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アフターストーリー【不定期更新】
稲妻と防災意識
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稲妻は秋の季語だという。稲が実る頃に鳴り響くのが稲妻だからという話なだけあって、八月も終わりとなると雷も多くなるものだ。正直、勘弁してほしい。
「弓弦ちゃんって雷が苦手なのかい?」
私が天気アプリを何度も起動しては現在の天候を確認していることについて、手元を覗き込んできた彼が尋ねる。
「苦手というわけではないんですけど、停電になったら面倒ですし、充電中に落雷が来たらスマホもパソコンも心配なので」
つまりは、システムエンジニアとしての職業病みたいなものである。雷に注意を促すアナウンスが出れば、できるだけ充電は避けて、必要なものはこまめに保存したりバックアップを取る頻度を上げる。ロスを減らす努力は怠らない。
私が返事をすれば、彼はふむと唸った。
「確かに電気を使うものにとってはあまりよくないみたいだね。梓くんも、雷鳴や稲光には注意を向けているよ。停電になったときに備えているって言っていた」
「調理器具も電気を使っているものは多いですからね。停電になったら水道も使えないですし」
「ああ、確かに」
そんなやり取りをしていると、近くで雷が落ちたらしい。停電こそしなかったが、建物が少し揺れた。
「大きな音でしたね。光ってすぐだから近いのかな」
「うん。おそらくは。裏の体育館のあたりのような気がするよ」
「神様さんはそういうこともわかるんですか?」
視線を窓の外に向けてもっともらしいことを言うので尋ねると、彼は妖しく笑った。
「ふふ。さすがに当てずっぽうというわけではないよ。感知できる範囲に落ちたなあと思っただけさ」
そういえば前に、ここから人を追い出したときにどこに飛ばしたのかについて、彼は正しく感知していた。人間よりは広範囲の状態を察することが可能なのだろう。
「へえ……。となると、雷みたいにあちこちで大きなエネルギー反応があると、疲れやすくなったりするんじゃないですか?」
「多少は影響はあるだろうけれど、その辺りは神経質な性格じゃなければ気にならないんじゃないかな」
ちなみに僕はとてもおおらかなんだ、知ってるでしょ? と話を振られたが、保留としておこう。おおらかといえばおおらかなほうだと評価できるが、神経質なところもあると私は思う。
再び雷が落ちた。今度は光ってから数秒経っていたからやや遠いとみた。
「雨も強くなってきましたね」
「ほんとだ。外が煙ってるねえ。……ああ。突風の心配はしてもいいけど、竜巻は大丈夫じゃないかな」
「食事の心配はしたほうがいいですかね?」
「家にあるものでどうにかできるよ。災害時のための準備もしてあるし」
災害時の準備と言われて、今年こそは保存食のチェックをしようと決意していたのに、そのまま放置していたのを思い出した。
「……災害時の準備ってしてあるんですか?」
「梓くんに言われて、必要なものは確認してあるよ」
「アニキ、えらい……」
この家にいることが去年までほとんどなかったこともあって、自宅で被災することを全く想定してこなかった。被災せずとも家の中は散らかり放題だったから、そもそもそれどころじゃなかったのだが。
アニキは防災意識が高いな……
地域の防災情報や犯罪情報等を知らせてくれるアプリを入れておくようにと指示してきたのはアニキだった。地域密着型の飲食店で働いているから必要に迫られて対応しているのだろうけれど、素晴らしい心構えである。
「指摘されてちゃんと行動している僕も褒めてよ」
「うん。それは感謝している」
「ならいいけど」
水や非常食は準備してあるし、ローリングストックの概念もアニキは神様さんに叩き込んでくれたらしい。すごい。
「いざとなったら僕に食料は要らないわけだけど、その分多めに置いてあると思ってくれていいよ。梓くんが身を寄せることになっても足りるかなって」
「そこまで配慮してるんだ……」
アニキは自分の分まで念の為に置いてほしいなどという図々しいタイプではない。どちらかと言えば、生活力のない私のために、自分の分プラスアルファを準備しておきそうな感じだ。
つまり、神様さんの自主活動である。
「免疫反応のことも聞いてる。二人とも食べられないものはないはずだけど、好みとか食べ合わせとか、食事なら任せておいてよ」
「神様さんはどこを目指しているんですか……」
「僕から離れたくならないように胃袋を掴んでおこうという魂胆だよ」
「ひええ……」
「性行為だけで繋ぎ止めることもできるけれど、いろいろなもので気を引いた方がいいでしょ?」
「え、あ、はい」
依存しすぎもいいところだが、私はわかっていて落ちている自信があるから手遅れだと思う。
私が肯定すると、彼はふにゃりと笑った。
「ふふ。そろそろ夕食の準備を始めるね。途中で停電になっても問題がない献立を選ぶとするよ」
待ってて、と言って彼はエプロンをつけて準備を始める。
