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揺れる、金色 三
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「とーじ」
ふいに呼ばれ、董士は「ん?」と振り向いた。
すると、するりと後ろから前へ董士の両脇の下から両手を伸ばし耳元で「ここ、ちゃんと洗わないとだめだよ」と、泡に包まれた手を、あろうことか董士の股の間に差し込んだ。
「ゆっ………!」
董士は言葉にならない叫びを飲み込んだ。
裕已の手が、そこに触れる。
手が手が、と頭と身体はパニックだ。
フリーズしかけるも、ヌルリと滑る指の感触がリアルで現実だと訴える。
「ゆい、ゆいがそんなことしたらダメ」
「どうして?」
だって…裕已のあの綺麗な手が、
「何で駄目なの?」
子供みたいな裕已も嫌いではない…
ってそうじゃない、だって変だ。
「…今日何かヘン。いつもの裕已に戻って」
「いつもの僕って何?」
「こんなこと、しない」
「こんな事って?」
うう…何か変態みたい、裕已
言いながら裕已は董士のそこをキレイにしようと手を滑らせる。
そんな裕已の腕をつかむだけで引き剥がせはしない董士。
「別に、普通のことをしてるだけだよ」
と裕已は諭すが、董士はだまされない。
「普通はしない、自分でする」
「そう?自分でするの」
「する…!」
「そっか、じゃあハイどうぞ」
「…」
後ろから董士の肩に顎を乗せた裕已は、お腹に腕をまわすと、傍観スタイルに切り替えた。
くっつかれるのは、嫌いじゃない。だけど、今じゃない…
「…みられるとイヤだ」
「どうして?」
「ゆい、今日どうしてばっか」
「いや?」
「(いやというか…)後はひとりでするから…」
「…してもいいよ?」
「見て楽しいものでもないし、何かいやだ」
「でも、洗うでしょ?」
「…洗うけど、ゆいだっていやでしょ?」
見られるの、と董士が言うと
「恥ずかしい…かも。でも別にいいかな董士なら」
"董士なら"という裕已の言葉に少しだけ董士の口元が嬉しそうに弧を描く。
「ホントに…?」
「洗いっこする?あ…でももう洗っちゃったね」
する、と言いかけた董士の口が静かに閉じる。裕已はうーん。と考えたあと、やっぱり今度しよっか、董士に言った。
董士の見えない尻尾がだらりと下がった。
◆
結局あの後、裕已の見ている中洗うという羞恥をやり遂げた。
なんだか修行を終えた気分だ。と董士は思った。湯船に浸かっている間、裕已は裕已で良いものが見れたとか何とか言ってご機嫌だ。
「今度は一緒にはいろ」
董士は淵に腰掛ける裕已を見上げ言った。
「ふふ、うん」
「約束ね」
「うん、」
「…」
裕已の笑顔に、董士は湯に口元まで浸かった。お湯のなかでブクブクと息を吹き出しながらずるい、と思う。裕已の眩しい笑顔が綺麗で胸の奥がキュッとなる。笑顔一つでさっきの事もどこかへ行くなんて我ながら単純すぎる。
この頃、裕已の近くに居たり裕已の事を考えたりするだけで、謎の甘い痛みを感じることがある。どこか悪いんだろうか…
董士は無意識に痛みの生じる胸の辺りを撫でながらそんな事を思った。
風呂から一緒に上がると借りたタオルで董士は身体をザッと拭く。頭は裕已がタオルで拭いた。董士にバスローブを着せると、椅子に座らせる。ドライヤーで髪を乾かして、仕上げに何かいい匂いのする、オイルをつけられる。
「これ、裕已のと一緒だ」
「そうだよ」
「いい匂い…」
ふふ、とまた裕已は甘い笑みを浮かべる。
その首元に光るネックレスを見て自分のを探す。
いつの間にか裕已が手にしていた。
「つけるよ」
そう言って董士の首元に同じ光を纏わせた。
ネックレスを付け直し「おいで」と手を引かれる。
タオルケットを董士に持たせると、裕已は「お昼寝しよう」と言ってきた。
どうやら董士の眠気に気づいていたらしい。
◇
「…疲れちゃったかな」
そう言って裕已は董士の柔らかい癖っ毛に指を滑らせる。
撫でる手つきは優しく、起こさないようになるべくそっと。
ふくーっと寝息を漏らす董士を慈愛に満ちた表情で見つめる。
ズレたタオルケットを掛け直す。自分も少しだけ横になろうか、と董士の顔が見える位置に寝転んだ。
ぴくりと時々まぶたが震える。手の加えてない自然な眉に、閉じられた瞳を縁取る睫毛。小ぶりで少し高めの鼻に薄く散ったそばかす。血色の良いふるりとした頬。"裕已"といつも呼ぶやや厚めの唇。口元は力が抜けて少し開かれている。無防備な顔も"可愛い"と裕已は思う。
「董士」
その横顔を眺めている内に無意識に名前を呼んでしまう。
