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【番外編】キューピットストーンの粋な計らい
★3★
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――まったく、油断も隙もありゃしないな……。
二人のやり取りを眺めていた抜折羅はやれやれと思う。そのとき、遊輝の視線が自分に向けられているのに気付いた。
「覗きに行くなら止めないよ?」
「俺は先輩とは違いますっ!」
本当に油断も隙もありゃしない。ターゲットがいつの間にか自身に定められている。
想定外の問い掛けに全力で否定すると、遊輝は小さく肩を竦めた。
「年頃の男の子なんだから、そういう衝動は隠さなくて良いのに。僕と君は同性の友達なんだし」
「先輩はいささかオープンすぎやしませんか?」
「だって、隠してもしょうがないことでしょう? 溜め込むと爆発しちゃうし。適度に発散させるのが一番だよ」
「む……」
遊輝が誰のことを思い浮かべながら言っているのかすぐにわかった。だから、一部だけは許容しても良いような気がする。あの人のような病み方はしたくない。
「で、紅ちゃんとは何か進展はあったのかな?」
ソファーに腰を下ろした抜折羅に背を向けて、トントンとリズミカルな包丁の音を響かせながら遊輝が問い掛けてくる。
「進展って……」
抜折羅は自然と口ごもる。
十日の夜にアメリカから日本に戻ってきて二週間が経った。ともに過ごした時間は、この前に日本に滞在していた期間と比べれば濃密だと言えるだろう。だが、抜折羅としては何も変わっていないつもりだ。
そこまで考えて、はたと気付く。
「――そもそも、そんな報告の義務はないと思いますが?」
「えー、つれないなぁ。仲の良い友達なら恋バナくらいするもんでしょ?」
水を流す音が聞こえる。会話をしながら調理を進めているのだが、彼の後ろ姿を見ていると手慣れているのがよくわかる。無駄がない。
「俺、先輩とそこまで仲が良いとも思ってないんですけど……」
呆れた気持ちで呟くと、遊輝の手がぴたりと止まって振り向いた。
「ひどいよっ抜折羅くんっ! それって僕の片思いってことっ!? 互いの家を行き来する仲なのに、冷たすぎないっ!?」
「聞いている人がすごく誤解しそうな表現をあえて使うのはやめてくださいませんか?」
演技じみた反応に、思わず棒読みで問い掛けてしまう。
「せっかく僕の手料理を振る舞ってあげようと思ったのに、あんまりな言い方をするからだよー。君のところじゃ、まともな手料理を食べられないだろうからって、頑張って用意してるのに」
涙ぐまれてしまった。彼はころころと頻繁に表情が変わる。それを見てしまうとつい引き込まれてしまうのだろう。すっかり遊輝のペースだ。
「自分の誕生日なんだから、他人のことなんか気にしなくてもいいじゃないですか」
「どうせなら、喜んでもらいたいでしょ? 君たちの笑顔を見られることが、僕は何よりも嬉しいんだけどな」
告げて遊輝はにっこりと微笑んだ。
彼のそういうエンターテイナーな部分を、抜折羅はあまり理解できない。人を喜ばそうという意識が薄いせいだろうか。
二人のやり取りを眺めていた抜折羅はやれやれと思う。そのとき、遊輝の視線が自分に向けられているのに気付いた。
「覗きに行くなら止めないよ?」
「俺は先輩とは違いますっ!」
本当に油断も隙もありゃしない。ターゲットがいつの間にか自身に定められている。
想定外の問い掛けに全力で否定すると、遊輝は小さく肩を竦めた。
「年頃の男の子なんだから、そういう衝動は隠さなくて良いのに。僕と君は同性の友達なんだし」
「先輩はいささかオープンすぎやしませんか?」
「だって、隠してもしょうがないことでしょう? 溜め込むと爆発しちゃうし。適度に発散させるのが一番だよ」
「む……」
遊輝が誰のことを思い浮かべながら言っているのかすぐにわかった。だから、一部だけは許容しても良いような気がする。あの人のような病み方はしたくない。
「で、紅ちゃんとは何か進展はあったのかな?」
ソファーに腰を下ろした抜折羅に背を向けて、トントンとリズミカルな包丁の音を響かせながら遊輝が問い掛けてくる。
「進展って……」
抜折羅は自然と口ごもる。
十日の夜にアメリカから日本に戻ってきて二週間が経った。ともに過ごした時間は、この前に日本に滞在していた期間と比べれば濃密だと言えるだろう。だが、抜折羅としては何も変わっていないつもりだ。
そこまで考えて、はたと気付く。
「――そもそも、そんな報告の義務はないと思いますが?」
「えー、つれないなぁ。仲の良い友達なら恋バナくらいするもんでしょ?」
水を流す音が聞こえる。会話をしながら調理を進めているのだが、彼の後ろ姿を見ていると手慣れているのがよくわかる。無駄がない。
「俺、先輩とそこまで仲が良いとも思ってないんですけど……」
呆れた気持ちで呟くと、遊輝の手がぴたりと止まって振り向いた。
「ひどいよっ抜折羅くんっ! それって僕の片思いってことっ!? 互いの家を行き来する仲なのに、冷たすぎないっ!?」
「聞いている人がすごく誤解しそうな表現をあえて使うのはやめてくださいませんか?」
演技じみた反応に、思わず棒読みで問い掛けてしまう。
「せっかく僕の手料理を振る舞ってあげようと思ったのに、あんまりな言い方をするからだよー。君のところじゃ、まともな手料理を食べられないだろうからって、頑張って用意してるのに」
涙ぐまれてしまった。彼はころころと頻繁に表情が変わる。それを見てしまうとつい引き込まれてしまうのだろう。すっかり遊輝のペースだ。
「自分の誕生日なんだから、他人のことなんか気にしなくてもいいじゃないですか」
「どうせなら、喜んでもらいたいでしょ? 君たちの笑顔を見られることが、僕は何よりも嬉しいんだけどな」
告げて遊輝はにっこりと微笑んだ。
彼のそういうエンターテイナーな部分を、抜折羅はあまり理解できない。人を喜ばそうという意識が薄いせいだろうか。
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