竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

困っている人を見かけたら? ☆24☆

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 自分に思い切り構ってくる両親が、三人の兄たちを放任していたとは思えずに眉間に皺を刻むと、リーズが腰を曲げて彼女の眉間を指先で軽く突く。

「皺になっちゃいますよ」

 くすりと笑いながらも、どこか心配そうに言葉を紡ぐリーズに、シュエは自分の眉間を守るように手を当てた。

「まったく想像できないのじゃが?」
「旅立つときなんて、どの世界にするかも興味なさそうでしたよ」
「そうなのかっ? 父上も母上も?」
「ええ。シュエだけです、この待遇。といっても、私も知っているのは第三皇子のときだけですが。上のお二人は私より年上ですし」

 長兄は二百五十歳、次兄は二百三十歳、三番目の兄はまだ百六十歳。リーズと四十歳の差なので、旅立つときのことを覚えていてもおかしくはない。

「そういえばそうじゃったな……」

 シュエとリーズは百歳違う。それに、自分よりも年下の竜人族を見たことがない。それは、シュエが自分の宮殿にいるからというのもあるが、彼女に仕える人たちは成人している竜人族ばかりだった。

 リーズは乳母の息子だったので、例外としてシュエと過ごしていたが……ちらりと彼を見て、感慨深そうに息を吐く。

「確か、第三皇子は五十歳で旅立っていましたから。十年くらいで戻ってきましたけど」
「ほほう。旅立ったばかりの話ばかり聞いていたから、知らんかった」
「シュエが生まれたときはお祭り騒ぎでしたよ。シュエのご家族は本当……なんというか、賑やかな方々だったので」

 自分が生まれたときなんて覚えてない、とシュエが唇を尖らせた。

 リーズは「覚えている人がいたら、奇跡ですよ」と笑った。だが、その目はあまり笑っていない。

 いったい自分が生まれたとき、どんなお祭り騒ぎになったのかを興味を持ち、あとでルーランに決めてみようと、シュエは頭の片隅に入れておく。

「……それにしても、わらわたちに興味があるのなら、声をかけてくれてもよいと思わんか?」
「『よそ者』には、なかなか声をかけられないのでは?」
「むぅ」

 面白くなさそうに頬を膨らますシュエの姿を見て、リーズは肩をすくめた。

 ちらちらとこちらをうかがうように視線を送る村人たち。その視線がシュエとリーズに刺さる。

 興味があるのなら、素直に近付いてくればいいのに、とシュエが村人たちをじぃっと見つめると、村人たちはさっとその視線をそらしてしまった。

 ぼんやりと周りを見渡していると、ルーランが近付いてくる。

「なんじゃ、もう終わったのか?」
「ええ、簡単な鍵をつけただけですもの。それにしても、ここまで見つめられると、王宮のお茶会を思い出しますわね」

 ルーランは頬に手を添えて微笑んだ。

 シュエはキョトンとした表情を浮かべて、こてんと首を傾げる。

「どういう意味じゃ?」
「――他人を恐れるのは、その人のことをよく知らないからですわ。彼らはわたくしたちのことを知りませんから、恐れるのも当然でしょうね。まぁ、わたくしの美貌の前では、恐れは感じないようですが」

 くすくすと鈴を転がすようにルーランに、リーズはゆっくりと、大きなため息を吐いた。

「確かにルーランは美人じゃからな! 見惚れる者が多くても不思議ではなかろう。わらわだって思わず見惚れてしまうからのぅ!」

 口を大きく開けて笑うシュエに、ルーランは目を丸くしてから、ぎゅっとシュエに抱きつく。

「もーっ、どうしてこんなに可愛いのですかっ! いつだって頼ってくださいね!」
「うむ、いつも頼りにしておるよ!」

 きゃあきゃあとはしゃぐ二人の姿を見ながら、リーズはもう一度、大きなため息を吐いた。
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