

「メルに色仕掛けをしたとのことですが、今後は全て私に対してのみ使用するようにしてくださいね」
「どういう意味ですか、それ」
「君が誘惑する相手は私だけにしろと命じたのです」

 顔が迫ってくる。私の背後は壁なので、逃げ場はない。

「え、あの。身元が明らかじゃない人間とは距離を置くようにするっていう話の流れじゃないんですか?」

 私の出生にまつわる話をしたのはそういうことではなかったのか。リシャール殿下の身に危険が迫るかもしれないから、出生の謎が明かされるまでは近づくな――そういう話の流れだと覚悟をしていたつもりだったんだが。

「君の背景を漁っているのは、君に宮廷魔導師師範までのぼりつめていただくためですよ。出世するには政治が絡んでくるので、後ろ盾が必要です。私が表立って直接支援するにはいろいろと不便ですから、邪魔なものの排除くらいはして差し上げようと、ね」
「ずいぶん気に入られてしまったようですね、私」

 唇に口づけをされるのだと構えていたが、リシャール殿下はすっと顔を横に動かして耳の後ろに口づける。そして甘く囁いた。

「君がしてくれたことがとてもよかったので。これからも期待していますからね。次回は胸でしごいてほしいですし」
「あ、今からでも構いませんけど?」

 素直に返すと、彼は私の耳元で小さく吹き出していた。

「今日は充分です。次回の楽しみに取っておくと言っているんだから、それでいい」

 耳を舐められると、身体がビクッと震えた。ゾクゾクと内側から湧いてくるのは快感のようだ。

「今夜は休みましょう。朝、その気になったらしようかな」

 押し倒されて、ベッドとリシャール殿下に挟まれる。彼はとても愉しげな笑みを浮かべていた。

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