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第15話 女性必見 桜井咲子の今日の運勢
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あ~、急がないと遅刻するぅ~!
桜井咲子は焦っていた。
バイク通学になったとはいえ、そのぶん起床時間を遅らせては、遅刻ぎりぎりの時間に屋敷を出ることに変わりはなく、お得意の、--遅刻、遅刻ぅ~! もバイクに跨った状態で、ということになる。
その際、口に食パンをくわえる余裕も生まれるわけで、ラノベ界に意識を取り込まれ、ラノベ界の住人となった彼女は、--生身の身体に戻ったら、食パンをくわえて登校してみようかしら? なんて考えるようになっていたから、もう現実世界への復帰は叶わないだろう。
でも人造人間とはいえ、元の姿に、桜井咲子の人間形態へ戻れたのだ。
ぼっち化状態にめでたく終止符を打てたのだ。玄関へ走る足取りも軽いというもの。
スキップ、スキップ、ランララ~ン♪ っな感じなのだが、やたら長い廊下の角を勢いよく曲がったとき、出合頭に寝ぼけ眼のバカ源外と衝突したから、その日の運勢はーー、
【全体運】うるさいやつが多くなる。面倒なことになりそうだが対立は禁物。話し合いで解決しよう。
【仕事運】パワフルな人に押され気味。どんどん影が薄くなってゆく。存在感をアピールしよう。
【金銭運】騙されそう。うまい話に要注意。
【健康運】体調は絶好調! でも精神的に弱ってる。
【恋愛運】ちょっと変人に惹かれてしまいそう。周囲は反対するかもしれないが、出合の相性は悪くないので思い切ってアタックしてみては?
最悪だ。特に恋愛運が最悪だ。
わたし、もう、変人(源外)にアタック(衝突)してしまいましたあ~!
スマホで今日の運勢を占ったのだが、--なんじゃ、こりゃ!? と目を剥くほどの運気が下がりまくりの結果に、--マジで学校休もうかしら、と考えたのだが、いきなり恋愛運が意外な形で実現したところをみると、やはりここは占いを信じて、今日一日は安全策をとった方が賢明かと……。
部屋へ戻ろうとして踵を返した桜井の背中へ、バカ源外の声が。
「ちょい待ちぃ、今朝はおまえに贈り物があるんじゃ。ほれ!」
バカ源外が放り投げた物体は、スマホなどに使用される四角い形の充電式電池だった。
「……これってリチウムイオン電池ですよね?」
「その通り。長持ちするから学校で交換する必要がないのじゃ」
「……?」
「電池交換が恥ずかしいなんて、わし、ちっとも気付かなかったのじゃ。いやあ、すまんのう」
源外、照れ臭そうに頭を掻いた。
「それで、これをわたしに?」
「まっ、人造人間とはいえ、元の姿に戻れたのじゃ。なるべく違和感なく学園生活が送れるようにと思うてのう」
「あ、あの……」
落ち込んでいたせいだろう。
意外な人の、意外な思いやりに触れて、桜井の目に涙が滲んだ。
その瞳に映るのは、いつの間にやら力技で本郷猛に変身したイケメン源外だった。
身構える間もなく抱きすくめられた桜井。
園児の頃の夢、--仮面ライダーのお兄さんと結婚する。が半ば叶ってクラクラ~と眩暈を覚えた。
「おまえには苦労をかけたのう。人造人間にされなければ、人並みに青春を謳歌できたろうに……」
「苦労だなんて、そんな……」
「今まで苦労したぶん、これからは目一杯高校生活を楽しむのじゃ。それには一日も早く脳移植手術をして、元の身体に戻らなければならぬ。間もなく間先生が帰ってくる。手術は困難を極めると思うが、決して負けるでないぞ」
「はい! わたし、がんばります!」
「それでこそ我が女房! わしが心底惚れた女じゃ!」
「嬉しい!」
二人の唇が触れ合う瞬間、ハッと我に返った桜井が見たものは、唇を3の字に突き出して迫りくる、妖怪おっかむろのごとき源外の巨大な顔面であった。
きゃああああ~~~~~!
