24 / 131
1章:旅人として
困っている人を見かけたら? ☆14☆
しおりを挟む
◆◆◆
次に目が覚めたら朝だった。
鳥のさえずりが聞こえて目を開けると、まぶしいくらいの太陽の光がサンサンと部屋の中に降り注いでいる。
目を細めると「おはようございます」とリーズが声をかけてきた。
むくりと起き上がり、まだはっきりと目覚めていないシュエは、ぽやぽやと辺りを見渡してからリーズを見上げ、「おはよう」と眠そうな声で挨拶をする。
「あまり眠れませんでした?」
「んー、いや、眠ったぞ。ただ、ちょいと疲れが溜まっているのかもしれん」
「最近、悪鬼とも戦っていますしね」
倒しておかないと人々の迷惑になるだろう、と目で訴えた。
幸いなことに、父からもらった翠竜剣は悪鬼を倒すこと適していた。リーズもそれを知っているから、シュエが戦うことを認めている。
並大抵の武器では、悪鬼を倒せない。
怯ませることくらいはできるだろうが、その前に襲われるだろう。
「この世界の悪鬼なら、わらわの敵ではないな」
「世界によって悪鬼の強さも変わるのかもしれませんね。内なる世界では弱体化しているのかも」
「あの黒いもやが空へ上がっていくじゃろ? もしかしたら、外なる世界で身体を癒しているのかもしれんな」
とはいえ、あちらの世界のことはさっぱりわからない。
翠竜国からこの世界にくるために通っただけだから。
兄たちから旅の話を聞いていたときよく耳にしたので、念のため調べてみたのだ。兄たちは『可愛い妹が戦うなんて!』と嘆くようなことをいっていたが、母が呆れたように目元を細めて睨んだら、口を閉ざした。
『よいですか、姫。あちらの世界の悪鬼に翻弄されるなんてこと、翠竜国の王族としてあってはなりません。強くなりなさい』
真剣な表情でいわれて、思わずこくりとうなずいたことを思い出した。あの日から、剣の使い方を教えてもらったのだ。
父が渡した翠竜剣は、持ち主の成長とともに姿を変えるが、その刃はかなり鋭い。
斬れないものなど、ないのではないかと思えるくらいに。
「家族の後押しがあり、こうして剣を使えるようになったわけじゃが、まさか実戦で使う日がくるとはのぅ」
「……正直、最初に蠪姪に会ったとき、嬉々として斬りかかったときは驚きましたよ」
「書物で見た悪鬼がいたから、つい」
ちなみに蠪姪は狐のような姿だ。
しかし、九尾、九首、虎の爪を持つ。これも赤子のような声で人を誘い、人を喰う。
シュエにとって、この世界の人たちは大事である。だからこそ、人を喰らう悪鬼を退治しながら旅をしてきた。
「それに、人がいないと美味しいものも食えんしな」
「結局食にいくんですね……」
「我が国ではあったものがなかったりするし、こちらの世界は結構不便なのではなかろうか?」
「どうでしょう。不便さはそれが『普通』だと思っていたら、感じないものですよ」
そんなもんか? と首を傾げるシュエに、リーズはこくりと首を縦に動かす。そして、彼女の後ろに回り、櫛を取り出すと髪を梳き出した。
シュエの髪を梳き、髪を二つにわけてから三つ編みにし、お団子のようにまとめる。
派手に動き回る彼女には、しっかりとまとめておいたほうがよいと、この旅を始めてから気付いた。
「はい、できましたよ」
「相変わらず器用よな……」
手鏡を渡されてシュエは鏡の中の自分をマジマジと眺めて、ぽつりとつぶやく。
皇女だから自分の髪を自分でいじったことはない。
挑戦したこともあったが、ぐちゃぐちゃになるだけだった。それをリーズはあっさりと解決するのだ。
「手先の器用さは、必要に応じて、ですよ」
「まぁ、わらわは皇女だし? 髪を結べなくても問題なかろ?」
「ええ、そうですね。姫さまは姫さまのままでいいのですよ」
さらりと流された気がして、シュエは唇を尖らせる。
リーズはその様子を見て、小さく口元に弧を描く。
旅に出ているとはいえ、翠竜国の大切な末っ子皇女であることは変わらない。
「さて、今日はどうするのですか?」
「とりあえず、あの家にまたいくか。きちんと食べているか見なければな」
次に目が覚めたら朝だった。
鳥のさえずりが聞こえて目を開けると、まぶしいくらいの太陽の光がサンサンと部屋の中に降り注いでいる。
目を細めると「おはようございます」とリーズが声をかけてきた。
むくりと起き上がり、まだはっきりと目覚めていないシュエは、ぽやぽやと辺りを見渡してからリーズを見上げ、「おはよう」と眠そうな声で挨拶をする。
「あまり眠れませんでした?」
「んー、いや、眠ったぞ。ただ、ちょいと疲れが溜まっているのかもしれん」
「最近、悪鬼とも戦っていますしね」
倒しておかないと人々の迷惑になるだろう、と目で訴えた。
幸いなことに、父からもらった翠竜剣は悪鬼を倒すこと適していた。リーズもそれを知っているから、シュエが戦うことを認めている。
並大抵の武器では、悪鬼を倒せない。
怯ませることくらいはできるだろうが、その前に襲われるだろう。
「この世界の悪鬼なら、わらわの敵ではないな」
「世界によって悪鬼の強さも変わるのかもしれませんね。内なる世界では弱体化しているのかも」
