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【番外編】必要なのは夢魔を祓う石(R-15)
*15* 12月7日土曜日、午後
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一瞬、夢の続きなのかと思った。
紅は目をパチッと開けると、自分のピーコートのボタンに掛かっていた手を掴んだ。
「お、おはよう、紅」
気まずそうな抜折羅の表情が目に入る。
「眠ってしまったあたしに非があるとしても、あなたはあたしに何をしようとしていたのかしら?」
状況が状況だけに、寝ぼけることなどなく思考ははっきりしている。
――抜折羅のことだから、イヤらしい意図はないのでしょうけど……。
紅の目が覚めたときの状況は、次の通りだ。
寝ている間にステーションワゴンから抜折羅の私室に運ばれている。こういうことは以前からあるので、そう驚くことではない。
続いて、ベッドに仰向けで寝かされている。毛布が掛けられていて暖かい。
その上に、抜折羅が乗っている。どういうわけか、彼の手はピーコートのボタンに触れており、脱がそうとしているのだと思われる。
「……単純に、だな。寝にくそうだと思ったから、コートくらい脱がしてやるかと……」
掴まれた手を振り解こうともせず、抜折羅は視線を逸らしてぽつりと告げる。
「ふぅん……それだけ?」
「それ以外に何があるって言うんだ?」
紅の疑いに対し、不思議そうな口調で問い返された。
――この体勢でそれを訊くっ!?
狼狽えたのは紅の方だ。外に出る格好のまま毛布にくるまっているから、という理由ではなく身体が熱い。
「ん?」
答えを催促するように、抜折羅の目が紅に向けられる。
「あぅ……と、とりあえず、上から退いてもらえないかしら? このままだと身動きが取れないのよ」
抜折羅の手を放して、紅はお願いする。動きが取りづらいのは事実で、ぬくぬくとした毛布が行動を阻害している。彼の位置取りも都合が悪かった。
「それは良いことを聞いた」
口の端が片方だけくっと上がった。意地悪なことを思い付いたときにそんな表情を浮かべているような気がする。
びくっと警戒すると同時に、抜折羅の右手が紅の頬に触れた。すぐに顔も近付いてきて、逃げ場がない。キスをされるのかと身構えるが、彼は目をじっと覗き込むだけだった。
「あの……抜折羅?」
彼の真っ黒な瞳を見つめ返す。ふさふさとした睫毛が数えられそうな至近距離。少しでも動いたら、触れてしまいそうな狭い空間しか紅と抜折羅の間には残っていない。
鼓動が早まる。
「――なぁ、紅?」
たっぷりと時間が経ったところで、抜折羅が問う。
「な、何?」
何を訊ねられるのか、見当がつかない。また何か指摘されるのだろうか。
頬に触れた彼の手が優しく撫でてきて、くすぐったい。
「お前はどんな夢を見ていたんだ?」
ゆっくりと、そしてはっきりとした口調で問われた。探るような黒い瞳から目は逸らせない。
「そ、それは今見ていた夢ってこと?」
確認すると、彼は頷く代わりに額をくっつけた。
「あぁ。寝言で、俺のことが大好きだと言われたんだが」
――ね、寝言っ!?
まさかそんな台詞を声に出していたとは思わなかった。恥ずかしすぎる。しかも、本人に聞かれるだなんて。
「……えぇ、はい。夢の中でそう言った記憶は残ってますけど……」
ごまかす台詞が浮かばない。黙っていられるような空気でもなくて、紅は正直に答える。
「へぇ……じゃあ、朝の夢の続きでも見ていたのか?」
「つ……続きなんか見ないわよっ!?」
朝の夢の続きとなると、それは自分にとって未知の領域。知識もないのに、夢でその先を知ることなど有り得ない。
紅は目をパチッと開けると、自分のピーコートのボタンに掛かっていた手を掴んだ。
「お、おはよう、紅」
気まずそうな抜折羅の表情が目に入る。
「眠ってしまったあたしに非があるとしても、あなたはあたしに何をしようとしていたのかしら?」
状況が状況だけに、寝ぼけることなどなく思考ははっきりしている。
――抜折羅のことだから、イヤらしい意図はないのでしょうけど……。
紅の目が覚めたときの状況は、次の通りだ。
寝ている間にステーションワゴンから抜折羅の私室に運ばれている。こういうことは以前からあるので、そう驚くことではない。
続いて、ベッドに仰向けで寝かされている。毛布が掛けられていて暖かい。
その上に、抜折羅が乗っている。どういうわけか、彼の手はピーコートのボタンに触れており、脱がそうとしているのだと思われる。
「……単純に、だな。寝にくそうだと思ったから、コートくらい脱がしてやるかと……」
掴まれた手を振り解こうともせず、抜折羅は視線を逸らしてぽつりと告げる。
「ふぅん……それだけ?」
「それ以外に何があるって言うんだ?」
紅の疑いに対し、不思議そうな口調で問い返された。
――この体勢でそれを訊くっ!?
狼狽えたのは紅の方だ。外に出る格好のまま毛布にくるまっているから、という理由ではなく身体が熱い。
「ん?」
答えを催促するように、抜折羅の目が紅に向けられる。
「あぅ……と、とりあえず、上から退いてもらえないかしら? このままだと身動きが取れないのよ」
抜折羅の手を放して、紅はお願いする。動きが取りづらいのは事実で、ぬくぬくとした毛布が行動を阻害している。彼の位置取りも都合が悪かった。
「それは良いことを聞いた」
口の端が片方だけくっと上がった。意地悪なことを思い付いたときにそんな表情を浮かべているような気がする。
びくっと警戒すると同時に、抜折羅の右手が紅の頬に触れた。すぐに顔も近付いてきて、逃げ場がない。キスをされるのかと身構えるが、彼は目をじっと覗き込むだけだった。
「あの……抜折羅?」
彼の真っ黒な瞳を見つめ返す。ふさふさとした睫毛が数えられそうな至近距離。少しでも動いたら、触れてしまいそうな狭い空間しか紅と抜折羅の間には残っていない。
鼓動が早まる。
「――なぁ、紅?」
たっぷりと時間が経ったところで、抜折羅が問う。
「な、何?」
何を訊ねられるのか、見当がつかない。また何か指摘されるのだろうか。
頬に触れた彼の手が優しく撫でてきて、くすぐったい。
「お前はどんな夢を見ていたんだ?」
ゆっくりと、そしてはっきりとした口調で問われた。探るような黒い瞳から目は逸らせない。
「そ、それは今見ていた夢ってこと?」
確認すると、彼は頷く代わりに額をくっつけた。
「あぁ。寝言で、俺のことが大好きだと言われたんだが」
――ね、寝言っ!?
まさかそんな台詞を声に出していたとは思わなかった。恥ずかしすぎる。しかも、本人に聞かれるだなんて。
「……えぇ、はい。夢の中でそう言った記憶は残ってますけど……」
ごまかす台詞が浮かばない。黙っていられるような空気でもなくて、紅は正直に答える。
「へぇ……じゃあ、朝の夢の続きでも見ていたのか?」
「つ……続きなんか見ないわよっ!?」
朝の夢の続きとなると、それは自分にとって未知の領域。知識もないのに、夢でその先を知ることなど有り得ない。
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