竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

文字の大きさ
32 / 131
1章:旅人として

困っている人を見かけたら? ☆22☆

しおりを挟む
「人口より鬼火のほうが多いのが謎じゃな。どれだけこの村に恨みがあるのかのぅ?」

 ニヤリと口角を上げるシュエに、リーズはゆっくりと息を吐く。

 シュエの好奇心を刺激している鬼火たちを見渡して、リーズはもう一度、今度は重々しく息を吐いた。

「人間にはえないのかの?」
「視える人は視えるでしょうが、人間と我々とでは、種族が違いますからね。視える世界が違うと思いますよ」

 リーズの言葉に、シュエは肯定するように首を縦に動かした。

 翠竜すいりゅう国で暮らす竜人族と、この世界に住んでいる人たちとでは、種族が違う。

 シュエたち竜人族が持っている力は、きっとこの世界の人たちには珍しいものだろう。

「……ところで、本当にどこを目指しているのですか?」
「んー、わらわの勘ではこの辺なんじゃが……」

 大きな木を見上げてから、シュエは大樹に対して頭を下げる。リーズも同じように頭を下げた。

 そっと大樹に触れて、「ちぃと記憶を見させてもらう」とつぶやいてから、目を閉じる。

 大樹の記憶が流れ込んできて、シュエはその大量の記憶と大樹の前で行われていたことを知り、労わるように大樹を撫でた。

「――人間とは、本当に……」

 小さく言葉をこぼすシュエに、リーズは心配そうに眉を下げる。そして、彼女の肩にぽんと手を置き、「シュエが解決しなくてもいいことなんですよ」と柔らかく声をかけた。

「いいや、このままではこの村は滅ぶじゃろう。わらわは、村が滅ぶことを望んでおらん。だからこそ、この村の人々には意識を変えてほしいところじゃのぅ」

 人の意識を変えるのは難しいことだと、シュエもリーズも知っている。

 しかし、意識を変えなければいずれ鬼火に導かれた悪鬼によって、村は滅ぶだろうと確信していた。

「わらわはこの世界の住人の名を聞かん。情が移ればいろいろつらいからの。じゃが、困っている人たちには手を差し伸べたいし、生きてもらいたい。――わらわはワガママじゃからな!」

 肩に置かれたリーズの手を軽く叩く。

 彼が手を離すと、シュエはくるりと反転してリーズに向かい合う。

 そして、自身の胸元に手を置いてにっと口角を上げ、片目を閉じた。

「――ええ、それこそ、あなたらしい」
「じゃろう?」

 腰に手を置いて笑うシュエ。

 人間の寿命は竜人族よりも短い。

 この世界では悪鬼あっきたちが蔓延はびこっているから、余計に短い人もいる。

 情が移ると、今までできていた判断が鈍るような気がして、シュエはこの世界の住人たちの名を聞くことはなかった。

 旅がどのくらいの期間になるかもわからない。

「美味しいものを食べるために、人の手は必要じゃ。悪鬼たちを倒しているのは、少しでも人口を減らさないため。まぁ、やっぱりただ単にわらわのワガママなのじゃ」

 自信満々にそういうシュエに、リーズは小さく笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

特技は有効利用しよう。

庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。 …………。 どうしてくれよう……。 婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。 この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...