「あの黒いもやが空へ上がっていくじゃろ? もしかしたら、外なる世界で身体を癒しているのかもしれんな」
とはいえ、あちらの世界のことはさっぱりわからない。
翠竜国からこの世界にくるために通っただけだから。
兄たちから旅の話を聞いていたときよく耳にしたので、念のため調べてみたのだ。兄たちは『可愛い妹が戦うなんて!』と嘆くようなことをいっていたが、母が呆れたように目元を細めて睨んだら、口を閉ざした。
『よいですか、姫。あちらの世界の悪鬼に翻弄されるなんてこと、翠竜国の王族としてあってはなりません。強くなりなさい』
真剣な表情でいわれて、思わずこくりとうなずいたことを思い出した。あの日から、剣の使い方を教えてもらったのだ。
父が渡した翠竜剣は、持ち主の成長とともに姿を変えるが、その刃はかなり鋭い。
斬れないものなど、ないのではないかと思えるくらいに。
「家族の後押しがあり、こうして剣を使えるようになったわけじゃが、まさか実戦で使う日がくるとはのぅ」
「……正直、最初に蠪姪に会ったとき、嬉々として斬りかかったときは驚きましたよ」
「書物で見た悪鬼がいたから、つい」
ちなみに蠪姪は狐のような姿だ。
しかし、九尾、九首、虎の爪を持つ。これも赤子のような声で人を誘い、人を喰う。
シュエにとって、この世界の人たちは大事である。だからこそ、人を喰らう悪鬼を退治しながら旅をしてきた。
「それに、人がいないと美味しいものも食えんしな」
「結局食にいくんですね……」
「我が国ではあったものがなかったりするし、こちらの世界は結構不便なのではなかろうか?」
「どうでしょう。不便さはそれが『普通』だと思っていたら、感じないものですよ」
そんなもんか? と首を傾げるシュエに、リーズはこくりと首を縦に動かす。そして、彼女の後ろに回り、櫛を取り出すと髪を梳き出した。
シュエの髪を梳き、髪を二つにわけてから三つ編みにし、お団子のようにまとめる。
派手に動き回る彼女には、しっかりとまとめておいたほうがよいと、この旅を始めてから気付いた。
「はい、できましたよ」
「相変わらず器用よな……」
手鏡を渡されてシュエは鏡の中の自分をマジマジと眺めて、ぽつりとつぶやく。
皇女だから自分の髪を自分でいじったことはない。
挑戦したこともあったが、ぐちゃぐちゃになるだけだった。それをリーズはあっさりと解決するのだ。
「手先の器用さは、必要に応じて、ですよ」
「まぁ、わらわは皇女だし? 髪を結べなくても問題なかろ?」
「ええ、そうですね。姫さまは姫さまのままでいいのですよ」
さらりと流された気がして、シュエは唇を尖らせる。
リーズはその様子を見て、小さく口元に弧を描く。
旅に出ているとはいえ、翠竜国の大切な末っ子皇女であることは変わらない。
「さて、今日はどうするのですか?」
「とりあえず、あの家にまたいくか。きちんと食べているか見なければな」
13
あなたにおすすめの小説
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
私ですか?
庭にハニワ
ファンタジー
うわ。
本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。
長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。
良く知らんけど。
この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。
それによって迷惑被るのは私なんだが。
あ、申し遅れました。
私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。
特技は有効利用しよう。
庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。
…………。
どうしてくれよう……。
婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。
この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語
紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。
しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。
郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。
そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。
そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。
アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。
そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる