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残された弟子たちの話
魔養樹の杖は三年しか保たない
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パキッと小枝が折れるような音がしたのに気がついた。急に立ち止まった俺を訝しむように見上げてくるルーンに短く「すまん」と謝って、先を歩いていたリリィに声をかけて制止させた。
「どうしたの?」
ここは岩場の洞窟。彼女の声と足音が微かながら反響した。
「たぶん、アレの時期だから」
そう答えて、俺は腰に提げている短い杖を取り出した。魔力を溜め込むと言われている魔養樹の枝で作られた特注のこの杖は、魔法の光に照らして確認すると表面に大きな亀裂が入っているのがわかる。
「おや。もうそんなに時間が経ったんですね」
「俺の杖は律儀に四年目を迎えるなり割れるからな」
眼鏡に触れながら、ルーンは割れた部分をマジマジと見つめている。
俺の魔力を浴び続けると丸三年しか保たないらしい。これが七本目の杖になるが、どれもその時がきたら同じように割れていた。
なお、通常であれば十年以上は保つし、大抵の魔道士や賢者は一生に一本で足りるものである。
「新しいのにしないとねえ。一応、制御に必要なんでしょ?」
「まあな」
「これまでは師匠が時期に合わせて用意してくれたもんね。探しに行かないと」
師匠はもういない。一年前に亡くなってしまった。だからこれが師匠がくれた最後の杖だ。
「――魔養樹ってどこに生えているんだ?」
「え、そこからですか?」
「わーいわーい、すぐに狩りに行こう!」
呆れているルーンに対し、リリィは乗り気のようだ。リリィがぴょんぴょん跳ねると馬の尻尾みたいに束ねられている髪の先も揺れる。小動物っぽい。
はしゃぐリリィは置いておき、俺はルーンに向き直った。
「簡単には採れないとは思っているが、誰かが採ってきたものよりはいいんじゃないかと。自分の魔力との相性もあるような気がして」
「なるほど。――このミッションもほぼ終わりですし、魔養樹を探しに行ってみましょうか」
少し悩むような間があって、ルーンは頷く。
よかった。ルーンが反対したら一人で行こうと思っていたからありがたい。
「じゃあ、決まりだな」
*****
深い森の先、岩がゴロゴロとしている先に巨樹があった。一軒家程度の大岩を飲み込むように生えているそれは、周囲の魔障を吸い取って大きく茂っていた。
「すげぇな……」
《世界の果て》と呼ばれているこの場所は、師匠である西の大賢者様が自身の拠点としていた場所から案外と近い。国からの仕事を終えてすぐに旅立ったが、杖が割れてから数日で到達できた。
《世界の果て》は人間が暮らせる場所ではないからそう呼ばれているのであって、その先にも広大な土地があることが知られている。そこは人間の力が及ばない、魔物たちの世界だ。
「俺たちの魔力も吸ってるな、これ」
「わー、懐かしい! 私ね、ここで産まれたんだよ!」
岩を登って、根っこに頬をすり寄せながらリリィが言った。
「え?」
「ってか、記憶があるのか?」
あからさまに驚くルーン。俺も同感である。思わず問うと、リリィは首を横に振った。
「今ね、この木が語りかけてきたんだ! 久し振りだねって。あの時は赤ちゃんだったけど、魔力でわかるって。私もね、懐かしい感じがするの」
さらさらと滞りなく答えるあたり、本当にそう感じているのだろう。リリィはとても素直な子で、嘘をついたり空想を語ることはほぼない。
「えっと……リリィは人間だよな?」
「リリィはリリィだよ!」
「まあ、そうだが……」
成人女性でその返答はどうなんだろうか。
さておき。
俺も魔養樹に触れることにする。相性が悪かったら別の株を探す必要があるからだ。足に筋力強化の魔法をかけて跳躍すると、適当な根のそばに降りる。その肌に触れると周囲が仄かに光った。
