〖完結〗俺が【聖女】でほんとうにいいのか? 人は助けるが毛も生やすぞ?

さるナース

文字の大きさ
23 / 42

第020話、幼女が、、、これって事案?

しおりを挟む

目の前にはどや顔をした、小さな女の子が立っている。 なぜか俺の師匠になると宣言してきた、新手の告白か? それにしては色気がない、どうしたらいいのかよくわからない。

「えーと、とりあえずどこかお店に入ろうか? 道端じゃ落ち着いて話もできないし」

「おっ! そうじゃな、ふむ、ワシはあの店に入りたい」

エステンが指差したのは、ピンクの可愛らしい外観をした一部ではかなり有名な甘味処『メイド茶屋』 雑誌で見たけどちょっと俺にはハードルが高い、いかがわしいお店ではないが話をするには向いてないだろう。

「……あの店?」

「うむ、前から行ってみたかったのじゃ! 可愛いのじゃ」

「えーと、あそこは一部の男性がよく通う店で女の子はあまり行かないんじゃないのかな」

「そうなのか? あんな可愛い店に男が通うのか? 女は行ってはいかんのか?」

「うん、まぁ、ダメってことはないけど…… 話をするには少し騒がしいお店なんだ、また別の機会がいいと思う」

「そうか、残念だが話がしにくいのであればしかたあるまい、それならあそこはどうじゃ?」

次にエステンが指差したのは普通の喫茶店 『とんとん亭』 なんの変哲もない普通の見本のような店だ、悪口ではない普通のお店こそ長年にわたり生き残るのだ。 さぁ入ろうかな。

「あそこなら話はしやすいかな、静かだし」
(良かった、普通だ、普通って素晴らしい)

「じゃあ、決まりじゃな」


***


俺は『エステン』と名乗る小さな女の子と喫茶店 『とんとん亭』 に入った。 ん~これも周囲から怪しいのかな、でも家とかメイド茶屋に行くよりはいいか、話を進めてみた。

「さて、じゃあ話を整理しようか」

「うむ」

「まず、君は俺より経験のある治癒師」

「そうそう!」

「そして、『治癒っちの大冒険』の作者」

「その通り!」

「それもあまり信じられないんだけど、でも本の中身を知ってるし、エステンという名前もたしかに作者として本に書いてあったのを思い出した」

「そうじゃろ!」

「わからないのは、俺の師匠ってのはどういうこと?」

「その言葉の通りじゃ、お前には才能があるその才能をワシが鍛えてやる!」

エステンはギラリとした目で俺を見つめる、うーむ可愛らしい幼女に見つめられるとは、一部の男なら泣いて喜びそうだ。 でもまだ会ったばかりだし、俺のことは何も知らないはずだよな。

「なんでそんなことわかるの?」

「あの本を理解し実践したのじゃ、それだけで才能があるのは明白、あの本に書かれてある内容は普通の治癒師からするとただの絵空事じゃ」

「実践した? そんなことまで知ってるの?」

「見ておったからな」

どこから見ていたのかエステンは俺が重傷者を治したのを知っていた、さっきの内臓の質問は確認だったらしい、そういやイワ先輩からも言われたな。

「たしかに、イワ先輩も本の内容について "空想だ" って言ってた」

「そのイワ先輩はよく知らんが、まぁその反応が普通じゃ、お前は元々は治癒師ではなかったのじゃろ?」

どこまで知っているのか、エステンはどや顔をしている。

「うん、魔法道具を作ってた、治癒師については勉強不足であまり知らない」

「それが良かったのじゃ、先入観なく本の内容を素直に受け入れることができた、そのうえお前は世にも珍しい "男の治癒師" 普通とはかけ離れた存在よ」

「そんな、人を珍獣みたいに……」

「似たようなものよ、じゃからワシがお前に更なる知識を授けようというのじゃ、習得すれば "聖女" にだってなれる!」

「なれる! と言われても俺は男だし、おネエさんになるのはやだよ」

(こんなムキムキして、笑顔がキモいおネエさんとか、想像しただけで寒気が……)

「ま、そこは "言葉のあや" というものじゃ、つまり聖女に近い存在になれる、ということよ」

「うーん、気が乗らないな~」

(俺はあまり出世したくない、"聖女"並みに凄いなら、お偉いさんと会ったりとかするだろうし、なんか地域によっては信仰の対象らしいし、そこから恨まれる可能性もあるよな)

「なんでじゃ? 偉くなれば金も手に入る、権力も手に入る、女も手に入るぞ、良いことばかりでないか」

「うーん、メリットとデメリットを比較すると、まだデメリットが大きいような……」
ブツブツ

「なんじゃ? 訳のわからんことをブツブツと…」

俺はよく考えた上で、エステンに質問してみる。

「……君を師匠に迎えると、俺の治癒能力はかなり上がるんだよね? 今まで救えなかった人とか魔物とか救えるんだよね?」

「さっきからそう言っておる、まだまだ能力を使いこなせておらんからワシが鍛えたら爆発的に上がる、だが…… 魔物も救うのか?」

エステンは不思議そうな表情をしている、さらに追及してくる。

「魔物は基本的に人へ害をなす生き物じゃ、それなのに救うのか?」

「えと、俺は少し前まで魔物と関わったことはなかったんだ、時々冒険者が魔物を狩ったという話を聞くくらいで、でも最近になってドラゴポイという魔物が狂って暴れてて、治癒魔法で助けた、その魔物は本来おとなしいと聞いたし、可愛いかった、だからそういった魔物は救いたい」

(そうだ、悪い魔物ばかりじゃないんだから、良い魔物は救いたい)

「ふむ、なるほど、ではおとなしくて可愛いかったら救うのか? では可愛くなければ倒すのか?」

「えっ?」

「今の話だと倒しても良い魔物とそうでない魔物がいる、という風に聞こえた、その区別は?」

「え、いや、、、人に害を与えるかどうか」

「人が魔物へ危害を加えれば魔物もこちらへ危害を加える、さきほどのドラゴポイの話は知っておる、子どもを取られた魔物が怒って、そこに瘴気がまとわりついて騒ぎになった、その場合は "害のある魔物" ではないのか?」

「でも、本来はおとなしいって……」

「その "本来" というのも人間が決めた基準じゃ」

(言い返せない、そもそもさっきのドラゴポイの性格も冒険者の人に聞いた話だし)

「まぁ良い、いきなり追い詰めるようで悪かった、もし聖女に近い高みまで上り詰めるのであれば、こういった悩みも出てくる、おいおい考えていけばよい」

「……なんかほんとに師匠っぽいね」

「ワシを師匠と認めるか?」

エステンはニヤ~っとしている、怪しげな目つきだ、妖艶な感じもする、あまりその目はしない方がいいかも、変な男が寄ってくるよ、防犯ブサーを渡しておこうかな。 俺は見た目は幼女だか、深い考えと頭脳を持ったエステンを師匠とすることに決め頭を下げた。

「そうだね、いや、そうですね、よろしくお願いします」

「うむっ!!」

「ところで師匠はおいくつなんですか? どこの治療院に勤めてるんですか?」

「女にはな秘密があった方が魅力的じゃ、あとワシのことは周りにはまだ言わないように、これは命令じゃ」

「なぜですか?」

「それはまだ言えん、もし命令を破った場合は "お兄さんにイタズラされた、ふぇ~ん" と言いふらす」

とんでもないことを言い出した、そんなことを言いふらされたら俺は社会的に抹殺されてしまう、エステンは邪悪な笑みを浮かべているように見えた。

「うぐっ!」

「では、これからよろしくじゃ」

「……はい」

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...