19 / 36
Fudanshi3
しおりを挟む
七瀬と約束の日。
「あがって」
「おじゃまします」
玄関に入って靴をぬいだら、二階から物音がして誰かおりてきた。
花柄のワンピースを着たロングヘアの子。七瀬にきづいて挨拶する。
「あ、お兄さん、こんにちは」
「まひろちゃん、こんちは。順は?」
「じゅんくんなら、すぐ降りてくると思います」
こんにちはと会釈してくれたので伊達も同じように返す。
順くんって確か弟だよな、前に一度紹介されたことがある。
七瀬を小さくしてちょっと華奢にした細眉で焼けてないバージョンのオールバック。
おもい出していると二階からスカジャンサングラスの順が降りてきた。兄と伊達に気付いて挨拶してくる。
「おまた…あ…お帰り兄貴。と、こんちは」
「こんちは」
「出かけるのか、気を付けてな」
「おう。……いってくる、まひろ行こう」
「うん。お邪魔しました」
「いってらっしゃい」
手を降って見送る七瀬の後ろで伊達も手をふる。
七瀬の部屋に通された。飲み物取ってくると出ていったので一人残される。
前来たときと変わらず整頓された室内は、色んな布と糸が棚に入っており、人形も並んで座ってる。
ミシンが置かれた机とその横に、作ったと思われるリボンのついた白いドット柄のワンピース。相変わらずかわいいもの作ってるなとしげしげと見る。
知らなかった、洋服も作れるのか。
部屋のドアが開いて飲み物を手に戻ってきた七瀬にお礼を言い受け取る。ワンピースを指さし尋ねた。
「…これも作ったの?」
「ああ、まだ完成してないけど、さっきの…まひろちゃんに渡す予定」
「へえ、頼まれたの」
「順に。内緒なんだと」
「…ふーん、彼女も喜ぶだろ、こんなかわいいの」
「そうだといいけど。…男だぞ」
「…………、え?」
「まひろちゃんの女装は趣味。たまに、素で来たりするしな…」
「…………そう、なんだ。…てっきり……弟くんとは…?」
「どうなんだろうな」
「……」
…あの子が男…?…確かに、今思い返すと順くんより身体が大きかったような。声も裏声と言われれば……そうかも。気づかなかった…。
すぐそこに、こんな近くに落ちているではないか。
ぼんやりしてる伊達に気付いた七瀬がどうかしたか?と聞いてきた。
頭を軽く振って切り替える。
「ごめん、トイレ借りてもいい?」
「出て右手側だ」
こんな心あらずで勉強なんか出来るだろうか。気を抜くと、今の一連の流れを解読しようと空想の世界にとびそうだ。
いや、勉強をしに来たんだ勉強と言い聞かせ頬を叩いて戻ってきた伊達に、なぜかワンピースをもって待ち構える七瀬がいた。
「なあ、伊達ちょっと頼みがある。これ、着てくれないか?」
「…、なんて?」
「イヤなら断ってくれていい。…着たイメージが合ってるのか知りたい…だめか?」
「…ええ……、マネキンに、なる分にはいいけど…、はいんの…?」
「背格好同じぐらいだから…少しはかってもいいか?」
「どうぞ……」
すぐに手際良く採寸をすませ、大丈夫だなと七瀬はワンピースをあてがい、威嚇スマイルをみせた。
言われた通りインナーパンイチで着てみる。腰に手をあて伊達は開き直る…どや。
「…」
「…」
七瀬は何も言わずいかつい真面目な顔で身体周りをチェックする。笑いもおこらないのはさみしいなという自分を発見した伊達。
七瀬は腕を横にあげたり首周りを直したりしながから話しかける。
「…、着てみてなんか腕上げにくいとか、動きにくいとかきついとかある?」
「……ない、と思う。参考になんのこれ」
「ちょっと歩いて」
長袖ロングワンピースで部屋を歩く伊達の背後にまわりこむ七瀬。止まってと言われ立ち止まる。スカートの裾の部分をつまんで何やら作業をしている模様だが見えない。
机にむかい書き込んでる姿が職人…
顔をあげた七瀬に「もう着替えていい」と言われて丁寧に脱いで返す。
「つき合わせてわるい、助かった」
「いーや、役に立てたなら良かった」
首をふって返事をする。真剣な人をみたら背すじがのびる感じするし、そんな作り手の七瀬を尊敬する。
「なんかお礼する、考えといて」
「いい。あ、まって…」
頭に浮かんだ、順とまひろのことを知りたい、という言葉を一度セーブする。
「…あの、このワンピースを渡した後日談を聞かせて下さい」
「…いいぞ、…そんなんでいいのか…?」
「うん(おれにとっては)。着ただけだし」
「…なら、…わかった」
「勉強するか」
「するか」
友のためにひとはだ脱いだ日。
■ ■ □
小ネタ【なんか今なら陸地でも背泳ぎ出来そうな気がする】それはどんな時
七瀬と海水浴にやって来た。泳げないという七瀬の手を持って、さっそくバタ足で泳ぐ練習をさせている時、なんだか聞きおぼえのある声が近くでした。
「今、ここから腐が騒ぐ気配がしたんだが…」
「にいちゃんそればっか。…おれ、かき氷食いたい。母ちゃんの肩叩いたお小遣いで買うからそのピンクのポシェットかして」
「弟よ、母君からの駄賃はそこにはないぞ…ここだ」
あの……ゴーグルと水泳帽を装着し、…ピンクと黄色のしましま模様の水着を着こなすあの人は……!
伊達は直ぐ様つかんでいた七瀬の手を上に引っ張りあげた。
海面から顔を出した七瀬に
「逃げよう」、と声をかけ陸へあがる。訳が分からない七瀬は腕を引かれるまま海から出る。
いつもと違う、何かから必死の逃亡をみせる伊達。
だが秒で砂場に足をとられ、こけた。
七瀬は素早く伊達の前に回り込み、倒れた身体を起き上がらせると、頭と顔についた砂を払う。七瀬が背中を見せ
「乗って」と一言いい、伊達をおんぶするとその場を去った。
姿を目撃した明石が放った一言。
「今なら陸地でも背泳ぎ出来そうな気がする」
「しなくていい。…なんで背泳ぎなの?」
「あがって」
「おじゃまします」
玄関に入って靴をぬいだら、二階から物音がして誰かおりてきた。
花柄のワンピースを着たロングヘアの子。七瀬にきづいて挨拶する。
「あ、お兄さん、こんにちは」
「まひろちゃん、こんちは。順は?」
「じゅんくんなら、すぐ降りてくると思います」
こんにちはと会釈してくれたので伊達も同じように返す。
順くんって確か弟だよな、前に一度紹介されたことがある。
七瀬を小さくしてちょっと華奢にした細眉で焼けてないバージョンのオールバック。
おもい出していると二階からスカジャンサングラスの順が降りてきた。兄と伊達に気付いて挨拶してくる。
「おまた…あ…お帰り兄貴。と、こんちは」
「こんちは」
「出かけるのか、気を付けてな」
「おう。……いってくる、まひろ行こう」
「うん。お邪魔しました」
「いってらっしゃい」
手を降って見送る七瀬の後ろで伊達も手をふる。
七瀬の部屋に通された。飲み物取ってくると出ていったので一人残される。
前来たときと変わらず整頓された室内は、色んな布と糸が棚に入っており、人形も並んで座ってる。
ミシンが置かれた机とその横に、作ったと思われるリボンのついた白いドット柄のワンピース。相変わらずかわいいもの作ってるなとしげしげと見る。
知らなかった、洋服も作れるのか。
部屋のドアが開いて飲み物を手に戻ってきた七瀬にお礼を言い受け取る。ワンピースを指さし尋ねた。
「…これも作ったの?」
「ああ、まだ完成してないけど、さっきの…まひろちゃんに渡す予定」
「へえ、頼まれたの」
「順に。内緒なんだと」
「…ふーん、彼女も喜ぶだろ、こんなかわいいの」
「そうだといいけど。…男だぞ」
「…………、え?」
「まひろちゃんの女装は趣味。たまに、素で来たりするしな…」
「…………そう、なんだ。…てっきり……弟くんとは…?」
「どうなんだろうな」
「……」
…あの子が男…?…確かに、今思い返すと順くんより身体が大きかったような。声も裏声と言われれば……そうかも。気づかなかった…。
すぐそこに、こんな近くに落ちているではないか。
ぼんやりしてる伊達に気付いた七瀬がどうかしたか?と聞いてきた。
頭を軽く振って切り替える。
「ごめん、トイレ借りてもいい?」
「出て右手側だ」
こんな心あらずで勉強なんか出来るだろうか。気を抜くと、今の一連の流れを解読しようと空想の世界にとびそうだ。
いや、勉強をしに来たんだ勉強と言い聞かせ頬を叩いて戻ってきた伊達に、なぜかワンピースをもって待ち構える七瀬がいた。
「なあ、伊達ちょっと頼みがある。これ、着てくれないか?」
「…、なんて?」
「イヤなら断ってくれていい。…着たイメージが合ってるのか知りたい…だめか?」
「…ええ……、マネキンに、なる分にはいいけど…、はいんの…?」
「背格好同じぐらいだから…少しはかってもいいか?」
「どうぞ……」
すぐに手際良く採寸をすませ、大丈夫だなと七瀬はワンピースをあてがい、威嚇スマイルをみせた。
言われた通りインナーパンイチで着てみる。腰に手をあて伊達は開き直る…どや。
「…」
「…」
七瀬は何も言わずいかつい真面目な顔で身体周りをチェックする。笑いもおこらないのはさみしいなという自分を発見した伊達。
七瀬は腕を横にあげたり首周りを直したりしながから話しかける。
「…、着てみてなんか腕上げにくいとか、動きにくいとかきついとかある?」
「……ない、と思う。参考になんのこれ」
「ちょっと歩いて」
長袖ロングワンピースで部屋を歩く伊達の背後にまわりこむ七瀬。止まってと言われ立ち止まる。スカートの裾の部分をつまんで何やら作業をしている模様だが見えない。
机にむかい書き込んでる姿が職人…
顔をあげた七瀬に「もう着替えていい」と言われて丁寧に脱いで返す。
「つき合わせてわるい、助かった」
「いーや、役に立てたなら良かった」
首をふって返事をする。真剣な人をみたら背すじがのびる感じするし、そんな作り手の七瀬を尊敬する。
「なんかお礼する、考えといて」
「いい。あ、まって…」
頭に浮かんだ、順とまひろのことを知りたい、という言葉を一度セーブする。
「…あの、このワンピースを渡した後日談を聞かせて下さい」
「…いいぞ、…そんなんでいいのか…?」
「うん(おれにとっては)。着ただけだし」
「…なら、…わかった」
「勉強するか」
「するか」
友のためにひとはだ脱いだ日。
■ ■ □
小ネタ【なんか今なら陸地でも背泳ぎ出来そうな気がする】それはどんな時
七瀬と海水浴にやって来た。泳げないという七瀬の手を持って、さっそくバタ足で泳ぐ練習をさせている時、なんだか聞きおぼえのある声が近くでした。
「今、ここから腐が騒ぐ気配がしたんだが…」
「にいちゃんそればっか。…おれ、かき氷食いたい。母ちゃんの肩叩いたお小遣いで買うからそのピンクのポシェットかして」
「弟よ、母君からの駄賃はそこにはないぞ…ここだ」
あの……ゴーグルと水泳帽を装着し、…ピンクと黄色のしましま模様の水着を着こなすあの人は……!
伊達は直ぐ様つかんでいた七瀬の手を上に引っ張りあげた。
海面から顔を出した七瀬に
「逃げよう」、と声をかけ陸へあがる。訳が分からない七瀬は腕を引かれるまま海から出る。
いつもと違う、何かから必死の逃亡をみせる伊達。
だが秒で砂場に足をとられ、こけた。
七瀬は素早く伊達の前に回り込み、倒れた身体を起き上がらせると、頭と顔についた砂を払う。七瀬が背中を見せ
「乗って」と一言いい、伊達をおんぶするとその場を去った。
姿を目撃した明石が放った一言。
「今なら陸地でも背泳ぎ出来そうな気がする」
「しなくていい。…なんで背泳ぎなの?」
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
政略結婚したかった
わさび
BL
御曹司 朝峰楓× 練習生 村元緋夏
有名な事務所でアイドルを目指して練習生をしている緋夏だが、実は婚約者がいた。
二十歳までにデビューしたら婚約破棄
デビューできなかったらそのまま結婚
楓と緋夏は隣同士に住む幼馴染で親はどちらも経営者。
会社のために勝手に親達が決めた政略結婚と自分の気持ちで板挟みになっている緋夏だったが____
【完結】 同棲
蔵屋
BL
どのくらい時間が経ったんだろう
明るい日差しの眩しさで目覚めた。大輝は
翔の部屋でかなり眠っていたようだ。
翔は大輝に言った。
「ねぇ、考えて欲しいことがあるんだ。」
「なんだい?」
「一緒に生活しない!」
二人は一緒に生活することが出来る
のか?
『同棲』、そんな二人の物語を
お楽しみ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる