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黒き石に降り積もる雪
*4* 2007年8月某日、夕方
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同日、夕方。
光の家で遊んで、紅はようやく自宅前まで戻ってきた。そこで、家の前に立つ将人に気付く。
「よう」
向こうも紅が帰ってきたことに気付いたらしい。片手を軽く挙げて、塀につけていた背を離した。
「将人……」
一対一だ。思わず身体が竦んで動けない。
「昼は世話になったな」
紅が震えているのがわかったのだろう。将人は一歩だけ近付いたものの、それ以上は進まなかった。
「どう……いたしまして」
「――だがな、紅」
凄みのある声。紅はビクッとして縮こまる。
「礼は言ったが、今後ああいう場面を見掛けたら無視しろ」
「で、できないよっ!?」
「なんでだ? おれのことなんか放っておけばいいだろ。お前はおれが苦手な訳だし、助ける理由なんかないだろ。それに、標的が変わったらどうするんだ? もっと恐い目に遭うかも知れないんだぞ? 悪いがおれは、もしそういうことになってもお前を助けないからなっ!」
「助けてくれなくていいよ。あたしが将人を見捨てないだけなんだもの」
「あぁ、そうかよ、勝手にしろっ。おれは注意したんだからなっ!!」
怒鳴って、将人は踵を返す。その方向に、畏縮していた紅は違和感を覚えた。
「――家、そっちじゃないよね?」
「寄る場所があるんだよ。ついてくんなよ?」
顔だけ振り返って、睨みながら応える。
「寄るってどこに? もう六時も過ぎているんだよ――まさか」
彼がどこに行こうとしているのか直感した。それで将人に対する恐怖が払拭される。
「だめだよ、行ったらっ!!」
紅は将人を追い掛けて、手首を掴む。が、すぐに振り解かれて、向き合った。
「紅は絶対に来るな。人を呼ぶなっていう約束なんだよ」
近距離で睨まれると、本当に恐ろしい。でも懸命に首を横に振る。
「行く方が間違っているの。行かないって約束して」
怖くても、どんなに恐ろしく感じられても、紅は将人の目をしっかり見据えて告げる。
「……わかった。約束してやるから、紅は家に入れ。おばさんたちが心配するだろ?」
「絶対だよ?」
念を押すと、将人は頷いた。ひとまずはそれで安心する。
「じゃあ、またね」
将人が動かないと紅は動けない。それを理解していない将人ではないので、しぶしぶといった様子で自宅がある方向に一歩踏み出す。
「またな。――とにかく、紅は無茶すんな」
呟いて、将人は紅の頭をくしゃっと撫で、すたすたと歩いて行った。
――無茶するな、って?
いきなり頭を撫でられたことに動転していた紅だったが、将人の台詞が引っ掛かっていた。思わず、彼が消えた道の角まで走り、陰から様子を窺う。将人の家はこの通りをずっと進むことになる。しかし彼は次の角で立ち止まると、背後を気にした上で曲がってしまった。
――あたしとの約束、破るつもりなのねっ。
引き留めるつもりで紅は追う。しかし次の角を曲がったところで将人に気付かれたらしい。彼は走り出した。
待って、と声を掛けたところで止まるわけがない。紅はクラブ活動で所属する陸上部で鍛えてきた足を活かして追跡を開始した。
光の家で遊んで、紅はようやく自宅前まで戻ってきた。そこで、家の前に立つ将人に気付く。
「よう」
向こうも紅が帰ってきたことに気付いたらしい。片手を軽く挙げて、塀につけていた背を離した。
「将人……」
一対一だ。思わず身体が竦んで動けない。
「昼は世話になったな」
紅が震えているのがわかったのだろう。将人は一歩だけ近付いたものの、それ以上は進まなかった。
「どう……いたしまして」
「――だがな、紅」
凄みのある声。紅はビクッとして縮こまる。
「礼は言ったが、今後ああいう場面を見掛けたら無視しろ」
「で、できないよっ!?」
「なんでだ? おれのことなんか放っておけばいいだろ。お前はおれが苦手な訳だし、助ける理由なんかないだろ。それに、標的が変わったらどうするんだ? もっと恐い目に遭うかも知れないんだぞ? 悪いがおれは、もしそういうことになってもお前を助けないからなっ!」
「助けてくれなくていいよ。あたしが将人を見捨てないだけなんだもの」
「あぁ、そうかよ、勝手にしろっ。おれは注意したんだからなっ!!」
怒鳴って、将人は踵を返す。その方向に、畏縮していた紅は違和感を覚えた。
「――家、そっちじゃないよね?」
「寄る場所があるんだよ。ついてくんなよ?」
顔だけ振り返って、睨みながら応える。
「寄るってどこに? もう六時も過ぎているんだよ――まさか」
彼がどこに行こうとしているのか直感した。それで将人に対する恐怖が払拭される。
「だめだよ、行ったらっ!!」
紅は将人を追い掛けて、手首を掴む。が、すぐに振り解かれて、向き合った。
「紅は絶対に来るな。人を呼ぶなっていう約束なんだよ」
近距離で睨まれると、本当に恐ろしい。でも懸命に首を横に振る。
「行く方が間違っているの。行かないって約束して」
怖くても、どんなに恐ろしく感じられても、紅は将人の目をしっかり見据えて告げる。
「……わかった。約束してやるから、紅は家に入れ。おばさんたちが心配するだろ?」
「絶対だよ?」
念を押すと、将人は頷いた。ひとまずはそれで安心する。
「じゃあ、またね」
将人が動かないと紅は動けない。それを理解していない将人ではないので、しぶしぶといった様子で自宅がある方向に一歩踏み出す。
「またな。――とにかく、紅は無茶すんな」
呟いて、将人は紅の頭をくしゃっと撫で、すたすたと歩いて行った。
――無茶するな、って?
いきなり頭を撫でられたことに動転していた紅だったが、将人の台詞が引っ掛かっていた。思わず、彼が消えた道の角まで走り、陰から様子を窺う。将人の家はこの通りをずっと進むことになる。しかし彼は次の角で立ち止まると、背後を気にした上で曲がってしまった。
――あたしとの約束、破るつもりなのねっ。
引き留めるつもりで紅は追う。しかし次の角を曲がったところで将人に気付かれたらしい。彼は走り出した。
待って、と声を掛けたところで止まるわけがない。紅はクラブ活動で所属する陸上部で鍛えてきた足を活かして追跡を開始した。
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