竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

文字の大きさ
70 / 131
1章:旅人として

船旅 ☆6☆

しおりを挟む
「どうした? 寒いのか?」
「いえ、なぜか悪寒が。……姫さまの実兄に間違われたからでしょうか」
「どういう意味じゃ、それは」

 呆れたようにぽふっと、リーズの腰当たりに手の甲を当てる。

 リーズがくすりと口角を上げるのを見て、彼の腰に当てた手を離し、代わりに自分よりも大きな手を握った。

「明日の朝にはあの国に足を踏み入れるのじゃから、今日はしっかり休まねばならんな」
「そうですね。しっかり休んで――あの国の名産品を食べるのでしょう?」
「うむ! 今から楽しみでならん」

 繋いだ手をぱたぱたと振り、小さく飛び跳ねる様子を見て、リーズはちらりと明日到着する国に視線を移す。

(姫さまが気に入る食べ物があればよいのですが……いえ、陛下が選んだ世界ですし、食べ物は美味しいのでしょうね)

 ぼんやりとそんなことを考えていると、くいくいと手を引っ張られていることに気付いた。

「どうしました、シュエ」
「ここで見ているとわくわくが止まらないから、わらわは部屋に戻るぞ」
「私も戻りますよ」

 目を輝かせているシュエを見て、リーズは表情を緩めて歩き出す。

 シュエと一緒に歩き、部屋に戻るとリーズの手を離してベッドへ勢いよく寝転んだ。

「寝て起きたらついていないかのぅ?」
「まだ寝るには早いでしょう。夜中に起きることになってしまいますよ」

 確かに、と残念そうに息を吐くシュエ。夜中に目覚めたら、朝までの時間が待ち遠しくてつらそうだ。

 ごろりとうつ伏せから仰向けになると、むくりと身体を起こす。

「……次の国はどんな国じゃろう?」
「ついてからのお楽しみですね」
「この服装では浮いてしまうかのぅ?」
「そのときは服を買い替えましょう。大丈夫だとは思いますけどね」

 リーズが目元を細めて窓の外を見つめる。船客たちの格好はまちまちだった。

 シュエやリーズのように東洋を感じさせる服を着ている者もいれば、西洋を感じさせる服を着ている人もいた。

 なかにはどちらも混ぜて着ている人の姿もあったので、おそらく現在着ている服でも、そこまで違和感を与えることはないだろう。

「みんな結構自由に着ておるからか?」
「ええ、姫さまだって目にしたでしょう?」

 こくりと首を縦に振るシュエを見て、リーズもうなずきを返した。

 なんにせよ、明日になればどんな人たちが暮らしているのかがわかるので、今日はゆっくりと休まなくては、とシュエは窓の外を見つめながら胸に決意を抱く。

 ――寝不足で食べ物が口にできない、なんてこと、あってはならないのだから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

私ですか?

庭にハニワ
ファンタジー
うわ。 本当にやらかしたよ、あのボンクラ公子。 長年積み上げた婚約者の絆、なんてモノはひとっかけらもなかったようだ。 良く知らんけど。 この婚約、破棄するってコトは……貴族階級は騒ぎになるな。 それによって迷惑被るのは私なんだが。 あ、申し遅れました。 私、今婚約破棄された令嬢の影武者です。

特技は有効利用しよう。

庭にハニワ
ファンタジー
血の繋がらない義妹が、ボンクラ息子どもとはしゃいでる。 …………。 どうしてくれよう……。 婚約破棄、になるのかイマイチ自信が無いという事実。 この作者に色恋沙汰の話は、どーにもムリっポい。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

金の羊亭へようこそ! 〝元〟聖女様の宿屋経営物語

紗々置 遼嘉
ファンタジー
アルシャインは真面目な聖女だった。 しかし、神聖力が枯渇して〝偽聖女〟と罵られて国を追い出された。 郊外に館を貰ったアルシャインは、護衛騎士を付けられた。  そして、そこが酒場兼宿屋だと分かると、復活させようと決意した。 そこには戦争孤児もいて、アルシャインはその子達を養うと決める。 アルシャインの食事処兼、宿屋経営の夢がどんどん形になっていく。 そして、孤児達の成長と日常、たまに恋愛がある物語である。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...