ドラゴン・キル・ソード

空野 一春(あくや ひとはる)

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2話「試練の山」(2)

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(あれは、誰だ? もしかして試練の関係者か?)

俺はその人がいる場所を目指して、再び足を進める。
そしてようやく、さっき下から見えた人影の人物の元へと辿り着く。
そこにはちょっとした広場の様な空間があった。

険しい山道はそこの広場で途切れていた。
まだ頂上には着いていない。どうやらこの広場は、このデス・マウンテンの中間地点に当たる場所のようだ。

「お前は試練の参加者か?」

そこに立っていたのは銀の鎧を全身に身に纏う男だった。
鎧の男は図体が大きく、全身から不気味な雰囲気が漂っている。
自分より背も高いし、肩幅もかなりデカい。

銀色の剣を地面に突き刺したまま、両手でそれを力強く握りしめている。
その男は俺に対して、とても太い声でそう尋ねて来た。

頭に被っている兜のせいで顔は見えないが、隙間から鋭く恐ろしい眼差しが伺える。

「は、はい。そうです……リーシャヘザーという剣士にお願いして、連れて来てもらいました」

俺はその力強い眼つきに臆し、少しだけ喉をビクビクさせながら答える。

「……よし、それならそこに置いてある紙に名前を書いて奥に進め。試練開始までそこの広場で待機していろ」

「は、はい。わかりました」

ふと、俺は鎧の男の足元に無意識に視線を向ける。
そして俺はある事に気が付き、目を大きく見開き驚愕する。

(両足が無い!?)

男は両足に金属の義足を装着していた。

(全身に重い鎧を纏ったまま義足で立ち続けているなんて、とても凄い体力だ)

俺が間近で、横から物珍しくその鎧姿の男を見ていると、急に鎧男は俺の顔面に自分の顔を近づけて来た。

「おい、お前!まさかこの私の醜い足が気になるのか?」

鎧男の鋭く真っ赤な目つきが突如、俺の心をエグる勢いで襲った。
急に顔を近づけられた俺は背筋が凍る。

「い、いえ、そんな事は……」
驚いた俺は咄嗟に嘘をついてしまった。
男は俺の顔面を兜の中から真っ赤な目つきでひたすら睨み続ける。

兜の中が薄っすらと見えた。鎧の男の顔面は火傷をしている。顔面の皮膚が酷くただれていた。

「そうか、ならば平和ボケしているお前に言っておいてやる。この私は剣士をしていた時に、ドラゴン共に足を無残に喰い千切られた。そして挙句には顔を生きたままブレスで焼かれた。醜い姿になった私は剣士を引退し、この試練の管理者を務めている。お前も私のように惨めな姿になりたくなければ、今すぐここから立ち去れ。だが命を落としてでも金の為に、竜共と戦う意志がるのであればボケッとせずにさっさと奥に進め! わかったか腰抜け!」

鎧の男に突然、怒鳴り散らされて、俺は歯を食いしばる。
どうやらこの人は自分の傷を見られるのが相当嫌らしい。

「は、はい! すみません!」

俺は急かされるがまま、脇の木製机に置かれていた紙に鳥の羽を使って名前を素早く書き、逃げるように鎧の男から速攻で走って距離を取る。

(俺は別に醜いなんて思ってないんだけどなぁ...)

そして広場の中央へとやって来た。
立ち止まり、辺りをキョロキョロと見渡す。

その広場には、自分よりも体格の大きい青年達が集まって立ち話をしていた。
人数は数十名ほど。

一目で見て、自分よりも歳上の人間達ばかりだというのがわかる。
すると男達は一斉に俺の方へと鋭い眼光を向けて来た。

「なんだ、あの身なりの酷い野郎は?」
「まさか、この試練の参加者か?」
「あんな細い体で剣士になったら、すぐにドラゴンの餌食になっちまうぜ」

みんな喧嘩が強そうな体つきをしている男達ばかり。

(俺の事をコソコソと何か言っているみたいだけど、ケンカに巻き込まれたら大変だから気にしないようにしよう)

俺は一息ついてすぐに広場の奥に目を向ける。

(なんだ、あの急斜面は……)

青年達が立っている広場のその奥には、幅の広い急斜面のような道がある。その道はとても長く、山頂にまで続いているようだった。そして斜面の一番てっぺんをよく見ると赤い旗が突き刺さっている。

すると広場の入り口の方からガラガラとした雑音が聞こえて来た。
俺が通ってきた山道とはまったくの逆方向から綺麗な白い馬車がやって来る。

この広場にいる皆が「なんだなんだ」と言いながらその白い馬車に視線を向ける。
どうやらこの山を上れる道は他にもあったようだ。

俺が上ってきた細く険しい道からでは、流石にあの馬車で上ることは出来ない。
すると、豪快な木製が軋む音と共に、馬車の扉がとてつもない勢いで開いた。

「やっと試練の場に着いたようだな!」
「ぼっちゃま、扉を蹴ってはいけません!」
「黙れ、ジジイ! この俺に偉そうに口出しするな!」

広場内にいる男達よりもさらに盛り上がった筋肉質な体型の男。
体格の良いその男は馬車の扉を蹴り、中から出てきた。

綺麗な白い服を着ている姿からして貴族の人間のようだ。しかし、暴力的で口の悪さから察するに性格はかなり悪そう。

「おい、鎧のおっさん。剣士の試練を受けるにはどうしたら良い?」

広場の入り口付近で、さっきの鎧の男に偉そうな口調でそう聞いている。

「そこの机に置いてある紙に名前を書いて、さっさと奥の広場に進め」

鎧の男は冷静な口調で自分よりも体つきの大きい貴族の男に指図している。
どんな怖そうな相手にも屈しない強い精神。流石は元剣士。

「そうか。よしジジイ。俺の代わりに名前を書いておけ」
「ぼ、ぼっちゃま! お待ちください!」

男は使用人の声にまるで耳を貸さず、広場内にドカドカと足音を響かせながら歩いてくる。
そして途中で立ち止まり、両脇の腰に腕を当てて、周囲を見渡しニヤリと微笑む。

「ここにいるボンクラ共は剣士に似つかわしくない奴らばかりだ。どうやら俺だけが相応しいみたいだな……ん?」

俺はそいつと運悪く視線が合う。
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