宝石の呪いで逆ハーになりましたが、やっぱり嬉しくありません!

一花カナウ

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面倒ごとは金剛石の隣で【第2部完結】

★3★ 10月12日土曜日、午後

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 午後。私室から出た抜折羅ばさらは頭を抱えていた。

「――こう、はっきり言わせてもらうが、良いか?」

 事務所側に置かれたソファーで、英語の教科書に書き込みをしていた紅に声を掛ける。彼女はすぐに姿勢をただした。

「う……心して聞きます」

 察したらしい紅は、話す前からしょんぼりとしている。

 ――自覚アリってことか……。

 ため息をつきそうになるのを我慢して、抜折羅は紅の前の三人掛けソファーにゆっくりと腰を下ろした。

「試験で満点を取れとはもう言わない。だが、俺について来る気が少しでもあるなら、今のままじゃどうにもならんぞ」

 言って、さっきまで採点をしていた紙を彼女の前に差し出した。紙面はほとんど真っ赤に染まっている。宝石知識テストの日本語版の解答用紙は、紅の不勉強っぷりを如実にょじつに表していた。

「あぅ……」
「英語はどの程度できる? 英会話は機会がないから苦手だとしても、読み書きくらいはどうにかなりそうか?」

 ここまで苦戦するとは思っていなかった。出水いずみ千晶ちあきから多少なりとも手解きを受けているのではないかと期待していたのだが、この結果を見る限り何も伝えられてはいないようである。

 ――出水千晶女史が仕込んでいてこの結果だったら、亡くなった彼女が泣くぞ。

 抜折羅が深刻になりすぎない程度の声色で問うと、紅は俯いた。

「えっと……微妙……?」
「じゃあ、前回の期末の成績は?」

 自身の試験結果を思い出しながら抜折羅は問う。ちなみにそのときの成績は満点だった。

「……ギリギリ平均点」

 言いにくいのか、紅はぼそりと呟いた。申し訳なさそうに身を小さくしている。

「赤点じゃなくて安心したぞ」
「遅刻や欠席のせいで、追試は多いけど、赤点を取ったことは今のところないわよ」

 少し不満げな口調で紅に言われる。彼女なりにプライドがあるのだろう。

 ――さて、どうしたもんかな……。

 試験問題に手心を加えるつもりはない。タリスマンオーダー社以外の人間がどの程度タリスマントーカーに必要な知識を持ち合わせているのかを知る貴重な機会だ。無駄にはしたくないのである。

「――なぁ、紅?」
「ん?」
「お前は、ペナルティーを受けるのとご褒美を貰うのとだったら、どっちの方がやる気を出せる? 俺はあんまり欲がないからか、ペナルティーが発生するときの方が気合い入る人間なんだが」

 ふとした疑問を投げる。紅が張り切って気持ちよく学べるのであれば、ここは何かで釣っても良いのではないか――などと考えていたら、口が勝手に喋っていた。

「そうねぇ……どっちかって言うと、後者かしら。褒めて伸びるタイプ」

 真剣に悩む素振りをした後、紅は答えてくれる。

「ふむ。ならば、このテスト、誰か一人にでも勝てたら、紅が望むことを一つだけ叶えてやるよ」

 うまく釣れるだろうか。不安に感じながら彼女の反応を窺うと、紅の瞳がきらきらと輝いていた。

 ――なんだ、この効果覿面こうかてきめんっぷりは。いや、成績が上がらないとな。志気が高まっただけじゃ意味がない。
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