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第1章
危機
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なぜ私の予言が外れたのにも関わらず、殿下は私をすぐさま処罰しようとしないのか。
その疑問は、直ぐに晴れた。
「あ、あの……」
カツカツという、2人分の靴音だけが響く。
長い長い階段。
私はドレスの裾を掴み、薄汚れた床に触れないようにして歩く。
その隣には、第一王子のクラウス殿下。
彼は無言で無表情。
真っすぐに前方を見やり、ただただ塔を登り続けていた。
「で、殿下」
閉塞感と気まずさに押しつぶされそうになった私は、クラウス殿下に話しかけることにした。
「なんだ?」
「どこへ向かっているのですか? 私たち」
私の心が、大きな不安で陰る。
無事に私の死が回避されたあと、クラウス殿下は用事があるからと言って、私のいる部屋から立ち去った。
私は拍子抜けした心地でしばらくぼんやりしていたが、王子の眼前で醜態を晒してしまったことを思い出し、愕然とする。
令嬢である身ながら、三徹で風呂にも入っていない、汚らしい風貌で殿下の目の前をウロチョロしていたのだ。
それを強要したのがクラウス殿下であるとはいえ、あの厳しい両親がこの状況を知れば、あの2人の断罪がなくとも秘密裏に抹殺されるであろう。
自分の行ったことの重大さに驚き、血の気が引いた私は、部屋にあった風呂ですぐさま身体を清める。
風呂から出ると、いつの間にか部屋に侍女が待機しており、そのまま替えのドレスに着替えさせられた。
「グラシア様」
侍女が言った。
「殿下がお待ちです」
「で、殿下ですって!?」
私は素っ頓狂な声をあげる。
「ま、まさか……」
ランスロット王子、私が城にいることに気づいて、自らの手で抹殺しに――。
「違います。クラウス殿下です」
「……ああ、なんだ」
私はホッと安堵の吐息を漏らす。
殿下っていうから、てっきり婚約者の方かと。
私はもともと、クラウス殿下と親しい関係ではない。
話しかけることも、話しかけてくることもないせいか、「殿下」という単語を聞くと、どうしても第二王子の方を先に連想してしまう。
「クラウス殿下がお待ちですので、すぐに身支度を」
「わかりましたわ」
そうして今に至るわけだ。
クラウス殿下は、城の寂れた塔に私を案内した。
なんの説明もせず、ただ、
「ともかく私についてきてくれ」
と言われ、のこのこついていったは良いものの。
塔の最上階に近づくごとに、私の不安は増大していく。
もしかして。
もしかして。
脂汗が背筋を通る。
殿下に案内されたこの塔は、今は誰も使っていない、ほとんど廃墟みたいな場所だと聞く。
こんな場所に、護衛もなく2人きりで登っているということは。
まさか――。
私、クラウス殿下にここで殺される?
その疑問は、直ぐに晴れた。
「あ、あの……」
カツカツという、2人分の靴音だけが響く。
長い長い階段。
私はドレスの裾を掴み、薄汚れた床に触れないようにして歩く。
その隣には、第一王子のクラウス殿下。
彼は無言で無表情。
真っすぐに前方を見やり、ただただ塔を登り続けていた。
「で、殿下」
閉塞感と気まずさに押しつぶされそうになった私は、クラウス殿下に話しかけることにした。
「なんだ?」
「どこへ向かっているのですか? 私たち」
私の心が、大きな不安で陰る。
無事に私の死が回避されたあと、クラウス殿下は用事があるからと言って、私のいる部屋から立ち去った。
私は拍子抜けした心地でしばらくぼんやりしていたが、王子の眼前で醜態を晒してしまったことを思い出し、愕然とする。
令嬢である身ながら、三徹で風呂にも入っていない、汚らしい風貌で殿下の目の前をウロチョロしていたのだ。
それを強要したのがクラウス殿下であるとはいえ、あの厳しい両親がこの状況を知れば、あの2人の断罪がなくとも秘密裏に抹殺されるであろう。
自分の行ったことの重大さに驚き、血の気が引いた私は、部屋にあった風呂ですぐさま身体を清める。
風呂から出ると、いつの間にか部屋に侍女が待機しており、そのまま替えのドレスに着替えさせられた。
「グラシア様」
侍女が言った。
「殿下がお待ちです」
「で、殿下ですって!?」
私は素っ頓狂な声をあげる。
「ま、まさか……」
ランスロット王子、私が城にいることに気づいて、自らの手で抹殺しに――。
「違います。クラウス殿下です」
「……ああ、なんだ」
私はホッと安堵の吐息を漏らす。
殿下っていうから、てっきり婚約者の方かと。
私はもともと、クラウス殿下と親しい関係ではない。
話しかけることも、話しかけてくることもないせいか、「殿下」という単語を聞くと、どうしても第二王子の方を先に連想してしまう。
「クラウス殿下がお待ちですので、すぐに身支度を」
「わかりましたわ」
そうして今に至るわけだ。
クラウス殿下は、城の寂れた塔に私を案内した。
なんの説明もせず、ただ、
「ともかく私についてきてくれ」
と言われ、のこのこついていったは良いものの。
塔の最上階に近づくごとに、私の不安は増大していく。
もしかして。
もしかして。
脂汗が背筋を通る。
殿下に案内されたこの塔は、今は誰も使っていない、ほとんど廃墟みたいな場所だと聞く。
こんな場所に、護衛もなく2人きりで登っているということは。
まさか――。
私、クラウス殿下にここで殺される?
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