料理、間違い無く私よりも腕前が上だな……
停電になっても問題ないメニューってなんだろう、そんなことを考えながら私は夕食作りのサポートに回るのだった。
《終わり》
「弓弦ちゃんって雷が苦手なのかい?」
私が天気アプリを何度も起動しては現在の天候を確認していることについて、手元を覗き込んできた彼が尋ねる。
「苦手というわけではないんですけど、停電になったら面倒ですし、充電中に落雷が来たらスマホもパソコンも心配なので」
つまりは、システムエンジニアとしての職業病みたいなものである。雷に注意を促すアナウンスが出れば、できるだけ充電は避けて、必要なものはこまめに保存したりバックアップを取る頻度を上げる。ロスを減らす努力は怠らない。
私が返事をすれば、彼はふむと唸った。
「確かに電気を使うものにとってはあまりよくないみたいだね。梓くんも、雷鳴や稲光には注意を向けているよ。停電になったときに備えているって言っていた」
「調理器具も電気を使っているものは多いですからね。停電になったら水道も使えないですし」
「ああ、確かに」
そんなやり取りをしていると、近くで雷が落ちたらしい。停電こそしなかったが、建物が少し揺れた。
「大きな音でしたね。光ってすぐだから近いのかな」
「うん。おそらくは。裏の体育館のあたりのような気がするよ」
「神様さんはそういうこともわかるんですか?」
視線を窓の外に向けてもっともらしいことを言うので尋ねると、彼は妖しく笑った。
「ふふ。さすがに当てずっぽうというわけではないよ。感知できる範囲に落ちたなあと思っただけさ」
そういえば前に、ここから人を追い出したときにどこに飛ばしたのかについて、彼は正しく感知していた。人間よりは広範囲の状態を察することが可能なのだろう。
「へえ……。となると、雷みたいにあちこちで大きなエネルギー反応があると、疲れやすくなったりするんじゃないですか?」
「多少は影響はあるだろうけれど、その辺りは神経質な性格じゃなければ気にならないんじゃないかな」
ちなみに僕はとてもおおらかなんだ、知ってるでしょ? と話を振られたが、保留としておこう。おおらかといえばおおらかなほうだと評価できるが、神経質なところもあると私は思う。
再び雷が落ちた。今度は光ってから数秒経っていたからやや遠いとみた。
「雨も強くなってきましたね」
「ほんとだ。外が煙ってるねえ。……ああ。突風の心配はしてもいいけど、竜巻は大丈夫じゃないかな」
「食事の心配はしたほうがいいですかね?」
「家にあるものでどうにかできるよ。災害時のための準備もしてあるし」
災害時の準備と言われて、今年こそは保存食のチェックをしようと決意していたのに、そのまま放置していたのを思い出した。
「……災害時の準備ってしてあるんですか?」
「梓くんに言われて、必要なものは確認してあるよ」
「アニキ、えらい……」
この家にいることが去年までほとんどなかったこともあって、自宅で被災することを全く想定してこなかった。被災せずとも家の中は散らかり放題だったから、そもそもそれどころじゃなかったのだが。
アニキは防災意識が高いな……
地域の防災情報や犯罪情報等を知らせてくれるアプリを入れておくようにと指示してきたのはアニキだった。地域密着型の飲食店で働いているから必要に迫られて対応しているのだろうけれど、素晴らしい心構えである。
「指摘されてちゃんと行動している僕も褒めてよ」
「うん。それは感謝している」
「ならいいけど」
水や非常食は準備してあるし、ローリングストックの概念もアニキは神様さんに叩き込んでくれたらしい。すごい。
「いざとなったら僕に食料は要らないわけだけど、その分多めに置いてあると思ってくれていいよ。梓くんが身を寄せることになっても足りるかなって」
「そこまで配慮してるんだ……」
アニキは自分の分まで念の為に置いてほしいなどという図々しいタイプではない。どちらかと言えば、生活力のない私のために、自分の分プラスアルファを準備しておきそうな感じだ。
つまり、神様さんの自主活動である。
「免疫反応のことも聞いてる。二人とも食べられないものはないはずだけど、好みとか食べ合わせとか、食事なら任せておいてよ」
「神様さんはどこを目指しているんですか……」
「僕から離れたくならないように胃袋を掴んでおこうという魂胆だよ」
「ひええ……」
「性行為だけで繋ぎ止めることもできるけれど、いろいろなもので気を引いた方がいいでしょ?」
「え、あ、はい」
依存しすぎもいいところだが、私はわかっていて落ちている自信があるから手遅れだと思う。
私が肯定すると、彼はふにゃりと笑った。
「ふふ。そろそろ夕食の準備を始めるね。途中で停電になっても問題がない献立を選ぶとするよ」
待ってて、と言って彼はエプロンをつけて準備を始める。
料理、間違い無く私よりも腕前が上だな……
停電になっても問題ないメニューってなんだろう、そんなことを考えながら私は夕食作りのサポートに回るのだった。
《終わり》
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