BL短編書き散らかし

智紗人

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Fudanshi5

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「センパイ」
「どうした伊達氏、恋煩いか」
「ちがいます、これ二番に持っていくので、ドリンクお願いします」
「ああ、承知した、任せろ」

今日は明石と一緒のシフトだ。
接客中は明石も極力絡んでこずに、真面目気味に黙々と業務をこなしている。

しかし、腐が絡むと話は別だ。
閉店間近になり客の居なくなった店内で、後片付けをしている最中に伊達は明石に話しかけられた。
「なんだか今日はそわそわしているようだな、伊達氏」
「おれがですか?」
「そうだ…気づいていないようなので説明すると、今日は特に時計を何度も見返しているぞ。笑顔も普段の1.5倍増しで、何だか俺に優しい気もするんだが」
「気の所為です、最後の特に」
目敏い。
優しくした覚えはないが、確かに祝日の今日は、店が昼間のみの営業でこの後伊達は予定を入れていた。

あと十分程で終わるため、時計をチラ見はしていたかも。

明石に気取られるくらいわかり易く態度に出ていたとは…気をつけよう、と伊達は思った。

「初めてのデートか…」
洗い物を終えた明石のぼやきに、食器類を拭いていた伊達が不服そうに訂正を入れる。
「違います、あと初めてって決めつけないでください」
「照れることはないぞ、相手がどんな人物か詳しく、とことん教えてくれてもいい、例えば生徒会で言うと誰に当たるか、いや一匹狼、もしくは保険医、転校生どれも捨てがたいな」
と脱線し始めたので見当違いな方向へ向かう明石に、伊達はつい口を滑らせた。
「この後、久しぶりに会う人と約束をしてるだけです」

「ブフォッ、デ…デートじゃないか?!キタコレ」「弟(みたいな人)です」
と伊達が言うと「そうか、弟か…」と一気に鎮火した。
もっと突っ込んで来るかと思ったのに、明石はそれ以上追及してはこなかった。

そういえば…先輩から家族の話、聞いたことないかも。
ふと浮かんだ思考も「閉めよっか」
という店主の言葉にどこかへ飛んでいった。

 ◆

久しく見ていなかった学ランに伊達は頬を緩ませ手を挙げた。

「遥!」
「久しぶり」
「待たせた?」
「今来たとこ」
「そっか…行くか。そう言えば何で制服?」
「コレは…昨日友達の家に泊まってそのままここに来た、から?」
「…」
バイト帰り、家の近所にある公園で二人は待ち合わせをしていた。

最近伊達のレパートリーに入ったものを作る為、食材を買い足しに出かける所だ。

元気だったか、などとお互いの近況を喋っているとき、何気なく遥が言った。

「いー君、オレ原チャリの免許取った」
「…遥何歳だっけ」
「もうすぐ14」
「確か…取れるの16からだよな」
「うん、先輩の本免に合格した」
「……危ないことはするなよ」
「うん、今度乗せるね」
「遥…」
「何?」 

どう言えば伝わるだろうか、と考えて伊達は立ち止まる。
そんな伊達に気づき振り向いた遥と目が合う。

「俺、遥が元気でいれば、何も言わない。けど、そうじゃなくなったら泣く。ご飯も喉を通らない…ほんとに」

と伊達は、背丈はほぼ同じで、学ランを着てはいるが中身が小学生の子どもに話しかける。

「……、車は?くるまだったらいい?」
「よくありません」
「……」
「今俺が言ったこと、おぼえて」
「車はよくない…」
「その前」
「オレが元気だと、ご飯が美味しく食べれる…」
何かちょっと違うけど、その通りなので伊達は頷いて「そう」と言ったあと「もし…俺が事故ったり、警察に捕まったら遥はどう思う?」と言葉を続けた。
「やだ」
即答した遥に、それと同じだと伊達は伝える。
「……」
無言なのは考えてる証拠だな、良いことだと人知れず頷く伊達。

「…死ぬ気で捕まらない様にする」
「何か言った?」
「うん、危ない事はしない」
「…」

遥の聞き分けが良すぎるので逆に怪しんでいたが、スーパーの中に入り目の前の品を見ている内にそれも隅へと追いやられて行く。
後でもう一度念押しをしておこう、と決めていたのに結局、伊達は伝え忘れた。

 ■

遥と出会ったのは伊達が小学生のとき。朝、一人電車に揺られ学校へ向かっている途中、ドアの隅に俯きがちに泣いている子がいた。

手で涙を拭う様子に気付いた伊達は
黙っている事ができず、声を掛けた。
「どうしたの?」
「……」
「……どこかいたいの?」
「…」
僅かに頭が動いたことで、さらに話しかけた。
「転んだ?…どこがいたいか、教えて」
伊達は屈んで目線を合わせると言った。
「…」
お腹を押さえる仕草をしたので、手を引いて空いている席を探した。

たまたま、電車が次の駅に着いてドアが開く直前だったので、立ち上がる大人と入れ替わるように「座ろ」と言って引っ張った手を座席に誘導した。
その子を座らせると、伊達は手すりにつかまり前に立った。

「いたい?」
「うん…」
「薬ある?」
「…」
「…次で、降りようか」
「…」
ゆっくりと頷いた後も俯き目を濡らすその子に伊達は 背中を手でさすり「大丈夫だよ」と言った。

 ◆
数日が過ぎ、伊達は今日も電車に揺られていた。

あの日、降りた先で駅員さんに引き渡して別れたがその後あの子を見かけることはなかった。

泣いていた顔を伊達はまだ忘れられないでいたが、きっと大丈夫だったんだろう。

車窓から流れる景色を伊達が見ていると、ふいに服を引っ張られる感覚がした。

見ると、あの時の子が伊達をまっすぐ見ていた。
「あ、この前の」
伊達が言うと視線を僅かにずらして服は握ったまま声を発した。
「あの、この前は…ありがとう」
「ううん、もう良くなった?」

前回と違い、やや顔は強張っているけれど泣いてはいない。
お礼を言いにわざわざ来てくれたその子を見て伊達は笑顔になった。

それからだ、朝は学校に行くまでの移動時間を遥と過ごした。
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