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stay 3話
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ココアを作っているとき、小さく咳をした。
それに気がついて、ソファに座っていた須々哉が振り向いて訊いてきた。
「かぜか?」
「んん゛…かぜ…か?」
特に気にもせず喉に手をあて、御景はこたえる。
ここ最近、乾燥してたからか…
言われてみれば少しだけ違和感のある喉を撫でる。
マグカップを持って須々哉の隣に行く。ローテーブルにまだ熱いそれを置いて少しだけ冷ます。
だらけた姿勢で目を瞑っていると、影ができて目をあける。
「あー、して」
「……」
口を開けろ、と須々哉に下あごをぐいっとおされて、しぶしぶ開く。
「…ん……」
口の中に飴がふってきた。
その味に御景は眉を寄せる。
ハーブ好きじゃない…。
もごっとしながら目で相手に訴える。
しかしそんな視線も軽く受け流され
「よし、風呂入っか」
決定事項のようにつげられ、御景はヤダよと困惑する。
湯気を立てたココアもあるし。
「は…いや、ココ…ああーー!」
腕を引っ張り上げる力に負けて、立ち上がると、抱え上げられて風呂場まで直行された。
危うく飴が喉に詰まりそうになって御景は咳き込んだ。
甲斐甲斐しく身体を洗い、湯船にまでつからせ、浴室から二人して出る。
タオルを巻かれた所で、御景は逃げるようにタオルをつかんでリビングへ向かった。
追いかけてきた須々哉が言った。
「せっかく温まったのに湯冷めするぞ、服着ろ」
「その言葉、そのまんま返す。」
「…そんな子にはドライヤーかけてあげません」
須々哉が手に持ったドライヤーを振る。
それおれのなんだけど…
「…なんてな。風引くマジで」
そう言うと、須々哉は寝室へ行ってズボンだけを履き戻ってきた。適当に持ってきた服を御景にあてがい着るように促す。
そしてソファに座らせると「おら、じっとしろ」と御景の髪を乾かし始めた。
たまに会うと、いつも通り何だかんだ御景の世話を焼く。
しばらくして、ハイ終わりと御景の頭をトンと叩くと自分はタオルで無造作に拭っただけで終わろうとするので、待て、と御景は引き留めた。
「乾かすから座って」
「え、だり。…おねしゃっす」
御景の目を見ると、須々哉は大人しく従った。
わかれば、よし…。
それから、御景がその広い背中をソファから見下ろし髪を乾かしていると、須々哉がだんまりしているのに気がついた。
チラリと顔をのぞき込む。
目を瞑っていたと思いきや、ぱちりと目を開いてよこしてきた流し目と視線が合う。御景を見ると風音にまけない声で言ってきた。
「何?してくれんの」
「何を」
「ちゅー?」
「は?あ、ココア」
須々哉越しに見えた置き去りにされた冷めたココアが目に入った。
ドライヤーのスイッチを切り、温め直そうと手を伸ばしたが、須々哉にマグカップを取られた。
「…」「俺がやる」
そう言うとキッチンへ行った。
時々聞こえる鼻歌を耳に入れながら、いつの間にか御景はソファで微睡んでいた。
「……」
少しして、甘い香りが鼻を掠めると同時に御景の様子を確かめようと、近くに寄る気配がした。
「寝たな」
ぽつりと聴こえた須々哉の声。
けれど本当は少し起きていた。
きっと、マグカップの中身はまだ熱いだろうから目を閉じて待っているだけだ。
(そうだ……今日は自分からする番)
半分落ちかけていた意識を一旦浮上させた御景は、瞼を開いて須々哉を探す。
反対側でブランケットを引き寄せていた。
御景にも掛けようとしていたのか、広げた動作でふり向いて「起きたのか」とつぶやいた。
そんな須々哉からブランケットを取り上げると、御景はその身体に引っ付いた。
ゆっくりソファに沈み込んだ須々哉。
「……めずらし」
目を丸くして御景を見やる。
「…」
御景はまだこの心地いいぬくもりと眠気に身を委ねていたかった。
須々哉がブランケットを引き上げて御景ごと身体に巻き付けた。
少ししてココアの存在を思い出し、御景は今度こそ飛び起きた。
マシュマロの入ったそれは猫舌にはちょうど良い温度になっていた。
「おいしい、ありがと」
「…どういたしまして」
