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第1章
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明くる日の朝、外から聞こえる鳩の鳴き声で目を覚ました。
都心にほど近いとは言え、緑の多いこの辺りには、意外と生き物がいる。この前なんて小さな公園で猫の集会が行われているのを見かけた。
重たい体を起こし、今日が何曜日かを知るのにも随分手間取った。昨日のアルコールがかなり効いているらしい。無自覚だったが頭も鈍く痛む。
「痛み止めなんて持ってたっけか...」
一瞬探そうかと思ったが、やめた。印鑑だって使おうと思ったらまず探すところから始めなくてはいけないのだ。ましてや薬なんて、探し始めたら恐らく十分は動き回らなくちゃいけなくなる。せっかくの休日にそんなことはしたくない。薬は諦め、再び仰向けになった。
「...そろそろ起きなきゃな」
そう口に出し、携帯に目を向ける。通知が溜まっているが、普段と内容は変わらない。それを消化しようといじり始めたが、ふと昨日のことを思い出し、相談室のページにとんだ。
驚いたことに、彼女からの返事は既に届いていた。ちょうど頭も回り始めていたので、読んでみようと思い画面を撫ぜる。
「返信してくださりありがとうございました。そうですね、主さんの言う通りです。昔私がいじめられたのも、もっと堂々としていれば防げていたのかもしれませんもね。なんだか心がスッキリしました。明日の学校の朝のHRで発表してみることにします。なんでだろう、全然怖く無いです。結果はまた後日お伝えします。あ、そうだ。お返事の文章がめちゃくちゃになってしまっていたの、すごく面白かったです(笑)もっと真面目な方だと勝手に想像してましたので、少し驚きました。それでは、また」
少しの間画面を見つめていたが、十秒ほどで我に帰った。
「...マジ?」
第一声がそれだった。今もしかしたら自分は一人の人生を左右する出来事に関わっているのかもしれない。その自覚がふつふつと湧き上がってきた。
全身から汗が噴き出る。いったん冷静になれと言い聞かせるが、それに反比例するように鼓動はどんどん明確になっていく。
ていうかなんだ、この子は行動が早すぎやしないか?普通そんなにすぐ決まるようなことじゃ無いと思うんだけど...
取り敢えず連絡しなくては。その一心で画面を指でなぞった。
「レイさん。少し落ち着いてください。相談に乗っておいてなにを言っているんだと思うかもしれませんが、僕は少し怖くなってきました。この相談があなたの人生を左右すると思うと、その重みに押しつぶされそうになります。果たして僕の選択があなたにとっての正解なのか、それは僕にはわからない。だから、もっとじっくりあなたに吟味してほしいという想いであなたの相談に乗りました。なのでもう少し、考えてみてください。お返事待ってます」
...我ながらなんと身勝手で、情けないんだろう。勝手に外野からああだこうだ述べた挙げ句、いざそれが現実になろうとすると焦り出すなんて。最高にダサいじゃないか。彼女への申し訳ない気持ちで胸が重くなる。
その重圧からか、再び体が重くなった。そのままドサっと布団に倒れ込む。
「...ホンットに馬鹿だなぁ...俺」
その呟きが頭の中に響くうちに、僕は目を閉じ、そのまま睡魔に身を任せた。
都心にほど近いとは言え、緑の多いこの辺りには、意外と生き物がいる。この前なんて小さな公園で猫の集会が行われているのを見かけた。
重たい体を起こし、今日が何曜日かを知るのにも随分手間取った。昨日のアルコールがかなり効いているらしい。無自覚だったが頭も鈍く痛む。
「痛み止めなんて持ってたっけか...」
一瞬探そうかと思ったが、やめた。印鑑だって使おうと思ったらまず探すところから始めなくてはいけないのだ。ましてや薬なんて、探し始めたら恐らく十分は動き回らなくちゃいけなくなる。せっかくの休日にそんなことはしたくない。薬は諦め、再び仰向けになった。
「...そろそろ起きなきゃな」
そう口に出し、携帯に目を向ける。通知が溜まっているが、普段と内容は変わらない。それを消化しようといじり始めたが、ふと昨日のことを思い出し、相談室のページにとんだ。
驚いたことに、彼女からの返事は既に届いていた。ちょうど頭も回り始めていたので、読んでみようと思い画面を撫ぜる。
「返信してくださりありがとうございました。そうですね、主さんの言う通りです。昔私がいじめられたのも、もっと堂々としていれば防げていたのかもしれませんもね。なんだか心がスッキリしました。明日の学校の朝のHRで発表してみることにします。なんでだろう、全然怖く無いです。結果はまた後日お伝えします。あ、そうだ。お返事の文章がめちゃくちゃになってしまっていたの、すごく面白かったです(笑)もっと真面目な方だと勝手に想像してましたので、少し驚きました。それでは、また」
少しの間画面を見つめていたが、十秒ほどで我に帰った。
「...マジ?」
第一声がそれだった。今もしかしたら自分は一人の人生を左右する出来事に関わっているのかもしれない。その自覚がふつふつと湧き上がってきた。
全身から汗が噴き出る。いったん冷静になれと言い聞かせるが、それに反比例するように鼓動はどんどん明確になっていく。
ていうかなんだ、この子は行動が早すぎやしないか?普通そんなにすぐ決まるようなことじゃ無いと思うんだけど...
取り敢えず連絡しなくては。その一心で画面を指でなぞった。
「レイさん。少し落ち着いてください。相談に乗っておいてなにを言っているんだと思うかもしれませんが、僕は少し怖くなってきました。この相談があなたの人生を左右すると思うと、その重みに押しつぶされそうになります。果たして僕の選択があなたにとっての正解なのか、それは僕にはわからない。だから、もっとじっくりあなたに吟味してほしいという想いであなたの相談に乗りました。なのでもう少し、考えてみてください。お返事待ってます」
...我ながらなんと身勝手で、情けないんだろう。勝手に外野からああだこうだ述べた挙げ句、いざそれが現実になろうとすると焦り出すなんて。最高にダサいじゃないか。彼女への申し訳ない気持ちで胸が重くなる。
その重圧からか、再び体が重くなった。そのままドサっと布団に倒れ込む。
「...ホンットに馬鹿だなぁ...俺」
その呟きが頭の中に響くうちに、僕は目を閉じ、そのまま睡魔に身を任せた。
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