【完結】四季のごちそう、たらふくおあげんせ

秋月一花

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冬のごちそう

ひっつみ 2話

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 今日の野菜は白菜、にんじん、長ネギ。それと、冷凍庫にある豚バラを入れる予定。

 美咲みさきにはボウルに小麦粉と水を入れてこねてもらう。そのあいだに野菜を切った。

 にんじんは火が通りやすいように薄めに切り、白菜も食べやすい大きさに切り、長ネギは斜め切りにした。そして、冷凍の豚バラはそのまま包丁で一口サイズに切る。

 お湯が沸いてから全部まとめて鍋に入れた。

「けーこばあば、このくらい?」
「うんうん、良い感じ。これをこうちぎって、鍋に入れていくのよ」
「寝かせないの?」
「うちは寝かせないねぇ……。場所によっては手でこねてから一時間寝かせるらしいけど、高橋たかはし家ではしません」
「場所によっていろいろだね」

 こねた小麦粉を一口サイズにちぎり、鍋の中に入れていく。

「そしてうちはめんつゆです」

 と、言いながら恵子けいこはとぽとぽめんつゆを入れた。ふわりと出汁の良い香りが漂うと、美咲のお腹がくぅ、と鳴いた。

「お腹空いちゃった」
「ふふ。美咲ちゃん、辛いの平気?」
「大好きよ」
「なら、これも入れちゃいましょう」

 冷蔵庫からかんずりを取り出して、スプーンで掬って鍋に入れる。

「もっと辛くしたかったら、一味唐辛子もあるわよ」
「寒い日に辛いもの! いいねぇ」

 美咲との会話を楽しみながら、具材が煮えるのを待つ。くつくつという音を聞きながら、会話を弾ませた。

「そろそろいいかしら。美咲ちゃん、どんぶり出してくれる?」
「はいはーい」

 美咲は恵子の家の食器棚からどんぶりを取り出して、恵子に渡す。

 どんぶりを受け取った恵子は、火を止めてお玉で鍋からどんぶりへ移した。

「あと、チューブで悪いんだけど……これ、おろししょうがね、好みだろうから」
「わ、しょうが好き! ありがとう!」

 ふたり分のどんぶりを食卓に置いて、箸とレンゲを用意して椅子に座る。チューブのおろししょうがをひっつみの中に入れ、かき混ぜる。

「それじゃあ、たらふくおあげんせ、美咲ちゃん」
「ありがたく、いただきます」

 両手を合わせて小さく頭を下げる美咲に、恵子も両手を合わせて「いただきます」と口にした。

 まず一口スープを飲む。ひっつみを入れたことで、小麦がスープに溶けて少しとろみがつき、めんつゆとかんずり、野菜と豚バラの出汁が良く出ている。

「あったまるぅー……」

 美咲もスープを飲んだようで、ほぅ、とゆっくり息を吐いた。

 くたくたになった白菜を食べると、甘みを感じた。冬の葉物野菜は美味しい、と心の中でつぶやきながら、恵子はにんじんや長ネギも食べ、ひっつみも食べる。

 ほどよい弾力のあるひっつみを噛み、「おいしいねぇ」と微笑んだ。

「寒いときにはとっても良いよね、ひっつみ……」
「んだな。小麦粉と水があればできるし」

 たっぷり作ったのでお代わり分もある。美咲はぱくぱくとよく食べてくれ、身体の中からぽかぽかと温まってくる。かんずりとしょうがの作用もあるだろう。

 それから美咲はおかわりをして、「ごちそうさまでした! とってもおいしかった!」と満面の笑みを浮かべた。その表情を見て、恵子はふふっと目元を細めてうなずいた。
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