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第1章

僕は...

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 結局、通勤時間内での回答は叶わなかったので、家でじっくり答えてみることにした。
 電車に揺られ、家に着き、風呂に浸かり、適当にコンビニで買ったものをつまむ。入社してからというものの、まともなご飯を食べたことなどほぼない。大抵、駅から帰る途中にあるコンビニにふらっと立ち寄り、4品ぐらいとビールを買って家でそれを食べる。当然ながら栄養バランスなど全く考えない。それでも健康でいられるのだから驚く。そんなに頑張らなくてもいいと思うんだけどなぁ、僕の身体。
 そうして迎えた午後8時。さて返信するかと携帯のロックを解除し、朝と同じページにとぶ。
 仕事中も、帰りの電車の中でも、風呂に浸かっている間も、だらだらとご飯を食べている間も。ずっと考えていた。
 なにが彼女にとっての最善なのか。どうすればまた彼女は苦しい思いをしないで済むのか。すこしずつ、僕の思いを文字にしてみよう。


「初めまして。レイさん。まずはご相談いただきありがとうございます。大変辛い思いをされてきたんですね。僕は人生で性同一性障害をお持ちの方と関わりを持ったことがありません。なので、もしかしたらあなたの気分を害するような言葉を使ってしまうかもしれません。なるべく慎重に言葉を選んでいるつもりですが、もしあなたがすこしでも嫌な気持ちになってしまったらごめんなさい。精一杯頑張ります。
 結論から言いましょう。僕は言うべきだと思います。
 理由は二つです。一つは、その秘密が後々あなたの枷になってしまうと思うから。
 隠し事っていうものは長い間隠しているとどんどん重たくなっていくものです。そしてそれが重たくなったことに気づいたときには、手遅れな場合が多い。僕の短い人生でもそんなことが何度もありました。そのたび僕は後悔した。あなたに同じ苦しみは味わって欲しくない。
 もう一つは、きっとあなたはその秘密を隠し通すことができないから。
 高校生活ってあっという間に感じるものだけれども、それでもやっぱり三年間なんです。当然のことながら色々あります。その色々の中で、あなたはその秘密を打ち明けるかどうかの選択を何度も突きつけられるはずです。いわゆる青春ってやつはあなたの想像よりも青くてクサイです。特に男子なら尚更、腹を割って話すことなんて何度もあるでしょう。そういう場面で秘密がバレて面倒なことになるよりも、みんなの前で思い切ってはなしてみたほうがよいのでは?と僕は思います。
 すいません。お酒を飲みながらこの文を書いているのであまりわかりやすく形になりませんでした。クサイと思っても許してください。
 つまり、何が言いたいかっていうと、言うならはやめにね、ってことです。これがあなたよりもほんのすこsだけ人生経験のある大人からの回答でした。
 へんしんしゅーりょー。またご連絡くださう。」


 …何だかめちゃくちゃな文章になってしまった気がする。ビールを2本空けてしまったのが失敗だった。一本でも十分に酔っぱらうというのに…
 後悔しても後の祭りだと言い聞かせつつ、布団に倒れ込む。
 今日は…土曜日で…明日は日曜日かな…?そしたらよく眠れるな…
 微睡む意識の中でそんなことを考えた。
 徐々に身体が溶けていくようだった。  
 …伝わるといいな。僕の思い。
 その思いを最後に、僕の意識は暗い穴に落ちてった。
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