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1章:旅人として
閑話休題 ☆1☆
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――一方、翠竜国にて――
「おお、欣怡からの手紙か!」
竜家の長男――第一皇子の竜俊熙は、妹である欣怡から宇航が託された手紙を手にし、目をきらきらと輝かせて透かすように天井に手紙をかざす。
「我が妹は元気そうだったか?」
「はい。お身体は元気そうでした。気持ちもだいぶ、落ち着いたようです」
そうか、と翠色の瞳を細める俊熙は、手紙を読みたい気持ちとこのままとっておきたい気持ちがせめぎ合い、悩んでいた。
すると、いきなり彼の部屋の扉が勢いよく、大きな音を立てて開けられ……いや、正確には壊されていた。
「おい、梓睿、浩宇、おれの部屋を壊すな!」
「大兄さま、欣怡からの手紙がきたってほんと!?」
「雨彤が欣怡の様子を前に教えてくれたけど、元気になった?」
第三皇子の梓睿、第二皇子の浩宇が壊れた扉の上を歩きながら、俊熙に近付いていく。
それぞれシュエ――欣怡と同じように、濃緑の髪と翠色の瞳を持つ、彼女の兄たちだ。
俊熙が持っている手紙を奪い取ろうと手を伸ばす梓睿、手紙を取られないように抱え込む俊熙、そんな二人を見ながら肩をすくめる浩宇。
「欣怡の手紙、早く読んでくださいよ」
「そうだよ、大兄! 欣怡が旅に出て初めての手紙だろ!」
「お前が奪おうとするからだろうっ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ長兄と弟を見て、浩宇が重々しく息を吐く。
そして、すでに存在を忘れられていそうな宇航が、助けを求めるように浩宇を見ると、彼は呆れたように息を吐き、俊熙と梓睿のうなじをガッと掴み、
「て・が・み」
にこにこと笑いながら口にした。
「小兄……こえぇ……」
「なにかいったか、梓睿?」
「いいえ、なんにもッ! とりあえずうなじから手ェ離してッ!」
ジタバタと手足を動かす梓睿と、うなじを掴まれたまま封筒から手紙を取り出して視線を落とし、口を動かした。
『前略、兄上へ
ルーラン……いや、雨彤からなにを聞いたのか、なんとなくわかるが、心配はいらんぞ。
旅を始めて様々なことがあるのは覚悟していたし、それを乗り越えてこその成人前の旅だと思う。
つまり、過保護! と伝えたい。
浩然もいるのに、なにをそんなに心配しているんだか。
でも、心配してくれてありがとう。欣怡は大丈夫だから、兄上は兄上のやるべきことに集中してください。
かしこ』
――読み終わった瞬間、俊熙はぶわっと涙を流した。
「あの欣怡がこんなに大人になって……!」
袖で目元を隠しおいおいと泣く俊熙に、梓睿と浩宇は眉根を寄せて顔を見合わせる。
ぱっとうなじから手を離すと、梓睿はげほごほと軽く咳き込み、首筋に手を置く。
「はぁ、もう小兄はオレらの扱いが雑なんだから!」
「欣怡は女の子、お前たちは男、だろ?」
「まー、そうだけど。あの子は生まれたときから可愛かったからなぁ」
梓睿が首筋から頬に手を移動させ、ゆっくりと目元を細めた。
欣怡が生まれた日のことは、家族全員覚えている。
竜人族の女の子として生を受けた彼女を、家族全員が可愛がった。可愛がれば可愛がるほど、彼女は愛らしくなった。
「おお、欣怡からの手紙か!」
竜家の長男――第一皇子の竜俊熙は、妹である欣怡から宇航が託された手紙を手にし、目をきらきらと輝かせて透かすように天井に手紙をかざす。
「我が妹は元気そうだったか?」
「はい。お身体は元気そうでした。気持ちもだいぶ、落ち着いたようです」
そうか、と翠色の瞳を細める俊熙は、手紙を読みたい気持ちとこのままとっておきたい気持ちがせめぎ合い、悩んでいた。
すると、いきなり彼の部屋の扉が勢いよく、大きな音を立てて開けられ……いや、正確には壊されていた。
「おい、梓睿、浩宇、おれの部屋を壊すな!」
「大兄さま、欣怡からの手紙がきたってほんと!?」
「雨彤が欣怡の様子を前に教えてくれたけど、元気になった?」
第三皇子の梓睿、第二皇子の浩宇が壊れた扉の上を歩きながら、俊熙に近付いていく。
それぞれシュエ――欣怡と同じように、濃緑の髪と翠色の瞳を持つ、彼女の兄たちだ。
俊熙が持っている手紙を奪い取ろうと手を伸ばす梓睿、手紙を取られないように抱え込む俊熙、そんな二人を見ながら肩をすくめる浩宇。
「欣怡の手紙、早く読んでくださいよ」
「そうだよ、大兄! 欣怡が旅に出て初めての手紙だろ!」
「お前が奪おうとするからだろうっ!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ長兄と弟を見て、浩宇が重々しく息を吐く。
そして、すでに存在を忘れられていそうな宇航が、助けを求めるように浩宇を見ると、彼は呆れたように息を吐き、俊熙と梓睿のうなじをガッと掴み、
「て・が・み」
にこにこと笑いながら口にした。
「小兄……こえぇ……」
「なにかいったか、梓睿?」
「いいえ、なんにもッ! とりあえずうなじから手ェ離してッ!」
ジタバタと手足を動かす梓睿と、うなじを掴まれたまま封筒から手紙を取り出して視線を落とし、口を動かした。
『前略、兄上へ
ルーラン……いや、雨彤からなにを聞いたのか、なんとなくわかるが、心配はいらんぞ。
旅を始めて様々なことがあるのは覚悟していたし、それを乗り越えてこその成人前の旅だと思う。
つまり、過保護! と伝えたい。
浩然もいるのに、なにをそんなに心配しているんだか。
でも、心配してくれてありがとう。欣怡は大丈夫だから、兄上は兄上のやるべきことに集中してください。
かしこ』
――読み終わった瞬間、俊熙はぶわっと涙を流した。
「あの欣怡がこんなに大人になって……!」
袖で目元を隠しおいおいと泣く俊熙に、梓睿と浩宇は眉根を寄せて顔を見合わせる。
ぱっとうなじから手を離すと、梓睿はげほごほと軽く咳き込み、首筋に手を置く。
「はぁ、もう小兄はオレらの扱いが雑なんだから!」
「欣怡は女の子、お前たちは男、だろ?」
「まー、そうだけど。あの子は生まれたときから可愛かったからなぁ」
梓睿が首筋から頬に手を移動させ、ゆっくりと目元を細めた。
欣怡が生まれた日のことは、家族全員覚えている。
竜人族の女の子として生を受けた彼女を、家族全員が可愛がった。可愛がれば可愛がるほど、彼女は愛らしくなった。
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