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20:祭りのあと

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 いつからいたのだろう。唐突な声にハッとして顔を上げれば、異形が目に入った。
 真っ黒な人型が水面に立っている。声をかけてきたのは彼のようだ。顔らしき場所はのっぺりとしてなにもないのに、直感的に彼と目が合ったとわかった。
 彼は首を傾げる。

「ああ、クリーニング屋と言われてもピンとこないか。祭りのあとみたいに興奮してはしゃいでいる異物を取り除いて、清浄に戻す仕事をしている奴等のことだよ」

 そう告げて、彼は僕を指差した。

「キミはこの世界にとって異物だ。早急に取り除かないと」

 背筋がぞくりと冷えた。この異様な感じには覚えがある。
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