竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

困っている人を見かけたら? ☆27☆

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 顔を上げると、村長たちの表情がやがて恐怖に染まっていくのを見て、シュエは大きなため息を吐く。

「わらわたちにできることは、ここまでのようじゃの」
「そのようですね。あとはルーランに任せましょう」

 リーズはシュエに近付いて、そっと細い肩に手を置いた。

 彼を見上げたあと、シュエは村長たちに微笑みかける。

「お主ら、しっかりと戸締りをするのじゃぞ?」
「――化け物のいうことを聞くとでもっ?」

 恐ろしいものを見たとばかりに、声を震わせながら若い女性が声を荒げた。

 あまたの鬼火を見たからか、シュエがその魂を天に導いたからか、自分たちのことを見る目が一気に『恐怖』に変わった二人に、彼女は目を細める。

「化け物なのは、はたしてどちらじゃろうなぁ?」

 くすり、と口元に弧を描き、リーズの手をきゅっと握った。

「嫉妬するなとはいわんが、ほどほどにせんと身を滅ぼすこともあろう。それは感情を持つ者すべてにいえることじゃ」

「特に、あなた方『人間』は、百まで生きれば長寿ですしね」

 リーズがシュエの肩から手を離し、ふわりと彼女を抱き上げる。

 シュエがリーズを見ると、彼は二人に向けて頭を下げてから歩き出した。

「――お前らは、何者なんだ」
「あなたたちと同じように感情のある、『いきもの』ですよ」

 すれ違う際に村長に震えた声で問われ、リーズは冷たい声色で返す。

 そしてそのまま村の中心まで歩き、そこでルーランと合流した。

 村の男性は艶やかで美しい女性に夢中になっているようで、あれもこれもと畑で採れた野菜を渡されているようだ。

 その様子を見て、「さすがじゃな、ルーラン」とぽつりとこぼすシュエに、リーズは「こうなると思った」と肩をすくめる。

「あら、シュエ、リーズ。用事はもう終わったのですか?」
「うむ。あとはルーランに任せたいのじゃが、頼めるかの?」

 ルーランは一瞬目を丸くしたが、すぐににこりと笑い顎を引いた。

「どこまで干渉してよろしいのかしら?」
「……うーむ、そこはルーランに任せるとしよう。ルーランは『人間』のことについて、わらわより詳しいじゃろう?」
「かしこまりました」

 ぽん、とリーズにお姫さま抱っこをされているシュエの頭を撫でる。

 シュエが彷徨さまよえる魂を解放したことに、ルーランは気付いていた。

「それでは、また今度……そうね、今度はリーズ抜きでお話ししましょう」
「ふふ、楽しみにしていよう」

 ルーランと会話を終えて、村から出ていこうとすると、山の中で出会った青年とその母親が「待って!」と追いかけてきた。

 リーズはぴたりと足を止め、シュエを見た。彼女がうなずいたのを確認してから、振り返る。

「あの、これ、うちで採れた野菜です」
「よかったら、持っていってください」

 青年が差し出したのは、色とりどりの野菜だった。

 ピーマン、トマト、ナスなど、艶と張りがあり美味しそうな野菜だ。

 シュエはその野菜と青年たちを交互に見て、ふっと表情を和らげる。

 両手を伸ばして野菜の入った袋を受け取り、

「感謝する。ありがたく、いただくよ」

 と、にっこりと微笑んだ。
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