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【番外編】あたし、プレゼントになります!
*1* 4月6日日曜日、21時前
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四月六日日曜日。二十一時になろうとする頃、火群家。
明日から新学期だ。だが、そんなことよりも重要なことがある。
家族団欒の夕食を終えて、紅は自分の部屋に戻ってきた。そこで異変に気付く。
「窓が開いてる……?」
桜は咲いたが、まだまだ朝晩は冷え込む。カーテンを閉めるついでに雨戸も閉めたはずだ。
訝しく思いながら窓に近付くと――。
「ひゃっ、んっ!?」
背後から迫ってきた何者かに口元を抑えられる。当然、腕も掴まれて身動きが取れない。
――この展開はまさか……。
暴れずに相手の様子をみることにすると、あっさりと解放された。
「……何の用事ですか、白浪先輩」
向き合うと、思ったとおりの人物が立っていた。肩よりも長い銀髪はいつもどおりに一つに束ねられ、窓から入る風にサラサラと揺れている。男性にしておくには勿体ない端正で色気のある顔が外の光に照らされて浮かび上がる。
白浪遊輝は、紅の指摘に微苦笑をした。
「ちょっと早いけど迎えに、ね」
「……しばらく距離を置くって言っていませんでしたっけ?」
家族に聴かれないように、一応声を潜めて非難する。
先月のホワイトデー。ちょっとしたいざこざにより互いに連絡を控えるようになっていたのだが、こうして現れるとは意外だ。
「だって、明日は抜折羅くんの誕生日だよ? 大好きな友だちの大切な日を祝わないなんてできないよ」
遊輝は大げさに肩を竦める。
そう。彼が言うように、明日は金剛抜折羅の誕生日だ。
「そんなことを言う人物が、抜折羅の恋人であるあたしのところに夜這いですか?」
呆れてきっぱり言ってやると、遊輝は膨れる。
「僕は寝取ったりしないよ、あの人と違って」
あの人、が誰を指しているのかに瞬時に気付いて、紅は寒気を覚える。嫌なことを思い出した。
遊輝は続ける。
「それにね、僕はできるなら君と抜折羅くんと三人で――ふぐっ!?」
紅が投げつけた枕が遊輝の顔にクリーンヒット。
「しません! 何を狙っているんですか、あなたはっ!!」
声を潜めるのを忘れそうになる。まったく、困った相手だ。
「だってー、普通のは飽きちゃったんだもん。絶対に満足させるよ?」
枕を抱えながら、可愛らしく小首を傾げて遊輝は返す。
「あたしたちを巻き込まないでくださいっ!!」
「ふふっ。とかなんとか言っちゃってるけど、紅ちゃん興味あるんでしょう? 抜折羅くんとマンネリになったら相談してね」
腹の立つ言い方だったが、このまま乗せられては話が終わらない。図星であることを必死に隠しながら、紅は大きく息を吐く。
「――明日が誕生日なのは事実ですけど、こんな時間にこうして訪ねてきてもしょうがないのではありませんか? 心配しなくても、明日の午後はデートの予定ですし、白浪先輩の出番はないですよ」
「それじゃあ面白くないじゃん!」
強く言うと遊輝は枕をベッドに置き、一瞬で紅との距離を詰めた。そしてあっさりと紅を押し倒す。音がしないのは彼が背中に回した腕が身体を支えたからだろう。
「ちょっ、先輩っ!?」
押し返そうとした両手はすぐに捕まって、頭の上にまとめて押さえつけられる。慣れているらしく動作が滑らかで惚れ惚れする。
――って、感心している場合じゃないわ。
「誕生日なんだから、特別なことしないとダメでしょ!!」
「良いじゃないですか、新居でおうちデートでもっ! トパーズさんがご馳走を手配してくれるんですよっ!」
デートの計画は抜折羅からの提案だった。誕生日をトパーズが祝ってくれると言っているんだが、一緒に過ごさないか――抜折羅にしては珍しい誘いに、紅はすぐにオーケイの返事をした。自分から誘ったら、仕事を理由に断られるのではないかと思っていたから、余計に嬉しかった。
「それじゃ僕が面白くないのっ!」
「勝手な……」
サプライズが好きな遊輝のことだ。何か企みがあるに違いない。
「で。この体勢は……?」
襲われかけているようにしか感じないのだが――と少しずつ不安になる。
「ん?」
彼の微笑みに、嫌な予感がした。
「身体検査、みたいな?」
着ていたシャツがさっと捲り上げられる。夜の空気に触れて、身体が震えた。
「なっ」
「うーん。もっと色気のある下着が良いと思うんだけど、どうせすぐ脱いじゃうからいっか」
さらりととんでもないことを言ってくる。紅は羞恥で肌が上気するのを感じた。
「何考えて――っ!?」
シャツを元通りにすると、遊輝はひょいと紅を抱き上げる。急に横抱きにされて、紅は狼狽えた。
「支度はウチに着いてからにしよっか」
「支度っ!?」
何のことを言っているのか意味不明だ。
「僕にしっかり掴まっていてね」
「はいっ!?」
こうして、紅は状況がわからないまま拉致されたのだった。
明日から新学期だ。だが、そんなことよりも重要なことがある。
家族団欒の夕食を終えて、紅は自分の部屋に戻ってきた。そこで異変に気付く。
「窓が開いてる……?」
桜は咲いたが、まだまだ朝晩は冷え込む。カーテンを閉めるついでに雨戸も閉めたはずだ。
訝しく思いながら窓に近付くと――。
「ひゃっ、んっ!?」
背後から迫ってきた何者かに口元を抑えられる。当然、腕も掴まれて身動きが取れない。
――この展開はまさか……。
暴れずに相手の様子をみることにすると、あっさりと解放された。
「……何の用事ですか、白浪先輩」
向き合うと、思ったとおりの人物が立っていた。肩よりも長い銀髪はいつもどおりに一つに束ねられ、窓から入る風にサラサラと揺れている。男性にしておくには勿体ない端正で色気のある顔が外の光に照らされて浮かび上がる。
白浪遊輝は、紅の指摘に微苦笑をした。
「ちょっと早いけど迎えに、ね」
「……しばらく距離を置くって言っていませんでしたっけ?」
家族に聴かれないように、一応声を潜めて非難する。
先月のホワイトデー。ちょっとしたいざこざにより互いに連絡を控えるようになっていたのだが、こうして現れるとは意外だ。
「だって、明日は抜折羅くんの誕生日だよ? 大好きな友だちの大切な日を祝わないなんてできないよ」
遊輝は大げさに肩を竦める。
そう。彼が言うように、明日は金剛抜折羅の誕生日だ。
「そんなことを言う人物が、抜折羅の恋人であるあたしのところに夜這いですか?」
呆れてきっぱり言ってやると、遊輝は膨れる。
「僕は寝取ったりしないよ、あの人と違って」
あの人、が誰を指しているのかに瞬時に気付いて、紅は寒気を覚える。嫌なことを思い出した。
遊輝は続ける。
「それにね、僕はできるなら君と抜折羅くんと三人で――ふぐっ!?」
紅が投げつけた枕が遊輝の顔にクリーンヒット。
「しません! 何を狙っているんですか、あなたはっ!!」
声を潜めるのを忘れそうになる。まったく、困った相手だ。
「だってー、普通のは飽きちゃったんだもん。絶対に満足させるよ?」
枕を抱えながら、可愛らしく小首を傾げて遊輝は返す。
「あたしたちを巻き込まないでくださいっ!!」
「ふふっ。とかなんとか言っちゃってるけど、紅ちゃん興味あるんでしょう? 抜折羅くんとマンネリになったら相談してね」
腹の立つ言い方だったが、このまま乗せられては話が終わらない。図星であることを必死に隠しながら、紅は大きく息を吐く。
「――明日が誕生日なのは事実ですけど、こんな時間にこうして訪ねてきてもしょうがないのではありませんか? 心配しなくても、明日の午後はデートの予定ですし、白浪先輩の出番はないですよ」
「それじゃあ面白くないじゃん!」
強く言うと遊輝は枕をベッドに置き、一瞬で紅との距離を詰めた。そしてあっさりと紅を押し倒す。音がしないのは彼が背中に回した腕が身体を支えたからだろう。
「ちょっ、先輩っ!?」
押し返そうとした両手はすぐに捕まって、頭の上にまとめて押さえつけられる。慣れているらしく動作が滑らかで惚れ惚れする。
――って、感心している場合じゃないわ。
「誕生日なんだから、特別なことしないとダメでしょ!!」
「良いじゃないですか、新居でおうちデートでもっ! トパーズさんがご馳走を手配してくれるんですよっ!」
デートの計画は抜折羅からの提案だった。誕生日をトパーズが祝ってくれると言っているんだが、一緒に過ごさないか――抜折羅にしては珍しい誘いに、紅はすぐにオーケイの返事をした。自分から誘ったら、仕事を理由に断られるのではないかと思っていたから、余計に嬉しかった。
「それじゃ僕が面白くないのっ!」
「勝手な……」
サプライズが好きな遊輝のことだ。何か企みがあるに違いない。
「で。この体勢は……?」
襲われかけているようにしか感じないのだが――と少しずつ不安になる。
「ん?」
彼の微笑みに、嫌な予感がした。
「身体検査、みたいな?」
着ていたシャツがさっと捲り上げられる。夜の空気に触れて、身体が震えた。
「なっ」
「うーん。もっと色気のある下着が良いと思うんだけど、どうせすぐ脱いじゃうからいっか」
さらりととんでもないことを言ってくる。紅は羞恥で肌が上気するのを感じた。
「何考えて――っ!?」
シャツを元通りにすると、遊輝はひょいと紅を抱き上げる。急に横抱きにされて、紅は狼狽えた。
「支度はウチに着いてからにしよっか」
「支度っ!?」
何のことを言っているのか意味不明だ。
「僕にしっかり掴まっていてね」
「はいっ!?」
こうして、紅は状況がわからないまま拉致されたのだった。
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