チビ丸もびっくりの超音波攻撃に、屋敷の使用人は何事かと耳を塞ぎ、窓ガラスは次々に打ち砕かれ、壁の一部にひびが入ったから恐れ入る。
耳はジンジン、眼はチカチカ、頭はクラクラの源外。
戦況の不利を悟ってふらふらと千鳥足で戦場離脱を試みるも、
「おのれぇ、逃がすかぁ~!」
桜井の繰り出した強烈な張り手を喰らい、そのまま横っ跳びに壁に人の形を穿ってのめり込んだ。
チゥド~ン!!!!!
平賀邸の屋根をぶち抜いて、またしても巨大なドクロ状のキノコ雲が立ち上った。
週に二度目の核爆発だ。
前回は、すわ、某共産主義国の核攻撃かと主要各国が右往左往の大騒ぎ。
小泉〇次郎首相などは日米安保を盾に、「急ぎ、報復攻撃を!」等と発言したものだから、危うく核戦争の幕開けかと思われたが、「あのドクロ状のキノコ雲が怪しい」という瀬川博士の指摘を受けて、日本政府が調査したところ、それを引き起こしたのがラノベ界の住人であることが判明して、--つまり現実世界になんら影響を及ぼさないことが判明して、ようやく事件は収束をみたのだった。
危うく、とんでもない変態に貞操を奪われるところだった。用心、用心と……。
安易な雰囲気に流された自分を反省しつつ、足早に玄関へ向かう桜井。
その後ろ姿が廊下の角へ消えたとき、ようやくメリメリと壁から抜け出した源外。
ぼろぼろの姿になりながらも、科学者特有の観察力で、ーーおや、これは? と床に落ちた一個のリチウムイオン電池を拾い上げた。
う~ん、なんとでこんな所にリチウムイオン電池が……。と不審に思ったものの、--まっ、いいか。といい加減な気性が災いして、源外、疑問への探求をあっさり断念した。
そのリチウムイオン電池をパジャマのポケットに収めると、「さあ、二度寝じゃ、二度寝」と欠伸を噛み締めつつ、遅刻のことなど素粒子単位ほどにも気にかけず寝室へ向かう源外であった。
桜井咲子は焦っていた。
バイク通学になったとはいえ、そのぶん起床時間を遅らせては、遅刻ぎりぎりの時間に屋敷を出ることに変わりはなく、お得意の、--遅刻、遅刻ぅ~! もバイクに跨った状態で、ということになる。
その際、口に食パンをくわえる余裕も生まれるわけで、ラノベ界に意識を取り込まれ、ラノベ界の住人となった彼女は、--生身の身体に戻ったら、食パンをくわえて登校してみようかしら? なんて考えるようになっていたから、もう現実世界への復帰は叶わないだろう。
でも人造人間とはいえ、元の姿に、桜井咲子の人間形態へ戻れたのだ。
ぼっち化状態にめでたく終止符を打てたのだ。玄関へ走る足取りも軽いというもの。
スキップ、スキップ、ランララ~ン♪ っな感じなのだが、やたら長い廊下の角を勢いよく曲がったとき、出合頭に寝ぼけ眼のバカ源外と衝突したから、その日の運勢はーー、
【全体運】うるさいやつが多くなる。面倒なことになりそうだが対立は禁物。話し合いで解決しよう。
【仕事運】パワフルな人に押され気味。どんどん影が薄くなってゆく。存在感をアピールしよう。
【金銭運】騙されそう。うまい話に要注意。
【健康運】体調は絶好調! でも精神的に弱ってる。
【恋愛運】ちょっと変人に惹かれてしまいそう。周囲は反対するかもしれないが、出合の相性は悪くないので思い切ってアタックしてみては?
最悪だ。特に恋愛運が最悪だ。
わたし、もう、変人(源外)にアタック(衝突)してしまいましたあ~!
スマホで今日の運勢を占ったのだが、--なんじゃ、こりゃ!? と目を剥くほどの運気が下がりまくりの結果に、--マジで学校休もうかしら、と考えたのだが、いきなり恋愛運が意外な形で実現したところをみると、やはりここは占いを信じて、今日一日は安全策をとった方が賢明かと……。
部屋へ戻ろうとして踵を返した桜井の背中へ、バカ源外の声が。
「ちょい待ちぃ、今朝はおまえに贈り物があるんじゃ。ほれ!」
バカ源外が放り投げた物体は、スマホなどに使用される四角い形の充電式電池だった。
「……これってリチウムイオン電池ですよね?」
「その通り。長持ちするから学校で交換する必要がないのじゃ」
「……?」
「電池交換が恥ずかしいなんて、わし、ちっとも気付かなかったのじゃ。いやあ、すまんのう」
源外、照れ臭そうに頭を掻いた。
「それで、これをわたしに?」
「まっ、人造人間とはいえ、元の姿に戻れたのじゃ。なるべく違和感なく学園生活が送れるようにと思うてのう」
「あ、あの……」
落ち込んでいたせいだろう。
意外な人の、意外な思いやりに触れて、桜井の目に涙が滲んだ。
その瞳に映るのは、いつの間にやら力技で本郷猛に変身したイケメン源外だった。
身構える間もなく抱きすくめられた桜井。
園児の頃の夢、--仮面ライダーのお兄さんと結婚する。が半ば叶ってクラクラ~と眩暈を覚えた。
「おまえには苦労をかけたのう。人造人間にされなければ、人並みに青春を謳歌できたろうに……」
「苦労だなんて、そんな……」
「今まで苦労したぶん、これからは目一杯高校生活を楽しむのじゃ。それには一日も早く脳移植手術をして、元の身体に戻らなければならぬ。間もなく間先生が帰ってくる。手術は困難を極めると思うが、決して負けるでないぞ」
「はい! わたし、がんばります!」
「それでこそ我が女房! わしが心底惚れた女じゃ!」
「嬉しい!」
二人の唇が触れ合う瞬間、ハッと我に返った桜井が見たものは、唇を3の字に突き出して迫りくる、妖怪おっかむろのごとき源外の巨大な顔面であった。
きゃああああ~~~~~!
チビ丸もびっくりの超音波攻撃に、屋敷の使用人は何事かと耳を塞ぎ、窓ガラスは次々に打ち砕かれ、壁の一部にひびが入ったから恐れ入る。
耳はジンジン、眼はチカチカ、頭はクラクラの源外。
戦況の不利を悟ってふらふらと千鳥足で戦場離脱を試みるも、
「おのれぇ、逃がすかぁ~!」
桜井の繰り出した強烈な張り手を喰らい、そのまま横っ跳びに壁に人の形を穿ってのめり込んだ。
チゥド~ン!!!!!
平賀邸の屋根をぶち抜いて、またしても巨大なドクロ状のキノコ雲が立ち上った。
週に二度目の核爆発だ。
前回は、すわ、某共産主義国の核攻撃かと主要各国が右往左往の大騒ぎ。
小泉〇次郎首相などは日米安保を盾に、「急ぎ、報復攻撃を!」等と発言したものだから、危うく核戦争の幕開けかと思われたが、「あのドクロ状のキノコ雲が怪しい」という瀬川博士の指摘を受けて、日本政府が調査したところ、それを引き起こしたのがラノベ界の住人であることが判明して、--つまり現実世界になんら影響を及ぼさないことが判明して、ようやく事件は収束をみたのだった。
危うく、とんでもない変態に貞操を奪われるところだった。用心、用心と……。
安易な雰囲気に流された自分を反省しつつ、足早に玄関へ向かう桜井。
その後ろ姿が廊下の角へ消えたとき、ようやくメリメリと壁から抜け出した源外。
ぼろぼろの姿になりながらも、科学者特有の観察力で、ーーおや、これは? と床に落ちた一個のリチウムイオン電池を拾い上げた。
う~ん、なんとでこんな所にリチウムイオン電池が……。と不審に思ったものの、--まっ、いいか。といい加減な気性が災いして、源外、疑問への探求をあっさり断念した。
そのリチウムイオン電池をパジャマのポケットに収めると、「さあ、二度寝じゃ、二度寝」と欠伸を噛み締めつつ、遅刻のことなど素粒子単位ほどにも気にかけず寝室へ向かう源外であった。
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