竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

閑話休題 ☆2☆

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「元気に過ごしているなら良かったよ」
「そうだな。種族の違いに気付くときがくるとは思っていたが、結構早かったなぁ……」
「仕方ないだろう。欣怡のいった世界はそういうところなのだから」

 戦うすべを持たない者が多い世界。

 だが、人間を襲う魔物や悪鬼あっきは弱い世界。

欣怡シン・イーでも簡単に倒せる世界を探したからな」
「やっぱり楽しく旅をしてほしいからな、欣怡には」

 しみじみと話し合う、欣怡の兄三人。

 宇航ユーハンはその様子を眺めながら、ゆっくりと息を吐いた。

 ――確かに過保護だろう、と宇航はもう一度深く息を吐く。

(確かに愛らしい方だったが……)

 この三人にとって、欣怡は目に入れても痛くないほどの溺愛ぶりを目の当たりにして、宇航は欣怡の顔を思い浮かべた。自分のことを労わる心もあり、話しやすい方だと思った。

 そして、彼女のお世話係である浩然ハオランとは、たまに会話をするくらいの仲だったが、欣怡に見せる表情と自分に見せる表情の違いに驚いた。

「浩然も元気そうだったか?」

 そういえば、というように顔を上げて宇航に視線をやる俊熙ジュンシー。彼はこくりとうなずく。

「ええ、相変わらずでした」
「あーあ、浩然はいいよなぁ。欣怡と一緒にいられて。おれも一緒にいきたかった!」

 梓睿ズールイが唇を尖らせながら後頭部で手を組む。

 それは俊熙も浩宇ハオ・ユーも同じ気持ちだったから、なにも言わなかった。

「雨彤も頼られていたしな」
「もっとオレたちを頼っていいのになぁ」

 むしろ頼られたいと願う兄三人。

 そんな三人のやりとりを眺める宇航。

 そろそろこの部屋から抜け出てもいいのではないか、と考え始めた。

「欣怡の成長をこの目に焼き付けることができないなんて、とても残念だ……」
「とはいえ、両親からは『欣怡の手助けをしないように』といわれているし……破ったら欣怡と触れ合うの禁止ってひどくないか?」
「抱きしめることも撫でることもできないなんて、苦痛すぎる!」

 俊熙と梓睿がその未来を想像して打ちひしがれている。

 その光景を眺めながら、浩宇がパンパンと両手を叩いた。

「欣怡が元気にがんばっているのだから、我々も仕事に精を出さないと。あの子が帰ってきたときに、胸を張れるように」

 凛とした声を出す浩宇に、俊熙がじとっと彼を見て口を開く。

「……いや、それなら扉も直せよ?」
「強度が弱いのが悪いんだよ、大兄」
「そうだよ、もう少し頑丈なものにしないと」
「お前らなー!」

 浩宇と梓睿は、逃げるように俊熙の部屋から走り去っていった。

「――あー、雨彤ユートンを呼んできてくれ、扉を直す」
「……かしこまりました」

 宇航に頼み事をして、俊熙は窓の外へ視線を向け、まぶしそうに目元を細める。

(――元気に旅をしておいで、欣怡。オレたちはこの国で、いつでも欣怡が楽しく過ごせるのを祈っているから)

 どうか、彼女が自分の道を迷わず歩いていけますように――

 俊熙はそう願い、目を閉じた。
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