竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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2章:冒険者として

封印された場所 ☆6☆

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 切実なエリオットの声に、アルフォンスは一度目を閉じ、意を決したように強い瞳を彼に向ける。

「……わかりました」
「素早く頼むぞ!」

 彼らの会話を聞いていたシュエは、ゴーレムがエリオットに近付かないように翠竜すいりゅう剣で足元を狙いながら叫んだ。

 翠竜剣で斬れるが、再生してしまう。だが、その再生速度はクラーケンよりも遅いようだ、と瞳をきらめかせて剣を振るっているあいだに、アルフォンスはエリオットの人差し指の腹を軽くナイフで切る。

 じわり、と滲んできた血を、紋章が描かれている壁にそろりとつけた。

 壁に血が吸われ、エリオットのアクアマリンがほのかに光を放つ。

 そのタイミングに合わせて、リーズがゴーレムの巨体を駆けあがり、上顎目掛けて――蹴った。

「――うーん、普通の魔物ならあれで倒れそうなんじゃがな……」

 ゴーレムが大きな口を開けたところを狙い、口が閉じないように剣を口内に縦に入れると、自身の腕を突っ込んで紙を取ろうとする。

 ――その途端、ゴゴゴゴ、と地面を揺らす轟音ごうおんとともに壁が崩れ奥に広い空間が姿を現す。……封印が解かれたのだ。

 そこから、懐かしさを感じる香りがシュエとリーズの鼻腔をくすぐった。

「……あ、シュエ! ゴーレムの動きが止まりました」
「ルシアン、ゴーレムは紙がなければ動かんのじゃな?」
「あ、ああ。そうだ」

 シュエは「ふむ」と小さくつぶやいてから、翠竜剣を鞘に戻し、リーズに「紙を剥がしておけ」と命じる。

 彼は「御意に」と答えてからゴーレムの口から紙を剥がした。

 自身を動かしていた媒体がリーズの手に渡ったことで、ゴーレムは土塊になり――彼は山盛りになった土塊の頂点に立っていた。

 ひょいと降りて、トンッと軽やかに着地すると、ゴーレムに貼られていた紙をシュエに差し出す。

「これが貼られていました」
「ご苦労。えーと……“emethエメト”?」

 シュエは紙をじっと見つめ、書かれていた文字を一文字ずつ言葉にした。

 ルシアンが背後から「真理、という意味だ」と教えてくれた。

「真理?」
「この言葉がなければ、ゴーレムは起動しない。そして、ゴーレムを滅ぼすときにはこうして……」
 最初の“e”の文字を人差し指で隠したルシアンは、土塊に視線を移してから言葉をこぼす。
「“methメス”にすればいい」
「ほぅ! そなた詳しいな!」
「ああ、まぁ、な。……ところで、お前らはあの中に行かなくていいのか?」

 ルシアンは隠していた人差し指を動かし、別の場所をす。

 その指先を追って目を向けると、紋章が描かれた壁が姿を消し、ゴーレムとの戦闘のせいか土埃が舞っていた。その奥に広い空間が確認できた。

 空間の中にはたくさんの金品財宝が乱雑に転がっていて、シュエはリーズを呼んで「財宝が転がっていていいのか?」と表情を歪めながら問いかける。

 翠竜国の財宝はきちんと管理されて、綺麗に整っていた。こんなふうに置かれている宝石たちを見るのは初めてだ。

「……管理の仕方に無頓着だったのかもしれませんね」

 リーズもその様子を眺め、ゆっくりと首を横に振った。そして、ふと、懐かしい気配を感じて彼はシュエに「行ってみましょう」と背中を押す。

「――竜人族の気配がします」
「リーズもか?」

 ひそひそと小声で会話をするシュエとリーズに、ルシアンは怪訝けげんそうに眉間に皺を刻んだ。
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