転生先は嫌われ者の姫？ よく分からないので取り敢えずこの現実を楽しむことに致します。

本編

異世界転生

「亜莉朱～～また明日！」

「早柏さんー！またねー！」

「ありすちゃん♡また明日～」

「ふふ、みんなまたね！」

次々と私に向けて挨拶をしてくれる人たちに向けてそう笑顔で返すと、どっと歓声が上がる。

...みんな物好きね。こんな私にまで挨拶してくれるなんて。
......さてと。今日の夕飯はどうしようかな。

そんなことを考えていると、

きゃぁぁぁあああ！！！！

といった悲鳴が耳を突き刺した。

「何...！？」

そう呟いて声のしたほうを見ると、小学生くらいだろうか。女の子が、道路で蹲っていた。
近くにはクラクションを鳴らしながら猛突進してくる大型トラック。
近くの人たちもそれに気がついてはいる様だが、憐みのような視線を浮かべるばかりで助けようと動く者はだれ一人いない。

どうしよう。このままじゃあの子が引かれちゃう...！！
そんな言葉が頭の中に浮かんだ瞬間、私の身体は道路へ飛び込んでいた。
後ろから私にかけられる留めの声がかかるが、もう私の身体は止まらなかった。

吸い込まれるように女の子のもとに駆け寄り、彼女を歩道の方にいた男性へ投げる。
その瞬間、激しい衝撃と共に左からゴンッという音がなったかと思うと、私の意識は暗転した。

嗚呼、私、死んだんだろうなぁ。
そんなことを思いながら、何故か体の感覚があることに不思議に思い、ゆっくりと目を開ける。

「...え？」

病院...？にしてはやけに豪華な部屋...。それに、なにこの服...。髪も、私こんなに長くないのに...。

その時、ガチャン、という音が左から聞こえた。

「...アリシァーナ様......？」

「...？」

あ、あり...？というか、今、様って言った？
その、アリシァーナっていうのはもしかして私のこと！？
これって物語でよくある異世界転生ってやつ！？

「えっと...お、お身体はもう大丈夫なのですか...？あっ申し訳ありません、アリシァーナ様なら問題ありませんよね...で、でも私心配で...」

そう若干おびえた様子で呟く彼女に、私は戸惑いつつも笑顔を見せると、彼女は心底驚いたような表情で固まる。

彼女は私のこと恐れているようだけど...。
私が入る前の私って、いったいどんな性格していたの...。

「ええと...。そんなに怯えないで聞いてもらえると有り難いのですが...少し聞いても？」

取り敢えずそう尋ねると、彼女は眼を見開いたままこくんと頷く。

「ありがとうございます。では遠慮なく。まず、そのアリシァーナ様っていうのは私のことでしょうか？もしそうなら、私の本名や年齢を教えて頂けますか？」

「...え？...はい。お嬢様のお名前でございます。アリシァーナ・リグ様。リザート・リグ様と、アリーナ・リグ様...お嬢様のお父様とお母様の一人娘で、年齢は１８歳でございます。...って、知っていらっしゃいますよね？」

心底不思議そうな表情でそう呟いた彼女に、私は苦笑で誤魔化す。

「そ、そうですよね...いきなりすみません...」

「それに、敬語なんて使わないでください...。こんなところ誰かに見られでもしたら、私が殺されてしまいます...。」

...えっ、......ああそうか。私はお嬢様で、彼女は召使だから...。

「...ごめんなさい。..でも、貴方、私より年上よね？」

「は、はい。お嬢様より一つ上でございますが...。」

年齢は関係なく、身分が優先されるのね...。
やっぱりここは、私のいた世界じゃないのね。

...それに、彼女の反応からするに、あまりこの身体は好かれていないみたい。
......まあいっか。勝手に連れてこられたのは事実だし、好きなようにこの世界を楽しもう。
好かれていないのは家族のおかげで慣れっこだし。
学校のみんなは惜しいけど、もうあっちの私は死んだ。

気を引き締めるのよ亜莉朱。
私は一人でもやっていける。