33 / 131
1章:旅人として
困っている人を見かけたら? ☆23☆
しおりを挟む
リーズはシュエから大樹へ視線を移す。
大人数で囲まないといけないくらい太い幹に、さわさわと風になびく枝。風の動きに合わせて揺れている葉。
時折、葉が落ちる。その葉も風に乗って遠くまで飛んでいるようだ。
「――何年くらいの大樹なんでしょうね」
「さぁ? そもそもこの世界の暦も知らんしのぅ。わらわは父が勧めた世界に決めたから、知っているとしたら……」
「陛下、ですか。なるほど、それであまり強くない悪鬼の世界に来たのですね」
納得したようにリーズが顎を引く。
本来、竜人族は自分が好きな世界に飛び、旅をするものだが、家族から溺愛されているシュエは違う。
どこが一番安全なのかを先に調べ上げてから、彼女に『この国が良いと思うよ』と勧めたのだろうと考え、リーズは肩をすくめた。
(過保護……いえ、姫さまは箱入り娘だから、自分たちが安心するために勧めたのでしょうね)
シュエはリーズを見上げて、にこやかに微笑む。
「わらわたちに太刀打ちできない悪鬼がいる世界なら、食も楽しめんしのぅ!」
「基準はやっぱり、そこなんですね」
「当然じゃ、美味しいものは世界を救うぞ、たぶん」
「世界を救う美味しいものって、どういうものですか……?」
額に手を置いて、呆れたように首を横に振るリーズに、シュエは「わからん!」と豪快に笑った。
リーズから少し離れ、くるりと身体を反転させると、腕を上げて天を指す。
「いろんな世界の、いろんな味を楽しみたいのじゃ!」
「成人前の旅で回れる世界は、一つだけですよ」
「成人後なら許されるのか?」
「それは……陛下たち次第ですかね」
成人後にもっと世界が見たいと旅立つ竜人族は多い。
自分たちの世界を巡る竜人族もいる。
寿命が長いからか、同じ場所にずっといるのは飽きるからと、ころころ世界を変えて旅する者もいた。
シュエが覚えている範囲でも、数人はいる。
ほぼ家族からの伝聞ではあるが、新しい場所を巡るのは楽しくてなかなかやめられないようだった。
この旅が終わり、成人するまでのあいだに、家族の考えが変わるかどうかを考えて、彼女はゆっくりと息を吐く。
「なかなか難しそうじゃの……」
「大人に近付けば近付くほど、溺愛ぶりが勢いづきそうですね」
「なんというか、わらわはあの扱いが『普通』じゃったから、気にしてなかったのじゃ。でも……今では兄上たちがどんなふうに育ったのかが気になるぞ」
自分を『可愛い』や『うちの妹最高!』、『この可愛さは世に残すべき!』と愛情を伝えてくれる兄たち。『大きくなったら美人さんね』と微笑む母、『うちの娘、やっぱり誰にも渡したくない』とたまに目が本気な父。
家族を思い浮かべて、シュエは軽く頬をかいた。
この扱いがシュエにとって『当たり前』だったので、兄たちも同じように接していたのかとふと疑問に思い、兄たちに尋ねたことがあったが……顔を見合わせて苦笑を浮かべられたな、と目を細める。
「んー……そうですねぇ……」
リーズが顎に指をかけて空を見上げる。昔を思い出すように。
ぽんっと手を叩き、人差し指を立てて、一言。
「放任主義でしたかね?」
「あの両親がっ!?」
思わず、シュエは大声を上げた。
大人数で囲まないといけないくらい太い幹に、さわさわと風になびく枝。風の動きに合わせて揺れている葉。
時折、葉が落ちる。その葉も風に乗って遠くまで飛んでいるようだ。
「――何年くらいの大樹なんでしょうね」
「さぁ? そもそもこの世界の暦も知らんしのぅ。わらわは父が勧めた世界に決めたから、知っているとしたら……」
「陛下、ですか。なるほど、それであまり強くない悪鬼の世界に来たのですね」
納得したようにリーズが顎を引く。
本来、竜人族は自分が好きな世界に飛び、旅をするものだが、家族から溺愛されているシュエは違う。
どこが一番安全なのかを先に調べ上げてから、彼女に『この国が良いと思うよ』と勧めたのだろうと考え、リーズは肩をすくめた。
(過保護……いえ、姫さまは箱入り娘だから、自分たちが安心するために勧めたのでしょうね)
シュエはリーズを見上げて、にこやかに微笑む。
「わらわたちに太刀打ちできない悪鬼がいる世界なら、食も楽しめんしのぅ!」
「基準はやっぱり、そこなんですね」
「当然じゃ、美味しいものは世界を救うぞ、たぶん」
「世界を救う美味しいものって、どういうものですか……?」
額に手を置いて、呆れたように首を横に振るリーズに、シュエは「わからん!」と豪快に笑った。
リーズから少し離れ、くるりと身体を反転させると、腕を上げて天を指す。
「いろんな世界の、いろんな味を楽しみたいのじゃ!」
「成人前の旅で回れる世界は、一つだけですよ」
「成人後なら許されるのか?」
「それは……陛下たち次第ですかね」
成人後にもっと世界が見たいと旅立つ竜人族は多い。
自分たちの世界を巡る竜人族もいる。
寿命が長いからか、同じ場所にずっといるのは飽きるからと、ころころ世界を変えて旅する者もいた。
シュエが覚えている範囲でも、数人はいる。
ほぼ家族からの伝聞ではあるが、新しい場所を巡るのは楽しくてなかなかやめられないようだった。
この旅が終わり、成人するまでのあいだに、家族の考えが変わるかどうかを考えて、彼女はゆっくりと息を吐く。
「なかなか難しそうじゃの……」
「大人に近付けば近付くほど、溺愛ぶりが勢いづきそうですね」
「なんというか、わらわはあの扱いが『普通』じゃったから、気にしてなかったのじゃ。でも……今では兄上たちがどんなふうに育ったのかが気になるぞ」
自分を『可愛い』や『うちの妹最高!』、『この可愛さは世に残すべき!』と愛情を伝えてくれる兄たち。『大きくなったら美人さんね』と微笑む母、『うちの娘、やっぱり誰にも渡したくない』とたまに目が本気な父。
家族を思い浮かべて、シュエは軽く頬をかいた。
この扱いがシュエにとって『当たり前』だったので、兄たちも同じように接していたのかとふと疑問に思い、兄たちに尋ねたことがあったが……顔を見合わせて苦笑を浮かべられたな、と目を細める。
「んー……そうですねぇ……」
リーズが顎に指をかけて空を見上げる。昔を思い出すように。
ぽんっと手を叩き、人差し指を立てて、一言。
「放任主義でしたかね?」
「あの両親がっ!?」
思わず、シュエは大声を上げた。
13
あなたにおすすめの小説
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
私ですか?
庭にハニワ
ファンタジー
うわ。
本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。
長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。
良く知らんけど。
この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。
それによって迷惑被るのは私なんだが。
あ、申し遅れました。
私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。
金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語
紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。
しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。
郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。
そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。
そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。
アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。
そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。
特技は有効利用しよう。
庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。
…………。
どうしてくれよう……。
婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。
この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる