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クレープ
その後は最悪の気分のまま、クレープ屋へマーサと向かった。
正直、さっきのユーリの仕打ちに2人ともブチ切れててそれどころじゃなかったんだけど、でもクレープ屋に行かなきゃあの男に負けたような気がして、そっちの方が嫌だった。
怒りに任せて、スーパーデンジャラスストロベリーホイップにチョコソースと追いストロベリーソースとカスタードホイップを追加した、超特大クレープを特注で作ってもらう。
それを2人でスプーンでガシガシと掬って食べた。
「あいつ、マジでなんなの?」
マーサはイライラしている。
おそらく、私以上に。
「何が、
『時系列的には何の問題もない』
ですって。
良いわけないでしょ!」
「まあまあまあ」
私はマーサを宥める。
「落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられる? ーーてか、なんでウェンディは冷静なのよ。自分のことでしょ!」
「いや、まあそんなんだけどさ」
私は苦笑いする。
「もうあそこまで来ると、笑うしかなくて」
「笑うしかないって、なんなのよ」
「だってさ、わかる? 私たち、幼馴染なのよ。なんでも知ってるの。お互いを。なのに、よ。何あれ? 誰なのあれは? あれが本当にユーリなら、私はずっと騙されてたってわけ?」
こんな酷い裏切り、あるというのか。
あの粗雑で可愛くて、良い意味で典型的な「男の子」だった、あのユーリが。
婚約者の私を大切にしてくれていたユーリが。
浮気した挙句、あんなことを言うなんて。
もう、笑うしかない。
「どうするの?」
マーサは尋ねる。
「何を?」
「これからよ。もちろん、婚約破棄するんでしょうね?」
「こ、婚約破棄……?」
「何よそれ。考えてもなかったの?」
「うーん」
私は口に大きな苺を放り込んで食べた。
「全然想像がつかないのよね。私とユーリが別れる世界線が。だって、ずっと一緒にいたし」
私の返答を聞いて、マーサはため息をついた。
「馬鹿ね、あんた。あの男にやられっぱなしでも良いって言うの?」
「そう言うのじゃないんだけど。もちろん別れるわ。というか、別れたいと思っている。でも、それだけじゃきっとユーリは、
『だから何?』
ってなるだけだと思う。正直それだけじゃ、私の気は晴れない」
「……まあ、確かにそうね。私だって第三者だけど、あの男と関わりがなくなる前に、1発ぶん殴ってやりたいものーーそうだ!」
マーサは手を打った。
「あの女を寝取れば良いのよ!」
「ね、寝取る?」
マーサの口からとんでもない言葉が吐かれ、私はびっくりした。
「ほら、ヒメナ。彼女をあいつから奪ってやれば良いんじゃない!」
「えっ。でも、どうやって?」
「別れさせ屋を雇うのよ」
「雇うって言ったって、そんな人知り合いにいないわよ」
「プロに頼むわけじゃないわ」
マーサは、今まで見た中で一番悪い顔をした。
「あの男の友達を雇うのよ。それでヒメナを略奪してもらうの。そのあとにあんたが婚約破棄を申し出れば、あいつは一気に友達と恋人と婚約者を失うことになるわ」
マーサは、私の背中をバンバン叩く。
「これで行きましょう。ウェンディ、良いアイデアだと思わない?」
「そ、そうね」
私はマーサの勢いに圧倒され、同意する他なかった。
「そう思うわ」
「じゃあ早速、誰に頼むか考えましょ。あいつと一番仲良い友達って、誰?」
「仲良い友達ね。えーっと」
私は少し考え込む。
「いつも一緒にいるところを見かけるのは、パトリック公爵子息ね」
「じゃあ、それで決まりね」
マーサは声高らかに笑った。
「パトリックに、ヒメナを略奪してもらうよう頼みに行きましょう」
正直、さっきのユーリの仕打ちに2人ともブチ切れててそれどころじゃなかったんだけど、でもクレープ屋に行かなきゃあの男に負けたような気がして、そっちの方が嫌だった。
怒りに任せて、スーパーデンジャラスストロベリーホイップにチョコソースと追いストロベリーソースとカスタードホイップを追加した、超特大クレープを特注で作ってもらう。
それを2人でスプーンでガシガシと掬って食べた。
「あいつ、マジでなんなの?」
マーサはイライラしている。
おそらく、私以上に。
「何が、
『時系列的には何の問題もない』
ですって。
良いわけないでしょ!」
「まあまあまあ」
私はマーサを宥める。
「落ち着いてよ」
「これが落ち着いていられる? ーーてか、なんでウェンディは冷静なのよ。自分のことでしょ!」
「いや、まあそんなんだけどさ」
私は苦笑いする。
「もうあそこまで来ると、笑うしかなくて」
「笑うしかないって、なんなのよ」
「だってさ、わかる? 私たち、幼馴染なのよ。なんでも知ってるの。お互いを。なのに、よ。何あれ? 誰なのあれは? あれが本当にユーリなら、私はずっと騙されてたってわけ?」
こんな酷い裏切り、あるというのか。
あの粗雑で可愛くて、良い意味で典型的な「男の子」だった、あのユーリが。
婚約者の私を大切にしてくれていたユーリが。
浮気した挙句、あんなことを言うなんて。
もう、笑うしかない。
「どうするの?」
マーサは尋ねる。
「何を?」
「これからよ。もちろん、婚約破棄するんでしょうね?」
「こ、婚約破棄……?」
「何よそれ。考えてもなかったの?」
「うーん」
私は口に大きな苺を放り込んで食べた。
「全然想像がつかないのよね。私とユーリが別れる世界線が。だって、ずっと一緒にいたし」
私の返答を聞いて、マーサはため息をついた。
「馬鹿ね、あんた。あの男にやられっぱなしでも良いって言うの?」
「そう言うのじゃないんだけど。もちろん別れるわ。というか、別れたいと思っている。でも、それだけじゃきっとユーリは、
『だから何?』
ってなるだけだと思う。正直それだけじゃ、私の気は晴れない」
「……まあ、確かにそうね。私だって第三者だけど、あの男と関わりがなくなる前に、1発ぶん殴ってやりたいものーーそうだ!」
マーサは手を打った。
「あの女を寝取れば良いのよ!」
「ね、寝取る?」
マーサの口からとんでもない言葉が吐かれ、私はびっくりした。
「ほら、ヒメナ。彼女をあいつから奪ってやれば良いんじゃない!」
「えっ。でも、どうやって?」
「別れさせ屋を雇うのよ」
「雇うって言ったって、そんな人知り合いにいないわよ」
「プロに頼むわけじゃないわ」
マーサは、今まで見た中で一番悪い顔をした。
「あの男の友達を雇うのよ。それでヒメナを略奪してもらうの。そのあとにあんたが婚約破棄を申し出れば、あいつは一気に友達と恋人と婚約者を失うことになるわ」
マーサは、私の背中をバンバン叩く。
「これで行きましょう。ウェンディ、良いアイデアだと思わない?」
「そ、そうね」
私はマーサの勢いに圧倒され、同意する他なかった。
「そう思うわ」
「じゃあ早速、誰に頼むか考えましょ。あいつと一番仲良い友達って、誰?」
「仲良い友達ね。えーっと」
私は少し考え込む。
「いつも一緒にいるところを見かけるのは、パトリック公爵子息ね」
「じゃあ、それで決まりね」
マーサは声高らかに笑った。
「パトリックに、ヒメナを略奪してもらうよう頼みに行きましょう」
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