竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

海の近くの街で ☆2☆

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「まだ保留じゃ!」
「かしこまりました。では、滞在中に決めましょうか」
「うむ! まずはたらふく魚介類を満喫してからじゃの!」

 歩く速度が少しずつ上がっていく。急ぎ足になっているのは、シュエのお腹が空腹を訴えてきたからだ。

 街に近付いていくと、独特の匂いが鼻腔をくすぐる。

「不思議な匂いじゃのー?」
しおの匂いですね」

 鼻をひくひくとしながら匂いを嗅ぐシュエ。街からは別の匂いもしてきた。

「魚の生臭さとはまた違った匂いじゃの。新しい発見じゃ。……それにしても、なんだか香ばしい匂いも混ざっておるのぅ」

 なにを焼いているのだろうと思いながら、興味津々とばかりにリーズと握った手をぶんぶんと勢いよく振る。

 それだけシュエの興味が料理に向いていることに気付き、リーズは目元を細めた。

 おそらく、ルーランは別の道を選び、すでに街についているだろう。合流したら村での出来事を話すだろうと考え、その前にシュエの空腹を少し満たしたいと思考を巡らせる。

 空腹時に聞くのはきついだろうと、彼女の普段の性格を思い浮かべた。

 自分たちだって、空腹時は物事を悪くとらえる傾向にあるのだ。それがまだ成人していないシュエならなおのこと、と。

 なので、屋台でなにかを買い与え、少しでも空腹を紛らわせてからルーランの話を聞いたほうがよいと判断した。

(結局、私も心配性なのかもしれませんね)

 シュエのことをちらりと見ながら、リーズは気付かれないようにゆっくり息を吐いた。

 リーズの言葉通り、お昼頃に街へ到着した。

 門兵に通行手形を差し出すと、シュエとリーズの顔を見て、「通っていいですよ」と微笑む。

 リーズはその門兵の顔を、どこかで見たことがあるような気がして思わず彼をじっと眺めた。

「後ろが詰まっているから、さっさと入ってくれ。あとでえな、浩然ハオラン

 最後の言葉だけリーズに聞こえるように小声で付け足した門兵に、リーズはようやく彼が誰かを思い出し、「ああ」と返事をする。

 街の中は賑わっていた。今まで見たどんな村や町よりも広く整っていて、シュエは圧巻されたのかぽかんと口を開けていた。

「素晴らしい街じゃな、リーズ! 見よ、この活気あふれた人たちを!」

 リーズから手を離して両手を広げて数歩駆け出すシュエに、リーズは「そうですね」と優しく返す。

 彼のほうを振り返り、早く行こうとばかりにシュエが手招く。

 彼女に足早で近付くと、パシッと手を取った。

「予想以上に人が多いので、はぐれないように」
「なーに、はぐれてもすぐに見つけてくれるじゃろ?」
「もちろんです。ですが、はぐれないほうが助かりますね」
「そりゃそうじゃ!」

 シュエが元気よく笑ったところで、ぐぅ、と空腹を訴える彼女の腹に、二人は顔を見合わせ、思わずというようにき出した。
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