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第023話、笑顔は男の武器です
しおりを挟む翌日、俺は仕事が終わってから冒険者ギルドへ行き、外の物陰にいた、さすがに仕事中のツルンさんに説教するのは気が引けたので、仕事が終わるのを待っている、物陰にいるのはツルンさんを逃がさないためである、横にはエステン師匠もいる。
「お疲れさまでした~」
ツルンさんが出てきた、俺は影からツルンさんに気づかれないように、後ろへそっと近づき静かにささやくように声をかけた。
「……お疲れさまです、ツルンさん」
ボソッ
「ひゃうっ!」
変な声をだしてツルンさんは飛び上がった、俺からバッと離れながらこちらを振り向く、俺の顔を見てすぐに逃げ出そうとするが、俺は筋肉にまかせて素早く動きツルンさんの逃げ道をふさぐように回り込む、エステン師匠と挟み撃ちにする体制になった。
「な~ぜ~ 逃げるんですか?」
ニゴ~ッ!
俺なりの "最高の笑顔" を見せながらツルンさんを呼び止める、すぐに逃げ出そうとするとは俺がなにをしに来たのかうすうす勘づいているのだろうな、またスキル "女の勘" だな。
「あら~ こんにちはです~ どうかしたんですか~?」
俺の渾身の笑顔を受けながら、それに耐えてなんとか笑顔で挨拶を返してこようと努力はしているが、ツルンさんの顔は青ざめている、さらに俺とは反対側にエステンがいるのを見て、更に青ざめる。
「実はそこにいる女の子(エステン師匠)にイケナイ事を教えている、事案の塊のような人がいるらしくて…… 」
俺が話を始めるとツルンさんは目をそらしだした、更に追求してみる。
「どう思います? あんな小さな幼女にムチやらロープやら○○縛りやら…… そんなことを教えているみたいなんですが」
顔色が青から土色になっていくツルンさん、そろそろ俺の笑顔への耐久力が落ちてきたころだろう、ここら辺でやめておくかな、なんか泣きそうな顔をしている。
「ぐすっ…… ごめんなさい~ すみません~ もうしません~」
ツルンさんは俺の笑顔に耐えきれなくなりとうとう泣き出した、俺も笑顔の効果をわかってて武器にしたけど、ここまでの反応があると自分へのダメージもハンパない、ふとエステン師匠の方を見ると俺の笑顔の余波を受けたようで石化していた、さすがに突発的だったのでガードしきれなかったようだな。
「まったく、、、 それで? ツルンさんはなんであんなことをしたんですか?」
「それは…… いつも人体実験しか興味のないエステンさんが、初めて男の人に興味を持ったのが嬉しくて~ ガールズトークもしたかったし~ ちょっとスパイスを加えたら~ 刺激的で楽しいかな~ って思って~」
「スパイス…… SMが?」
(やっぱりどついたろか?)
「そんな大袈裟なものではないですよ~ あのムチだって雑貨屋で買ったんですから~」
テヘッ
俺はジーッとツルンさんを睨む、視線に気づいてツルンさんは汗をかく。
「すみません~……」
俺はエステン師匠の方を向いて声をかけるがまだ石化している、効果の持続時間も凄いな、この笑顔を "メデューサの笑顔" とでも名付けようかな、スキル名があると少しだけかっこいいかも。
「師匠! しっかりして師匠! 起きてください、そのまま寝たら風邪ひきますよ!」
「ハッ! なんじゃ? どうした? 魔王が笑ったか?」
エステン師匠は石化の解除に成功した、魔王って誰だよ。
「師匠、話は終わりましたよ、ツルンさんは反省してます」
エステン師匠はツルンさんの泣いた後の表情を見ながら、ため息をついて話し出した。
「はぁ~ ワシに嘘を教えたのを怒ろうと思ったのじゃが…… さすがにあの笑顔を間近で受けた後に叱るのは心が痛むのぉ」
「エステンさん、ごめんなさい」
「まぁよい、お主とは長い付き合いじゃ、サルナスの笑顔に免じて許す」
なんか『笑顔に免じて許す』って、よくある良いセリフなんだけど、この場合は違う意味で使われてるよな、なんとなく複雑な心境だ。
「仲直りとして、この後は皆で食事でもどうじゃ?」
エステン師匠は話をまとめ、突然だが仲直りとして食事を提案してきた、そういやプライベートでツルンさんと話はしたことはないな、エステン師匠との関係とか聞くには良いかも。
「え~と~」
俺の方をチラッとみて、どう返事をしようかツルンさんは迷っている様子だ、俺の方から歩み寄る必要がありそうだな。
「そうですね、今後は気を付けてもらうとして、夕食をご一緒しましょうか、ツルンさんもそれでいいですか?」
「はい~ 行きます~」
少しだけツルンさんの表情が和らいだ、俺たちはツルンさんの提案で近くにある居酒屋『のんだくれ』へ向かった、飲み放題がありお酒の種類も豊富なお店らしい、行ったことはないがお客さんが多いのをよく見かけるし、人気のお店なのだろう。
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