めったにない御景からの貴重なデレをもう少し堪能したかった須々哉だった。
それに気がついて、ソファに座っていた須々哉が振り向いて訊いてきた。
「かぜか?」
「んん゛…かぜ…か?」
特に気にもせず喉に手をあて、御景はこたえる。
ここ最近、乾燥してたからか…
言われてみれば少しだけ違和感のある喉を撫でる。
マグカップを持って須々哉の隣に行く。ローテーブルにまだ熱いそれを置いて少しだけ冷ます。
だらけた姿勢で目を瞑っていると、影ができて目をあける。
「あー、して」
「……」
口を開けろ、と須々哉に下あごをぐいっとおされて、しぶしぶ開く。
「…ん……」
口の中に飴がふってきた。
その味に御景は眉を寄せる。
ハーブ好きじゃない…。
もごっとしながら目で相手に訴える。
しかしそんな視線も軽く受け流され
「よし、風呂入っか」
決定事項のようにつげられ、御景はヤダよと困惑する。
湯気を立てたココアもあるし。
「は…いや、ココ…ああーー!」
腕を引っ張り上げる力に負けて、立ち上がると、抱え上げられて風呂場まで直行された。
危うく飴が喉に詰まりそうになって御景は咳き込んだ。
甲斐甲斐しく身体を洗い、湯船にまでつからせ、浴室から二人して出る。
タオルを巻かれた所で、御景は逃げるようにタオルをつかんでリビングへ向かった。
追いかけてきた須々哉が言った。
「せっかく温まったのに湯冷めするぞ、服着ろ」
「その言葉、そのまんま返す。」
「…そんな子にはドライヤーかけてあげません」
須々哉が手に持ったドライヤーを振る。
それおれのなんだけど…
「…なんてな。風引くマジで」
そう言うと、須々哉は寝室へ行ってズボンだけを履き戻ってきた。適当に持ってきた服を御景にあてがい着るように促す。
そしてソファに座らせると「おら、じっとしろ」と御景の髪を乾かし始めた。
たまに会うと、いつも通り何だかんだ御景の世話を焼く。
しばらくして、ハイ終わりと御景の頭をトンと叩くと自分はタオルで無造作に拭っただけで終わろうとするので、待て、と御景は引き留めた。
「乾かすから座って」
「え、だり。…おねしゃっす」
御景の目を見ると、須々哉は大人しく従った。
わかれば、よし…。
それから、御景がその広い背中をソファから見下ろし髪を乾かしていると、須々哉がだんまりしているのに気がついた。
チラリと顔をのぞき込む。
目を瞑っていたと思いきや、ぱちりと目を開いてよこしてきた流し目と視線が合う。御景を見ると風音にまけない声で言ってきた。
「何?してくれんの」
「何を」
「ちゅー?」
「は?あ、ココア」
須々哉越しに見えた置き去りにされた冷めたココアが目に入った。
ドライヤーのスイッチを切り、温め直そうと手を伸ばしたが、須々哉にマグカップを取られた。
「…」「俺がやる」
そう言うとキッチンへ行った。
時々聞こえる鼻歌を耳に入れながら、いつの間にか御景はソファで微睡んでいた。
「……」
少しして、甘い香りが鼻を掠めると同時に御景の様子を確かめようと、近くに寄る気配がした。
「寝たな」
ぽつりと聴こえた須々哉の声。
けれど本当は少し起きていた。
きっと、マグカップの中身はまだ熱いだろうから目を閉じて待っているだけだ。
(そうだ……今日は自分からする番)
半分落ちかけていた意識を一旦浮上させた御景は、瞼を開いて須々哉を探す。
反対側でブランケットを引き寄せていた。
御景にも掛けようとしていたのか、広げた動作でふり向いて「起きたのか」とつぶやいた。
そんな須々哉からブランケットを取り上げると、御景はその身体に引っ付いた。
ゆっくりソファに沈み込んだ須々哉。
「……めずらし」
目を丸くして御景を見やる。
「…」
御景はまだこの心地いいぬくもりと眠気に身を委ねていたかった。
須々哉がブランケットを引き上げて御景ごと身体に巻き付けた。
少ししてココアの存在を思い出し、御景は今度こそ飛び起きた。
マシュマロの入ったそれは猫舌にはちょうど良い温度になっていた。
「おいしい、ありがと」
「…どういたしまして」
めったにない御景からの貴重なデレをもう少し堪能したかった須々哉だった。
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