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第038話、勇者っていたんだな
しおりを挟む「聖女にお会いしたい! そこのキミ! 可愛いね、キミが聖女かい?」
キラッ
治癒院へ入るなり近くにいた女性治癒師さんに声をかけている男がいる、怪我人ではなさそうだしなんかとても軽そうでチャラチャラしてるな、ノミー課長の好みに合うかな? 呼びに行こうかな~
髪が金髪で服装もいろんな部位があいており肌を露出している、言動は軽い『チャラ男』だな、俺は勝手に命名した。
「落ち着いてください、ところかまわず声をかけるんじゃありません、そんな子に育てた覚えはありませんよ」
チャラ男の横にもう一人、杖を持ちローブを羽織って帽子もかぶっている、メガネもついてて知的な感じだ、典型的な魔法使いスタイルだな。 男性なのだが言動から『おかん』が似合いそう。
『チャラ男』と『おかん』の漫才とも言える掛け合いを眺めているとイワ先輩が出てきた。
「あの、聖女にどのようなご用でしょうか?」
「ああ、美しいお姉さん、俺は【勇者】チャカ! 聖女に会いに来ました」
キラッ
「えっ! 勇者様? えと、本物でしょうか?」
あいつ勇者様なのか? 『勇者*チャラ*』か、見た目の通りの名前だな、聖女というか俺になんの用だ? 隣の魔法使いもイワ先輩に話しかけている。
「本物の【勇者】ですよ、突然の訪問をお詫びいたします、僕は『ミタ』 見ての通り…… 【家政婦】です」
いや魔法使いじゃないんかいっ! 家政婦ってなに? 家にいるもんじゃないの? それに男だよね?
「少々お待ちください、確認をとりますので……」
いかにも怪しい二人組だけど、ほんとうに勇者様? イワ先輩は確認をしに院長室へ向かう。 俺が勇者をジーッと見てるとーー
「ん? そこのキミ! サインでもほしいのか? なるほど俺に憧れてるのか、わかるよ」
チャラい上にナルシストかぁ、『チャラシスト』だな。
「色紙とマジックはあるかい? 書いてあげよう」
「いえ、大丈夫です」
「遠慮しなくていいよ、俺は男にも優しいんだ」
……めんどくさいチャラシストだな。 そう思っていると急病人が運ばれてきた。
「すみません! こいつが急に倒れて苦しそうなんです!」
俺はすぐに急病人へかけより状態を確認する、この気配はーー
「おい、何してるんだ? 早く中に運んで治癒師に診てもらうべきだよ」
「ちょっと黙ってて!」
「んぁ!?」
勇者うるさい、この気配は前にドラゴポイにまとわりついて、その後に俺にも向かってきた黒いモヤ? なぜ、あの時に消したはずなのに、とにかく魔法で黒いモヤを消そう。
俺は急病人に手をかざして魔法をかける。
「クロキエロ!」
黒いモヤの気配は消えた、どこでとりつかれたんだろうか。
急病人は意識を取り戻した、苦しくもないみたいだ、俺は話を聞いてみる。
「どこで苦しくなったんですか?」
「えーと…… たしか街中を歩いてて路地裏に大きな影が見えて近づいて、そこからは覚えてません」
「路地裏か、なにかいたのかも」
俺が考え込んでいるとイワ先輩が戻ってきた。
「確認がとれました勇者様、先程は失礼しました、ん? どうかしたのサルナス君?」
「あの、この人が急病で運ばれてきたので魔法で治しました、黒いモヤの気配があったのでクロキエロを使いました」
「え? 黒いモヤってあの時にサルナス君が消したんじゃ」
「そのつもりだったんですけど……」
勇者が話に入ってきた、少し不機嫌そうな表情だ。
「さっきから話が見えないな、なぜ男のキミが治癒魔法を使える? 黒いモヤってなんだ? 俺には何も見えなかったぞ」
説明がめんどいなぁ、イワ先輩が対応をしてくれた。
「勇者様、紹介します 『聖女』サルナス君です」
「ども聖女っす」
「は? 聖……女? 何を言ってるんだ、こいつは男だろ?」
「男サルナス、聖女やってます」
「ふざけてんのか?」
「まじめに男してます」
「ど、どうしたの、サルナス君? なんか言葉遣いがーー」
イワ先輩がオロオロしている、だってこのチャラシストってうざいし、なんか気にくわん。
「えーと、私から説明します、前にドラゴポイが黒いモヤに覆われて理性を失い街の外で大暴れをしたことがありまして、その黒いモヤが原因だったのですが、黒いモヤは瘴気といって聖女にしか見えないようなのです、その時はこのサルナス君が瘴気を吹き飛ばして解決しました」
「ほんとうに聖女なのか? 美女は?」
「え~、事情がありまして、男性ですが治癒師の適正があり、能力もずば抜けていまして、治癒師協議会から正式に【聖女】の称号を認定された本物です」
「マジか、せっかく美女がいると思ってこの街まで来たのに……」
勇者はがっくりと膝を落とした、そのまでショックなのか? 見た目の通り女好きなんだな、それより瘴気のことを確認しないと。
「イワ先輩、瘴気のことを確認してきます」
俺は先程の急病人を連れてきた男性に声をかけて、場所を案内してもらうことにした。
「待ちたまえ! その黒いモヤというのは魔物にとりつくんだろ? 俺も行く、魔物退治は勇者の仕事だ」
「好きにしたら」
めんどいが俺は勇者と共に大きな影を見たという路地裏の辺りまでやってきた。
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