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告げ口

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「この手紙、やっぱり貰っていくわ」


 そう言う私に、ドン引きするユージーン。

「えっ……。とんでもない趣味だね。妹の手紙の収集癖?」

「本当失礼ね。あなたさっき私にこれ押しつけようとしてなかったっけ?」

「まあそうだけど……」


 私は手紙をポケットにしまう。

「私はいらないわよ、こんな劇物。ただお父様とお母様に報告するための資料として提出するの」


 妹のせいで散々実害を受けている私でさえ、この馬鹿妹の「姉」という立場は容易に捨てられない。

 私はユージーンと同じ「ただの被害者」という立場ではいられないのだ。


「まあ正直、ここまでヤバいと両親も修道院かどこかに入れてくれるとは思うし。あの方たちは物凄く常識人だから」

「まあそうだろうね」


 だからこそ、あのリリオーネが誕生した経緯が知りたくなる。

 突然変異?


「……となると」

 ユージーンの表情が少し曇る。

「彼女がしかるべき処置を受けたら、これで付き合うふりは終わりと言うことか」

「何残念そうなの?」

「いや全くもって残念じゃないよ。むしろ嬉しいというか」

「そう。じゃあ残念だったわね。そう簡単に世界は上手く回らないと思うわ」


 こんな手紙を書くような化け物が、それくらいで大人しくするはずがない。

 しかもあのアホ殿下と結託しているのだ。

 マイナス×マイナスがプラスになるのは、数学の世界だけである。


「悪いけど、もう少し付き合ってもらうことになると思うわ。ここしばらくで、あなたと恋人関係である方がだいぶ都合が良いってわかったもの」


 このユージーンと言う男は非常に嫌味ったらしく腹の立つ存在だが、私の人望においては良い影響を与えてくれる。

 この男と付き合っているという噂が流れている今、私の評価がぐんと上がったのは棚から牡丹餅。

 今後とも良いものが期待出来そうだ。


「ユージーンが婚約者だったら良かったのにねぇ」

 私の独り言は、彼が紅茶を吹き出した音にかき消される。


「あなた大丈夫? 前と良い今と良い、もう少しマナーを勉強した方が」

「ど、どう考えても君のせ――いや、なんでもない」

 
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