3 / 6
第1章
心と身体
しおりを挟む
今回の相談の内容は障がい者。一口に障がい者と言ってもいろいろな種類がある。と、いうことぐらいしか僕は知らない。精々生まれつき身体の一部がない、だとか耳が聞こえないだとしか知らない。でも、この人のそれは僕の想像とは大きく違った。
「初めまして。障がい者からの相談です。わたしは自分の性別と心の性別が違う、性同一性障害者です。私の場合、心は女性で身体は男性なのですが、これが原因でいじめを受けてきました。小学生の頃は良かったんです。自分が女性に近いという事もあまり気にしてなくて。周りも自分を男として扱っていてくれました。でも、中学校に入ってからは全然違ったんです。成長するにつれて自分の心と身体の間にあるひずみがどんどん大きくなっていく事に気がつきました。それでもなんとか男になろうと必死で。しかしそういう態度が気に食わなかったのか、だんだん仲のよかった友達は私のことを無視するようになったんです。まだ、それならなんとか耐えることができました。でも、そのいじめもどんどんエスカレートしていって、ついには階段から突き落とされました。その時私を突き落とした人に、男ならかかってこいよ。女なら泣いてろ。と言われました。その日から、学校に行くのが怖くなりました。もう死のうかとも思いました。周りに馴染めない自分が悪いんだと自分のことばかり責めていました。
そんな中でも私にずっと寄り添っていてくれた女の子がいました。ここではマリと呼びます。彼女は優しくて、私が障害を持っているといった時も、ほんとはあなたと同じ女の子なんだと言った時も、もう学校に行きたくないと言った時も、ずっと私のそばにいて慰めてくれました。だから生きようと思った。彼女のために頑張って学校に行こうと思ったんです。そこからはどんなに辛くて苦しくて逃げ出したくなっても絶対に学校には行きました。
勉強も頑張りました。誰も本当の私を知らないところに行こうと決めたからです。そしてその甲斐あって第一志望の学校に合格することができました。
ここでやっと本題に入ります。現在私は高校一年生です。マリ以外の仲のいい友達もできました。まだみんなは私の正体に気づいていません。ですが、やはり何か隠しているようで、罪悪感があります。果たして周りにこの事実を打ち明けて、開き直ってしまうべきなのでしょうか。ですが中学時代のトラウマもあるので、中々決めることができません。もし前と同じような状況に陥ってしまったら、マリとも離れてしまった今、きっと私は立ち直れません。どうしたらいいのでしょうか。お返事待ってます。
P.S 私の本名はレイです。今後はそう呼んでいただいて構いません。 」
・・・驚いた。というのが今の素直な感想だ。数千人に一人は彼女と同じ障害を持った人たちがいるらしいが、僕の周りにはその障がいを持った友人は一人もいなかった。だから、それはあくまでただのデータであり、どこかフィクションのように感じていた。
だけど現実には、彼女のように悩んで苦しんでる人たちがいる。きっともっと大勢だ。そう思うと自分が情けなくなってきた。
何がただのデータだ。何がフィクションだ。何にも知らないくせに。思わず泣いてしまいそうだよ。情けない。
決めた。彼女と一緒に悩もう。彼女にとっての最善を見つける手伝いをしよう。それが僕に出来るめちゃめちゃに身勝手な贖罪だ。
そう決めた頃には、電車は既に目的地に到着していた。
「初めまして。障がい者からの相談です。わたしは自分の性別と心の性別が違う、性同一性障害者です。私の場合、心は女性で身体は男性なのですが、これが原因でいじめを受けてきました。小学生の頃は良かったんです。自分が女性に近いという事もあまり気にしてなくて。周りも自分を男として扱っていてくれました。でも、中学校に入ってからは全然違ったんです。成長するにつれて自分の心と身体の間にあるひずみがどんどん大きくなっていく事に気がつきました。それでもなんとか男になろうと必死で。しかしそういう態度が気に食わなかったのか、だんだん仲のよかった友達は私のことを無視するようになったんです。まだ、それならなんとか耐えることができました。でも、そのいじめもどんどんエスカレートしていって、ついには階段から突き落とされました。その時私を突き落とした人に、男ならかかってこいよ。女なら泣いてろ。と言われました。その日から、学校に行くのが怖くなりました。もう死のうかとも思いました。周りに馴染めない自分が悪いんだと自分のことばかり責めていました。
そんな中でも私にずっと寄り添っていてくれた女の子がいました。ここではマリと呼びます。彼女は優しくて、私が障害を持っているといった時も、ほんとはあなたと同じ女の子なんだと言った時も、もう学校に行きたくないと言った時も、ずっと私のそばにいて慰めてくれました。だから生きようと思った。彼女のために頑張って学校に行こうと思ったんです。そこからはどんなに辛くて苦しくて逃げ出したくなっても絶対に学校には行きました。
勉強も頑張りました。誰も本当の私を知らないところに行こうと決めたからです。そしてその甲斐あって第一志望の学校に合格することができました。
ここでやっと本題に入ります。現在私は高校一年生です。マリ以外の仲のいい友達もできました。まだみんなは私の正体に気づいていません。ですが、やはり何か隠しているようで、罪悪感があります。果たして周りにこの事実を打ち明けて、開き直ってしまうべきなのでしょうか。ですが中学時代のトラウマもあるので、中々決めることができません。もし前と同じような状況に陥ってしまったら、マリとも離れてしまった今、きっと私は立ち直れません。どうしたらいいのでしょうか。お返事待ってます。
P.S 私の本名はレイです。今後はそう呼んでいただいて構いません。 」
・・・驚いた。というのが今の素直な感想だ。数千人に一人は彼女と同じ障害を持った人たちがいるらしいが、僕の周りにはその障がいを持った友人は一人もいなかった。だから、それはあくまでただのデータであり、どこかフィクションのように感じていた。
だけど現実には、彼女のように悩んで苦しんでる人たちがいる。きっともっと大勢だ。そう思うと自分が情けなくなってきた。
何がただのデータだ。何がフィクションだ。何にも知らないくせに。思わず泣いてしまいそうだよ。情けない。
決めた。彼女と一緒に悩もう。彼女にとっての最善を見つける手伝いをしよう。それが僕に出来るめちゃめちゃに身勝手な贖罪だ。
そう決めた頃には、電車は既に目的地に到着していた。
0
あなたにおすすめの小説
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
十六歳の妹の誕生日、私はこの世を去る。
あいみ
恋愛
碌に手入れもされていない赤毛の伯爵令嬢、スカーレット。
宝石のように澄んだ青い髪をした伯爵令嬢、ルビア。
対極のような二人は姉妹。母親の違う。
お世辞にも美しいと言えない前妻の子供であるスカーレットは誰からも愛されない。
そばかすだらけで、笑顔が苦手な醜い姉。
天使のように愛らしく、誰からも好かれる可愛い妹。
生まれつき体の弱いルビアは長くは生きられないと宣告されていた。
両親の必死に看病や、“婚約者の献身的なサポート”のおかげで、日常生活が送れるようになるまで回復した。
だが……。運命とは残酷である。
ルビアの元に死神から知らせが届く。
十六歳の誕生日、ルビアの魂は天に還る、と。
美しい愛しているルビア。
失いたくない。殺されてなるものか。
それぞれのルビアを大切に思う想いが、一つの選択をさせた。
生まれてくる価値のなかった、醜いスカーレットを代わりに殺そう、と。
これは彼女が死ぬ前と死んだ後の、少しの物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
6年前の私へ~その6年は無駄になる~
夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。
テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。
有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。
選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。
涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。
彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。
やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる