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プロローグ
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私――公爵令嬢ルーナには、婚約者がいる。
彼の名前は、公爵子息エリオット。
文武両道、眉目秀麗の、性格も大変良い完璧な正統派イケメンだ。
彼が道を歩けば老若男女が振り返り、彼が微笑めばみんな彼に惚れる。
そんな王子よりも王子らしい貴公子が、私の婚約者である。
しかし、私は気づいていた。
彼と私の関係には、全く未来がないということに。
彼の瞳に映るのは、私ではないということに。
彼は自分の義妹に恋をしていた。
彼女が彼の家にやってきてから、ずっと。
彼女は、とても素敵な子だった。
愛嬌のある、花の妖精のように可憐な姿。
誰からも愛され、大切にされている。
そんな彼女に恋をしてしまったエリオットは、それゆえに酷く苦しんでいた。
婚約者がいるにも関わらず、他の人を好きになってしまう罪悪感。
しかもそれが義理とはいえ、自分の妹である。
決して結ばれることのない、辛く悲しい恋だ。
それを知っている私は、エリオットと自分の関係がうまく行くはずないとよく理解していた。
だけど、当然そのままにしておけるはずがない。
他人の婚約者を惑わす悪魔のような女を、どうにかしなければ。
無自覚に人の物を取るような、恐ろしい女を。
婚約者を魅了する女を消すため、裏で色々な策を講じる――というのが、よくある普遍的なシナリオだろう。
だけど、私はそんな気がまるでない。
なぜなら――。
婚約者とその義妹のカプが大好きだったから。
そう、私は転生者だった。
前世の私は、ある漫画が大好きだった。
そこでドハマりしていたのが、エリオットとその義妹の関係。
恋に苦しむエリオットの切ない表情に、当時の私の心臓はギュンギュンしていた。
あの2人のカプこそが至高だと、連載中は妄想を膨らませたり、二次創作を読んだりコミケで買ったり、なんなら自家発電もしていた。
あのころは、
「あの2人の概念を生み出してくれた作者様マジ感謝」
と、毎日全力でSNSに呟いていた。
それほど、この2人のカップリングが好きだったのだ。
――だが。
公式は、エリオットではなくぽっと出の第一王子を彼女の相手に選んだ。
俺様系の、いかにも性格の悪そうな男。
私は絶望する。
公式に見捨てられた最推しカプ。
連載が終了し、次々と二次を書かなくなる作家たち。
あのころは本当に辛かった。
だけど今は違う。
私はエリオットの婚約者ルーナに転生した。
大好きな漫画の世界で、間近で推しカプを眺められる最高のポジションを、私は手に入れたのだ。
彼の名前は、公爵子息エリオット。
文武両道、眉目秀麗の、性格も大変良い完璧な正統派イケメンだ。
彼が道を歩けば老若男女が振り返り、彼が微笑めばみんな彼に惚れる。
そんな王子よりも王子らしい貴公子が、私の婚約者である。
しかし、私は気づいていた。
彼と私の関係には、全く未来がないということに。
彼の瞳に映るのは、私ではないということに。
彼は自分の義妹に恋をしていた。
彼女が彼の家にやってきてから、ずっと。
彼女は、とても素敵な子だった。
愛嬌のある、花の妖精のように可憐な姿。
誰からも愛され、大切にされている。
そんな彼女に恋をしてしまったエリオットは、それゆえに酷く苦しんでいた。
婚約者がいるにも関わらず、他の人を好きになってしまう罪悪感。
しかもそれが義理とはいえ、自分の妹である。
決して結ばれることのない、辛く悲しい恋だ。
それを知っている私は、エリオットと自分の関係がうまく行くはずないとよく理解していた。
だけど、当然そのままにしておけるはずがない。
他人の婚約者を惑わす悪魔のような女を、どうにかしなければ。
無自覚に人の物を取るような、恐ろしい女を。
婚約者を魅了する女を消すため、裏で色々な策を講じる――というのが、よくある普遍的なシナリオだろう。
だけど、私はそんな気がまるでない。
なぜなら――。
婚約者とその義妹のカプが大好きだったから。
そう、私は転生者だった。
前世の私は、ある漫画が大好きだった。
そこでドハマりしていたのが、エリオットとその義妹の関係。
恋に苦しむエリオットの切ない表情に、当時の私の心臓はギュンギュンしていた。
あの2人のカプこそが至高だと、連載中は妄想を膨らませたり、二次創作を読んだりコミケで買ったり、なんなら自家発電もしていた。
あのころは、
「あの2人の概念を生み出してくれた作者様マジ感謝」
と、毎日全力でSNSに呟いていた。
それほど、この2人のカップリングが好きだったのだ。
――だが。
公式は、エリオットではなくぽっと出の第一王子を彼女の相手に選んだ。
俺様系の、いかにも性格の悪そうな男。
私は絶望する。
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あのころは本当に辛かった。
だけど今は違う。
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