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【第1部】青いダイヤは災厄を呼ぶ
★4★ 6月14日金曜日、放課後
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六月十四日金曜日、抜折羅は宝杖学院の校門前にいた。チャイムが響き、賑やかさが増してくる。授業が終わり、放課後になったようだ。
少女が落としていったスカーフから、彼女が宝杖学院の高等部に所属していることはすぐに調べがついた。だが、スカーフを返すのは来日した目的から外れる。職務を全うしてから――そんな優先順位をつけて抜折羅は動き出したものの進捗は芳しくなかった。少女を襲った男の情報は得られず、ホープの反応もない。そこで少女に会いにゆくことにしたのである。
――すぐに会えれば助かるんだが……。
午前中は曇っていたが、午後からは生憎の小雨模様。傘を差したまま長時間待つのは堪えそうだ。梅雨の時季であることは承知している抜折羅だったが、自分の運のなさを恨みたい気持ちになる。昨日も一昨日もこの時間は晴れていたから余計に。
校門前に生徒でもない人間が立っているのが珍しいらしい。目立ちすぎないようにと綿のカラーシャツにジーンズの組み合わせを選んだのだが、下校する生徒たちの好奇の視線を感じる。
途中、学校の警備員らしき中年男に声をかけられたので、人を待っているのだと答えた。工作として自分に差している青い傘の他に女性用の赤い傘を持ってきていたから、それで納得してくれたらしい。念には念を入れて準備はしておくものである。
待つこと十五分。人の波がひいてきた頃に目的の少女が現れた。今日も一人らしい。スポーツバッグを頭に翳して走ってきた。この近くには屋根のあるバス停がある。そこまで走って行こうというようだ。
「君っ」
抜折羅が声を掛ける。少女は勢いよく通り過ぎたが立ち止まり、振り返った。
「あなた……あのときの痴漢っ!」
雨に濡れるのにも構わずに人差し指を向けてくる少女。抜折羅は彼女につかつかと近付き、その手を下げさせる。
「人聞きの悪いことを叫ぶなっ! あれは事故だ」
「事故ですって? 冗談。意図していなかったことだとしても許さないわっ!」
睨み付けてまくし立てる少女に、抜折羅は自身の唇に人差し指を立てる。
「文句はあとでゆっくり聞いてやるから、今は黙ってろ。ここで口論していたら目立つだろ? 生徒の噂になりたいのか?」
抜折羅の提案に少女は納得できたらしい。辺りに視線を向けたあと、口を閉ざした。
「傘はこれを使え。詫びも含んでいる。持っていってくれて構わない」
少女を自分の青い傘の下に入れると、持ってきていた赤い傘を差し出す。彼女は戸惑うように傘を見て抜折羅の顔を見た。
「好みじゃなかったら申し訳ないが、君には赤が似合うと思ったんだ」
照れることなく率直に述べると、少女はしぶしぶといった様子で赤い傘を受け取ってくれた。
「――じゃあ、もらっておくわ」
「少し話がしたくて君を捜していた。時間があればで構わない。お茶に付き合ってくれないか?」
「ん……わかった。一時間以内なら」
傘を差し、腕時計をちらりと見て少女は頷く。抜折羅は少女を連れて校門前から歩き出した。
少女が落としていったスカーフから、彼女が宝杖学院の高等部に所属していることはすぐに調べがついた。だが、スカーフを返すのは来日した目的から外れる。職務を全うしてから――そんな優先順位をつけて抜折羅は動き出したものの進捗は芳しくなかった。少女を襲った男の情報は得られず、ホープの反応もない。そこで少女に会いにゆくことにしたのである。
――すぐに会えれば助かるんだが……。
午前中は曇っていたが、午後からは生憎の小雨模様。傘を差したまま長時間待つのは堪えそうだ。梅雨の時季であることは承知している抜折羅だったが、自分の運のなさを恨みたい気持ちになる。昨日も一昨日もこの時間は晴れていたから余計に。
校門前に生徒でもない人間が立っているのが珍しいらしい。目立ちすぎないようにと綿のカラーシャツにジーンズの組み合わせを選んだのだが、下校する生徒たちの好奇の視線を感じる。
途中、学校の警備員らしき中年男に声をかけられたので、人を待っているのだと答えた。工作として自分に差している青い傘の他に女性用の赤い傘を持ってきていたから、それで納得してくれたらしい。念には念を入れて準備はしておくものである。
待つこと十五分。人の波がひいてきた頃に目的の少女が現れた。今日も一人らしい。スポーツバッグを頭に翳して走ってきた。この近くには屋根のあるバス停がある。そこまで走って行こうというようだ。
「君っ」
抜折羅が声を掛ける。少女は勢いよく通り過ぎたが立ち止まり、振り返った。
「あなた……あのときの痴漢っ!」
雨に濡れるのにも構わずに人差し指を向けてくる少女。抜折羅は彼女につかつかと近付き、その手を下げさせる。
「人聞きの悪いことを叫ぶなっ! あれは事故だ」
「事故ですって? 冗談。意図していなかったことだとしても許さないわっ!」
睨み付けてまくし立てる少女に、抜折羅は自身の唇に人差し指を立てる。
「文句はあとでゆっくり聞いてやるから、今は黙ってろ。ここで口論していたら目立つだろ? 生徒の噂になりたいのか?」
抜折羅の提案に少女は納得できたらしい。辺りに視線を向けたあと、口を閉ざした。
「傘はこれを使え。詫びも含んでいる。持っていってくれて構わない」
少女を自分の青い傘の下に入れると、持ってきていた赤い傘を差し出す。彼女は戸惑うように傘を見て抜折羅の顔を見た。
「好みじゃなかったら申し訳ないが、君には赤が似合うと思ったんだ」
照れることなく率直に述べると、少女はしぶしぶといった様子で赤い傘を受け取ってくれた。
「――じゃあ、もらっておくわ」
「少し話がしたくて君を捜していた。時間があればで構わない。お茶に付き合ってくれないか?」
「ん……わかった。一時間以内なら」
傘を差し、腕時計をちらりと見て少女は頷く。抜折羅は少女を連れて校門前から歩き出した。
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