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第1章
初めまして
しおりを挟む「・・・・・!?」
僕は飛び起きた。時刻は午前5時半。ちょうど夏の中旬あたりなので、窓からは既に眩い朝日が飛び込んでこの小さな部屋を光で満たしている。
その光をぼんやりと見つめながら、先程まで見ていた、いや、正確には見ていたのであろう夢について考えた。
「・・・なんなんだ?」
あまりよく覚えていない。なんだか頭の中にモザイクがかけられているみたいだ。思い出そうとしてもその輪郭すらはっきりと思い出せない。
だけど、この身体中から吹き出る大量の汗と未だ激しく脈打つこの心臓が物語っている異常な恐怖感と絶望感は本物だ。身体の震えが止まらない。まるで心臓まで冷え切ってるみたいだ。
「・・・なんなんだよ一体・・・」
5分ほどだろうか。ずっと布団にくるまっていたけれども、これじゃあラチがあかない。
震えも拍動も随分穏やかになった。そろそろ布団から出よう。
「・・・いこう」
体内の恐怖感を全て叩き出すために、なるべくやかましく起き上がってみた。
バタン!ドタン!なんて大きい音を立てるのは結構気が引けるけど、仕方ない。ご近所さんには心のうちで謝罪の念を送っておこう。
もう一度手元の時計を確認する。ちょっと進んで5時45分。少し早めの起床だ。いつもの電車よりも前のものに乗れそうだとポジティブに頭を
切り替える。今日は座れるかな?なんて考えながら朝のひと通りを済まして、素早く玄関から外に出た。
「おはよう。東京」
この今住んでいる集合住宅は丘の上にあり、東京を一望することができる。
東京タワー。六本木ヒルズ。霞ヶ関のビル群など、文明の塊でありながら何故か美しく映るこの景色を5分ほど眺めるのは僕の密かな朝の日課だ。これで電車に遅れようものなら全く笑えないんだけども。
今日もまた朝の心地よい風にあたりつつ、この景色を眺める。
「そろそろ行くかな」
いくら早いといえどこのままじゃ折角の早起きの意味が無くなってしまう。
早足で駅に向かう。この調子だと多分座れるな。
実際、電車内の人はまばらで、簡単に座ることが出来た。
「今日はいつもより捗りそうだな・・・」
僕は周りの人達に気づかれない程度の声でそう呟いた。そして携帯を取り出し、いつものページにとぶ。
「何かお便りは・・・と」
そう実は、僕の朝の日課はもうひとつある。
なんてことはない。個人的にやっているSNSを利用した相談室のチェックだ。
案外見ている人は多いらしく、毎日10件くらい通知が届いている。それを1時間程の通勤時間を利用して消化、この時間に収まらなかったら家に帰ってからじっくりと、といった具合だ。
またその内容も様々で
「明日の晩御飯は何がいいと思います?」
というものや
「彼女に愛想尽かされそうです」
などがある。
1度「カプチーノと電波塔のどっちが好きですか?」
という質問が来た時には流石に困ったが、大抵はもっとちゃんとした相談が来るので案外
こっちもやりがいがある。
しかし、今日のお便りは一通のみだった。たまにこういう日はあるのだが、こうなると1時間まるまる相談にあてられるため、いつもみたいに雑な回答にならずに済む。
短い時間の中で頑張ってはいるのだけれど、どうしてもしっかりとした回答は出来ないから、こういうのは熟慮できる分自分でも納得のいく回答を考えやすい。
早速、相談を見てみよう。
題名は・・・
「初めまして。障がい者からの相談です」
・・・・・・ほう?
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