「……あ」
驚いて手を離す。足下にころんと何かが転がり落ちる音。俺が見やると、枝のような――杖があった。
「おーい、ルーン? 魔養樹の杖って生えてくるもんなのか?」
拾い上げてルーンのもとに戻ると、彼は首を横に振った。
「そんなはずはないと思いますけど――杖ですね、これ」
俺が差し出した杖を眼鏡越しによく見て、ルーンは不思議そうな顔をした。
「魔養樹がどうぞって言ってる。それが最後の杖になるだろうから大事にしろだって」
「そいつ、俺の事情をわかってるのか?」
「知ってるってさ。ここまで大きく育つことができたのはアウルのおかげだから、それをあげるんだって。杖にするために折られたり切られたりするのは勘弁してくれとも言ってる」
「……俺のおかげ?」
俺が尋ねると、リリィが飛び降りてきた。突っ込んでくるように飛んできたので、俺は抱き締めて捕まえる。
「アウル、この近くの洞窟みたいな場所に閉じ込められていたでしょ? その時に世話になったって言ってた」
「え? ――じゃあ、ここって……」
俺は指摘されて記憶をたどる。慌てて走った。
「アウル?」
「ルーン、リリィ。すぐに戻る」
ここが、師匠と出会った場所なら。
目的の場所はまもなく見つかった。霧が出ていて記憶のとおりではなかったが、間違いない。なぜなら、そこに白いフクロウがいたから。
「大賢者様」
声をかけるとフクロウは俺のそばに寄ってくる。そして、俺の新しい杖に触れるとどこかへと飛んで行ってしまった。
「そっか……」
リリィではないが、フクロウから「いい杖だな」と言ってもらえたような気がした。
そろそろ、はっきりさせないとな……。
いつまでも偉大な西の大賢者様の背中を見ているわけにはいかないのだ。
俺は決意して胸に新しい杖を抱く。
「アウル?」
「いきなりどうしたんですか?」
追いついてきた二人に俺は向かい合う。なかなかひとりっきりにはさせてくれないようだ。
「ちょっと感傷に浸っていた」
「ふぅん?」
「――帰るぞ」
リリィには何かが伝わってる気がする。何故か満足げな様子の彼女の頭を撫でると、俺は来た道に足を進めたのだった。
《完》
「どうしたの?」
ここは岩場の洞窟。彼女の声と足音が微かながら反響した。
「たぶん、アレの時期だから」
そう答えて、俺は腰に提げている短い杖を取り出した。魔力を溜め込むと言われている魔養樹の枝で作られた特注のこの杖は、魔法の光に照らして確認すると表面に大きな亀裂が入っているのがわかる。
「おや。もうそんなに時間が経ったんですね」
「俺の杖は律儀に四年目を迎えるなり割れるからな」
眼鏡に触れながら、ルーンは割れた部分をマジマジと見つめている。
俺の魔力を浴び続けると丸三年しか保たないらしい。これが七本目の杖になるが、どれもその時がきたら同じように割れていた。
なお、通常であれば十年以上は保つし、大抵の魔道士や賢者は一生に一本で足りるものである。
「新しいのにしないとねえ。一応、制御に必要なんでしょ?」
「まあな」
「これまでは師匠が時期に合わせて用意してくれたもんね。探しに行かないと」
師匠はもういない。一年前に亡くなってしまった。だからこれが師匠がくれた最後の杖だ。
「――魔養樹ってどこに生えているんだ?」
「え、そこからですか?」
「わーいわーい、すぐに狩りに行こう!」
呆れているルーンに対し、リリィは乗り気のようだ。リリィがぴょんぴょん跳ねると馬の尻尾みたいに束ねられている髪の先も揺れる。小動物っぽい。
はしゃぐリリィは置いておき、俺はルーンに向き直った。
「簡単には採れないとは思っているが、誰かが採ってきたものよりはいいんじゃないかと。自分の魔力との相性もあるような気がして」
「なるほど。――このミッションもほぼ終わりですし、魔養樹を探しに行ってみましょうか」
少し悩むような間があって、ルーンは頷く。
よかった。ルーンが反対したら一人で行こうと思っていたからありがたい。
「じゃあ、決まりだな」
*****
深い森の先、岩がゴロゴロとしている先に巨樹があった。一軒家程度の大岩を飲み込むように生えているそれは、周囲の魔障を吸い取って大きく茂っていた。
「すげぇな……」
《世界の果て》と呼ばれているこの場所は、師匠である西の大賢者様が自身の拠点としていた場所から案外と近い。国からの仕事を終えてすぐに旅立ったが、杖が割れてから数日で到達できた。
《世界の果て》は人間が暮らせる場所ではないからそう呼ばれているのであって、その先にも広大な土地があることが知られている。そこは人間の力が及ばない、魔物たちの世界だ。
「俺たちの魔力も吸ってるな、これ」
「わー、懐かしい! 私ね、ここで産まれたんだよ!」
岩を登って、根っこに頬をすり寄せながらリリィが言った。
「え?」
「ってか、記憶があるのか?」
あからさまに驚くルーン。俺も同感である。思わず問うと、リリィは首を横に振った。
「今ね、この木が語りかけてきたんだ! 久し振りだねって。あの時は赤ちゃんだったけど、魔力でわかるって。私もね、懐かしい感じがするの」
さらさらと滞りなく答えるあたり、本当にそう感じているのだろう。リリィはとても素直な子で、嘘をついたり空想を語ることはほぼない。
「えっと……リリィは人間だよな?」
「リリィはリリィだよ!」
「まあ、そうだが……」
成人女性でその返答はどうなんだろうか。
さておき。
俺も魔養樹に触れることにする。相性が悪かったら別の株を探す必要があるからだ。足に筋力強化の魔法をかけて跳躍すると、適当な根のそばに降りる。その肌に触れると周囲が仄かに光った。
「……あ」
驚いて手を離す。足下にころんと何かが転がり落ちる音。俺が見やると、枝のような――杖があった。
「おーい、ルーン? 魔養樹の杖って生えてくるもんなのか?」
拾い上げてルーンのもとに戻ると、彼は首を横に振った。
「そんなはずはないと思いますけど――杖ですね、これ」
俺が差し出した杖を眼鏡越しによく見て、ルーンは不思議そうな顔をした。
「魔養樹がどうぞって言ってる。それが最後の杖になるだろうから大事にしろだって」
「そいつ、俺の事情をわかってるのか?」
「知ってるってさ。ここまで大きく育つことができたのはアウルのおかげだから、それをあげるんだって。杖にするために折られたり切られたりするのは勘弁してくれとも言ってる」
「……俺のおかげ?」
俺が尋ねると、リリィが飛び降りてきた。突っ込んでくるように飛んできたので、俺は抱き締めて捕まえる。
「アウル、この近くの洞窟みたいな場所に閉じ込められていたでしょ? その時に世話になったって言ってた」
「え? ――じゃあ、ここって……」
俺は指摘されて記憶をたどる。慌てて走った。
「アウル?」
「ルーン、リリィ。すぐに戻る」
ここが、師匠と出会った場所なら。
目的の場所はまもなく見つかった。霧が出ていて記憶のとおりではなかったが、間違いない。なぜなら、そこに白いフクロウがいたから。
「大賢者様」
声をかけるとフクロウは俺のそばに寄ってくる。そして、俺の新しい杖に触れるとどこかへと飛んで行ってしまった。
「そっか……」
リリィではないが、フクロウから「いい杖だな」と言ってもらえたような気がした。
そろそろ、はっきりさせないとな……。
いつまでも偉大な西の大賢者様の背中を見ているわけにはいかないのだ。
俺は決意して胸に新しい杖を抱く。
「アウル?」
「いきなりどうしたんですか?」
追いついてきた二人に俺は向かい合う。なかなかひとりっきりにはさせてくれないようだ。
「ちょっと感傷に浸っていた」
「ふぅん?」
「――帰るぞ」
リリィには何かが伝わってる気がする。何故か満足げな様子の彼女の頭を撫でると、俺は来た道に足を進めたのだった。
《完》
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