28 / 36
stay
しおりを挟む
節操がない。
男でも女でも、色んな人と関係を持った。出かけた先で出会うこともあれば、SNSで知り合い発展することもあり、自由に経験を共有できた。
一夜限りの関係に留まらず、友情も恋愛も、この街にいれば年齢を重ねた後も出会いに困ることは無さそうだとさえ思える。
そういう光景を何度も目の当たりにしてきた。
「.....I got it. I'll be there soon」
通話を終え、のっそりとベッドから起き上がる。
すぐ隣を陣取っている人物の背を叩いて淡々と告げる。
「仕事行くから出てって」
「……?べつに…いいだ…ろ」
寝起きのかすれた声でそう言ったきり黙り込んだ。
「出ろよ」
前回もこのやりとりをした、と思う。
このまま置いていけば、またずるずると居座ることは明白で。
しばらくその横顔を見ていたが、全く動き出す気配がない。
御景は起こすのを諦めて、ベッドから立ち上がり支度をすることにした。
クローゼットから適当な服を選び身につけると、昨日脱ぎ散らかした服をまとめて洗濯機に突っ込んだ。
軽食を済ませて、洗面台でそれなりに身嗜みを整えたら、時計を確認し鞄を取ると玄関へ向かった。
足下がひんやりする。
壁に掛けられていたダウンを羽織って、少しギリギリだなと思いながら靴を履いていたら、背後から足音がした。
左肩に手の重みが加わる。
後ろから右腕で腹を抱え込まれ、御景の肩に顎を乗せて耳元で眠そうな声で兄の須々哉が喋り掛けてくる。
「オシゴトか?…はたらき者、…留守番は、まかせとけ」
身体にまとわりつくデカい図体を受け止めながら、御景はもう一度念を押すように言った。
「…帰るまでに、出てけよ」
…とは言え、どうせ二度寝する気なんだろうな……
今から仕事が待っているという人間の横で、大きな生あくびをかます顔を押し退ける。
肩に乗った手を剥ぎとり出ようとしたが、須々哉に腕をとられて向き合わされる。
「なんだよ…怒ってんのか…?」
気だるげに、こちらをうかがい言ってきた。
「別に…急ぐから」
「週明けには出てくから…ほんとに」
ヘラリと笑う目の前の顔をじっとりと見て御景は溜息をついた。
「…わかったから…離せ」
掴まれていた腕を解放される。
身を翻し、ドアノブをつかんだ瞬間、再び肩を捕まれた。
引かれるまま振り向けば、近づく気配に瞼を伏せた。
ちゅ、と音を立て口の端、頬にも唇を落とし、前髪を横に流され、撫でられる。
正面から抱擁されると、どんな時でもじっとしてしまうのは何故なのか。
「……」
「いってら」
背中を押され外に出る。
閉まったドアを振り返り、御景はまた前に向き直った。
一度深呼吸すると、職場へと歩き出す。
男でも女でも、色んな人と関係を持った。出かけた先で出会うこともあれば、SNSで知り合い発展することもあり、自由に経験を共有できた。
一夜限りの関係に留まらず、友情も恋愛も、この街にいれば年齢を重ねた後も出会いに困ることは無さそうだとさえ思える。
そういう光景を何度も目の当たりにしてきた。
「.....I got it. I'll be there soon」
通話を終え、のっそりとベッドから起き上がる。
すぐ隣を陣取っている人物の背を叩いて淡々と告げる。
「仕事行くから出てって」
「……?べつに…いいだ…ろ」
寝起きのかすれた声でそう言ったきり黙り込んだ。
「出ろよ」
前回もこのやりとりをした、と思う。
このまま置いていけば、またずるずると居座ることは明白で。
しばらくその横顔を見ていたが、全く動き出す気配がない。
御景は起こすのを諦めて、ベッドから立ち上がり支度をすることにした。
クローゼットから適当な服を選び身につけると、昨日脱ぎ散らかした服をまとめて洗濯機に突っ込んだ。
軽食を済ませて、洗面台でそれなりに身嗜みを整えたら、時計を確認し鞄を取ると玄関へ向かった。
足下がひんやりする。
壁に掛けられていたダウンを羽織って、少しギリギリだなと思いながら靴を履いていたら、背後から足音がした。
左肩に手の重みが加わる。
後ろから右腕で腹を抱え込まれ、御景の肩に顎を乗せて耳元で眠そうな声で兄の須々哉が喋り掛けてくる。
「オシゴトか?…はたらき者、…留守番は、まかせとけ」
身体にまとわりつくデカい図体を受け止めながら、御景はもう一度念を押すように言った。
「…帰るまでに、出てけよ」
…とは言え、どうせ二度寝する気なんだろうな……
今から仕事が待っているという人間の横で、大きな生あくびをかます顔を押し退ける。
肩に乗った手を剥ぎとり出ようとしたが、須々哉に腕をとられて向き合わされる。
「なんだよ…怒ってんのか…?」
気だるげに、こちらをうかがい言ってきた。
「別に…急ぐから」
「週明けには出てくから…ほんとに」
ヘラリと笑う目の前の顔をじっとりと見て御景は溜息をついた。
「…わかったから…離せ」
掴まれていた腕を解放される。
身を翻し、ドアノブをつかんだ瞬間、再び肩を捕まれた。
引かれるまま振り向けば、近づく気配に瞼を伏せた。
ちゅ、と音を立て口の端、頬にも唇を落とし、前髪を横に流され、撫でられる。
正面から抱擁されると、どんな時でもじっとしてしまうのは何故なのか。
「……」
「いってら」
背中を押され外に出る。
閉まったドアを振り返り、御景はまた前に向き直った。
一度深呼吸すると、職場へと歩き出す。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
政略結婚したかった
わさび
BL
御曹司 朝峰楓× 練習生 村元緋夏
有名な事務所でアイドルを目指して練習生をしている緋夏だが、実は婚約者がいた。
二十歳までにデビューしたら婚約破棄
デビューできなかったらそのまま結婚
楓と緋夏は隣同士に住む幼馴染で親はどちらも経営者。
会社のために勝手に親達が決めた政略結婚と自分の気持ちで板挟みになっている緋夏だったが____
【完結】 同棲
蔵屋
BL
どのくらい時間が経ったんだろう
明るい日差しの眩しさで目覚めた。大輝は
翔の部屋でかなり眠っていたようだ。
翔は大輝に言った。
「ねぇ、考えて欲しいことがあるんだ。」
「なんだい?」
「一緒に生活しない!」
二人は一緒に生活することが出来る
のか?
『同棲』、そんな二人の物語を
お楽しみ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる