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1章:旅人として
食欲はいつも旺盛 ☆2☆
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シュエを可愛がっていた兄たちからは大反対されたが、皇后である母からは賛成された。
『竜人族の皇女として、世界を見ないで過ごすのはもったいなかろう』
と、まさに鶴の一声。
うきうきと旅支度を始めたシュエ。さぁ出発! というタイミングで、父からリーズを護衛に連れていけと言われたのだ。
リーズは乳母の子どもであり、幼い頃から一緒に過ごす時間が多かった。
つい先日二百歳になり、竜人族の成人を迎えたため、ついでにいろんな国を見てこいと背中を押されたらしい。
そんなわけで、シュエとリーズは一緒に旅をすることになった。
「それはこちらの台詞ですよ。成人してからもシュエとの縁は続くんですね……」
「なんじゃ? 成人後の旅がわらわと二人では嫌じゃと?」
「そんなこと、言ってませんよ。ただ、なぜ私を護衛に選んだのか……それが謎なだけです」
それは確かに、とシュエはうなずいた。だが、すぐに国にいた屈強な戦士たちを思い浮かべて、隣にいるのがリーズで良かったと心の中でつぶやく。
リーズの体格はまだあの屈強な戦士たちよりは細く、すらりとしている。
それでもいざとなれば竜の姿になり、空を翔けることができる。シュエを乗せてもきっと安定して飛べるだろう。
「腐れ縁ということで、諦めることじゃな」
「……腐れ縁。……ええ、まぁ、そうでしょうね」
はぁ、と項垂れるリーズの頭をぽんぽんと慰めるように撫でる。彼はジトリとした目をして、「慰めないでください」ときっぱり言われた。
「むぅ。せっかくわらわが慰めてやっているのに」
「頼んでいません」
「可愛くないっ」
「成人男性は可愛いと思われたくありません」
早口で言われてムッとしたように唇を尖らせる。その唇を思わずというように人差し指と中指で摘まむリーズに、じたばたと手を動かすシュエ。
ぱっと手を離すリーズと顔を見合わせ、同時にプッと噴き出した。
「それにしても、あの牛肉の串焼きは美味じゃった。リーズも食べてみたらどうじゃ?」
「遠慮します。そんなにお腹空いてませんし、憂色が食べられなくなりますよ」
「旅の醍醐味は食じゃろうに……」
「他にもあるでしょう。観光やら温泉やらが」
「うむ、それも楽しみじゃ」
すでに宿は予約してある。
故郷を離れて一週間。
シュエはこの旅を満喫していた。
期間は――シュエが満足するまで。
「じゃが、やはり食よ! 面白いと思わぬか、リーズ。美味しいものを食べると幸せを感じるじゃろう?」
「……そうですね。ほら、シュエ、冷えてきましたから、宿屋に行きましょう」
蒼然とした夕暮れ時の風は冷たく、リーズは自分の着ていた上着でシュエを包み、「失礼します」と一言つぶやいてから、ひょいと抱き上げた。
「宿屋までいきますよ」
「任せた」
シュエを抱えたまま、リーズは歩き出す。
その姿を周囲の人たちから微笑ましそうに見られていることに気付き、彼女は目を伏せた。
『竜人族の皇女として、世界を見ないで過ごすのはもったいなかろう』
と、まさに鶴の一声。
うきうきと旅支度を始めたシュエ。さぁ出発! というタイミングで、父からリーズを護衛に連れていけと言われたのだ。
リーズは乳母の子どもであり、幼い頃から一緒に過ごす時間が多かった。
つい先日二百歳になり、竜人族の成人を迎えたため、ついでにいろんな国を見てこいと背中を押されたらしい。
そんなわけで、シュエとリーズは一緒に旅をすることになった。
「それはこちらの台詞ですよ。成人してからもシュエとの縁は続くんですね……」
「なんじゃ? 成人後の旅がわらわと二人では嫌じゃと?」
「そんなこと、言ってませんよ。ただ、なぜ私を護衛に選んだのか……それが謎なだけです」
それは確かに、とシュエはうなずいた。だが、すぐに国にいた屈強な戦士たちを思い浮かべて、隣にいるのがリーズで良かったと心の中でつぶやく。
リーズの体格はまだあの屈強な戦士たちよりは細く、すらりとしている。
それでもいざとなれば竜の姿になり、空を翔けることができる。シュエを乗せてもきっと安定して飛べるだろう。
「腐れ縁ということで、諦めることじゃな」
「……腐れ縁。……ええ、まぁ、そうでしょうね」
はぁ、と項垂れるリーズの頭をぽんぽんと慰めるように撫でる。彼はジトリとした目をして、「慰めないでください」ときっぱり言われた。
「むぅ。せっかくわらわが慰めてやっているのに」
「頼んでいません」
「可愛くないっ」
「成人男性は可愛いと思われたくありません」
早口で言われてムッとしたように唇を尖らせる。その唇を思わずというように人差し指と中指で摘まむリーズに、じたばたと手を動かすシュエ。
ぱっと手を離すリーズと顔を見合わせ、同時にプッと噴き出した。
「それにしても、あの牛肉の串焼きは美味じゃった。リーズも食べてみたらどうじゃ?」
「遠慮します。そんなにお腹空いてませんし、憂色が食べられなくなりますよ」
「旅の醍醐味は食じゃろうに……」
「他にもあるでしょう。観光やら温泉やらが」
「うむ、それも楽しみじゃ」
すでに宿は予約してある。
故郷を離れて一週間。
シュエはこの旅を満喫していた。
期間は――シュエが満足するまで。
「じゃが、やはり食よ! 面白いと思わぬか、リーズ。美味しいものを食べると幸せを感じるじゃろう?」
「……そうですね。ほら、シュエ、冷えてきましたから、宿屋に行きましょう」
蒼然とした夕暮れ時の風は冷たく、リーズは自分の着ていた上着でシュエを包み、「失礼します」と一言つぶやいてから、ひょいと抱き上げた。
「宿屋までいきますよ」
「任せた」
シュエを抱えたまま、リーズは歩き出す。
その姿を周囲の人たちから微笑ましそうに見られていることに気付き、彼女は目を伏せた。
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