「ん…ゆい、」
董士を起こしたかと思ったが、すやすやまた寝息をたて始めた。裕已はホッと胸を撫で下ろした。
ふいに呼ばれ、董士は「ん?」と振り向いた。
すると、するりと後ろから前へ董士の両脇の下から両手を伸ばし耳元で「ここ、ちゃんと洗わないとだめだよ」と、泡に包まれた手を、あろうことか董士の股の間に差し込んだ。
「ゆっ………!」
董士は言葉にならない叫びを飲み込んだ。
裕已の手が、そこに触れる。
手が手が、と頭と身体はパニックだ。
フリーズしかけるも、ヌルリと滑る指の感触がリアルで現実だと訴える。
「ゆい、ゆいがそんなことしたらダメ」
「どうして?」
だって…裕已のあの綺麗な手が、
「何で駄目なの?」
子供みたいな裕已も嫌いではない…
ってそうじゃない、だって変だ。
「…今日何かヘン。いつもの裕已に戻って」
「いつもの僕って何?」
「こんなこと、しない」
「こんな事って?」
うう…何か変態みたい、裕已
言いながら裕已は董士のそこをキレイにしようと手を滑らせる。
そんな裕已の腕をつかむだけで引き剥がせはしない董士。
「別に、普通のことをしてるだけだよ」
と裕已は諭すが、董士はだまされない。
「普通はしない、自分でする」
「そう?自分でするの」
「する…!」
「そっか、じゃあハイどうぞ」
「…」
後ろから董士の肩に顎を乗せた裕已は、お腹に腕をまわすと、傍観スタイルに切り替えた。
くっつかれるのは、嫌いじゃない。だけど、今じゃない…
「…みられるとイヤだ」
「どうして?」
「ゆい、今日どうしてばっか」
「いや?」
「(いやというか…)後はひとりでするから…」
「…してもいいよ?」
「見て楽しいものでもないし、何かいやだ」
「でも、洗うでしょ?」
「…洗うけど、ゆいだっていやでしょ?」
見られるの、と董士が言うと
「恥ずかしい…かも。でも別にいいかな董士なら」
"董士なら"という裕已の言葉に少しだけ董士の口元が嬉しそうに弧を描く。
「ホントに…?」
「洗いっこする?あ…でももう洗っちゃったね」
する、と言いかけた董士の口が静かに閉じる。裕已はうーん。と考えたあと、やっぱり今度しよっか、董士に言った。
董士の見えない尻尾がだらりと下がった。
◆
結局あの後、裕已の見ている中洗うという羞恥をやり遂げた。
なんだか修行を終えた気分だ。と董士は思った。湯船に浸かっている間、裕已は裕已で良いものが見れたとか何とか言ってご機嫌だ。
「今度は一緒にはいろ」
董士は淵に腰掛ける裕已を見上げ言った。
「ふふ、うん」
「約束ね」
「うん、」
「…」
裕已の笑顔に、董士は湯に口元まで浸かった。お湯のなかでブクブクと息を吹き出しながらずるい、と思う。裕已の眩しい笑顔が綺麗で胸の奥がキュッとなる。笑顔一つでさっきの事もどこかへ行くなんて我ながら単純すぎる。
この頃、裕已の近くに居たり裕已の事を考えたりするだけで、謎の甘い痛みを感じることがある。どこか悪いんだろうか…
董士は無意識に痛みの生じる胸の辺りを撫でながらそんな事を思った。
風呂から一緒に上がると借りたタオルで董士は身体をザッと拭く。頭は裕已がタオルで拭いた。董士にバスローブを着せると、椅子に座らせる。ドライヤーで髪を乾かして、仕上げに何かいい匂いのする、オイルをつけられる。
「これ、裕已のと一緒だ」
「そうだよ」
「いい匂い…」
ふふ、とまた裕已は甘い笑みを浮かべる。
その首元に光るネックレスを見て自分のを探す。
いつの間にか裕已が手にしていた。
「つけるよ」
そう言って董士の首元に同じ光を纏わせた。
ネックレスを付け直し「おいで」と手を引かれる。
タオルケットを董士に持たせると、裕已は「お昼寝しよう」と言ってきた。
どうやら董士の眠気に気づいていたらしい。
◇
「…疲れちゃったかな」
そう言って裕已は董士の柔らかい癖っ毛に指を滑らせる。
撫でる手つきは優しく、起こさないようになるべくそっと。
ふくーっと寝息を漏らす董士を慈愛に満ちた表情で見つめる。
ズレたタオルケットを掛け直す。自分も少しだけ横になろうか、と董士の顔が見える位置に寝転んだ。
ぴくりと時々まぶたが震える。手の加えてない自然な眉に、閉じられた瞳を縁取る睫毛。小ぶりで少し高めの鼻に薄く散ったそばかす。血色の良いふるりとした頬。"裕已"といつも呼ぶやや厚めの唇。口元は力が抜けて少し開かれている。無防備な顔も"可愛い"と裕已は思う。
「董士」
その横顔を眺めている内に無意識に名前を呼んでしまう。
「ん…ゆい、」
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