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2章:冒険者として
シュエの決意 ☆4☆
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ルシアンに問われて、シュエは二本の指を立てる。
「エリオット、そなたが選択するんじゃ。一つ目は、このまま家に帰る。二つ目は、ギュスターヴと会う。……さらに」
三本目の指を立たせ、シュエはにっと口角を上げた。
「三つめは、封印された場所に行く」
ぱちん、と片目を閉じるシュエに、リーズはわざとらしく大きく息を吐いた。
ルシアンはテーブルに肘をつき、灰紫の瞳で一行を見やる。椅子に座っている全員の注目を一気に集めたエリオットは、少しのあいだ黙り込み――答えを決めたように顔を上げる。
「おれ……封印された場所に行ってみたい。どんな場所なのか、見てみたい!」
アルフォンスは目を大きく見開く。普段、ワガママを言わないエリオットがこうして自己主張してくるなんて……と思わず涙で瞳を潤ませた。
「ところで、わらわから質問してもよいかのぅ?」
「なんだ?」
「この子たちは隣国から海を見にきた観光客じゃぞ? そなた、どうしてそんなに詳しいんじゃ?」
シュエの問いに、ルシアンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、それから再びテーブルに肘をつき、ゆっくりと息を吐く。
「信じられないかもしれないが、昔は貴族だったんだ」
「えっ、ボス貴族だったんですか!?」
「俺たちと会ったとき、めっちゃやつれて疲れた顔してましたよね!?」
「ええい、黙っとれ! 話が進まん!」
自分たちのボスが貴族だったことに驚いた彼の手下たちが、思わずというように声を上げた。
ルシアンはそんな彼らを一喝すると、大きくため息を吐く。リーズはその様子を眺め、彼も苦労しているんだな、と憐みのまなざしを注ぐ。
「――ヴェルモンド家を知っているか? 俺はもともと、お前らが住んでいる隣国のフェルドニアの人間だ」
ヴェルモンド家? とエリオットが首を傾げ、アルフォンスがなにかを思い出したように顔を勢いよく上げ、ルシアンを見つめた。
「魔術を操る家系——確か、坊ちゃんの祖父の代に大失策をして、没落したと教わりました」
「その通り。俺はルシアン・ヴェルモンド――ヴェルモンド家の末裔だ」
「ちなみにこの国の名は?」
「……え、知らないで旅をしていたのか? マリヴェールだ」
ぎょっとしたように目を大きく見開き、ルシアンが国の名前を伝えると、シュエは「マリヴェールとフェルドニアか」とどこか感心したようにつぶやく。
翠竜国以外、本でしか知らない国々。自分は本当に旅をしているのと改めて実感した。
「リーズ、海を渡る前の国の名は?」
「碧霞国です」
自分が最初に旅をした国の名を知り、シュエは目をきらきらと輝かせた。彼女の意志を尊重したため、答えなかったが……最初から教えていれば、旅は少し違うものになっただろうか、とリーズが考え込んでいると、シュエが扇子を開いて目を伏せる。
「――その封印された場所へは、ここから何日くらいじゃ?」
「エリオット、そなたが選択するんじゃ。一つ目は、このまま家に帰る。二つ目は、ギュスターヴと会う。……さらに」
三本目の指を立たせ、シュエはにっと口角を上げた。
「三つめは、封印された場所に行く」
ぱちん、と片目を閉じるシュエに、リーズはわざとらしく大きく息を吐いた。
ルシアンはテーブルに肘をつき、灰紫の瞳で一行を見やる。椅子に座っている全員の注目を一気に集めたエリオットは、少しのあいだ黙り込み――答えを決めたように顔を上げる。
「おれ……封印された場所に行ってみたい。どんな場所なのか、見てみたい!」
アルフォンスは目を大きく見開く。普段、ワガママを言わないエリオットがこうして自己主張してくるなんて……と思わず涙で瞳を潤ませた。
「ところで、わらわから質問してもよいかのぅ?」
「なんだ?」
「この子たちは隣国から海を見にきた観光客じゃぞ? そなた、どうしてそんなに詳しいんじゃ?」
シュエの問いに、ルシアンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、それから再びテーブルに肘をつき、ゆっくりと息を吐く。
「信じられないかもしれないが、昔は貴族だったんだ」
「えっ、ボス貴族だったんですか!?」
「俺たちと会ったとき、めっちゃやつれて疲れた顔してましたよね!?」
「ええい、黙っとれ! 話が進まん!」
自分たちのボスが貴族だったことに驚いた彼の手下たちが、思わずというように声を上げた。
ルシアンはそんな彼らを一喝すると、大きくため息を吐く。リーズはその様子を眺め、彼も苦労しているんだな、と憐みのまなざしを注ぐ。
「――ヴェルモンド家を知っているか? 俺はもともと、お前らが住んでいる隣国のフェルドニアの人間だ」
ヴェルモンド家? とエリオットが首を傾げ、アルフォンスがなにかを思い出したように顔を勢いよく上げ、ルシアンを見つめた。
「魔術を操る家系——確か、坊ちゃんの祖父の代に大失策をして、没落したと教わりました」
「その通り。俺はルシアン・ヴェルモンド――ヴェルモンド家の末裔だ」
「ちなみにこの国の名は?」
「……え、知らないで旅をしていたのか? マリヴェールだ」
ぎょっとしたように目を大きく見開き、ルシアンが国の名前を伝えると、シュエは「マリヴェールとフェルドニアか」とどこか感心したようにつぶやく。
翠竜国以外、本でしか知らない国々。自分は本当に旅をしているのと改めて実感した。
「リーズ、海を渡る前の国の名は?」
「碧霞国です」
自分が最初に旅をした国の名を知り、シュエは目をきらきらと輝かせた。彼女の意志を尊重したため、答えなかったが……最初から教えていれば、旅は少し違うものになっただろうか、とリーズが考え込んでいると、シュエが扇子を開いて目を伏せる。
「――その封印された場所へは、ここから何日くらいじゃ?」
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