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1章
20話
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「まぁ、もう瘴気の森とはいえないがな……」
「そもそも……なんであんなに瘴気が満ちた森が?」
「聖女と聖者が結界を張っているのはこの帝都だけだ。各地方にそれぞれ聖女か聖者がいて、その人たちが地方の結界を張っている」
「はぁ!? 七人もいて帝都だけ!?」
「人口が多すぎるらしい。詳しくは知らんけど」
……確かに人口が多いと瘴気も発生しやすい。瘴気=人の悪意だ。人を妬んだり恨んだり……そういう気持ちが瘴気を生む。……だから、帝都だけを守って周りの森林は手が付けられなかった……? 七人もいて? ……瘴気の森って帝都に割と近かったはず。……もしかして、帝都の瘴気をその森に向けていた……とかないよね……?
「……それはまた、不思議ね……」
「不思議?」
「もしも聖女や聖者がひとりでも欠けたら、どうやってカバーするのかが……」
国が大きいとそういうことにもなるんだなぁ、と……。帝都だけは魔物に攻め入れられないとしても、周りの人たちはどうなるのだろうか。行商人とか旅人とか難民とか……、ここだけ守るってことは、他は守れないというわけで……。
「だから傭兵とか冒険者に護衛の仕事があるんだろ」
「傭兵と冒険者?」
「傭兵は金を積めばなんでもする、冒険者は依頼すれば検討する」
「冒険者……! 本で読んだことがあるわっ! 一国のお姫さまが城を抜け出して冒険者と一緒にドラゴンを倒す話!」
ダラム王国で執筆している人が、贈呈品として神殿に置いていったのよね。読まなきゃ悪いかなって思って、時間を見てちまちま読んでいたのよね。面白かったなぁ……。惜しむべきは一気に読めなかったこと。仕事の合間にちまちま読んでいたけどね。神官長には見逃されていたけど……。仕事していれば多少のことには目を……いや、そうでもなかったか。
「……盛り上がっているところ悪いが、お前は冒険者になれないからな?」
「なんで!?」
「王族が冒険者になる気かよ……」
……そうだ、わたしにはそんな血が流れているんだった……!
「あ、じゃあ騎士は?」
「は?」
「回復役なら任せてもらっていいのよ!」
「……実戦経験あるのかよ……?」
実戦……?
あるような……ないような……。あれはあるといって良いのか否か。ゴースト系の魔物に出会って即座に浄化したのは……実戦に入りますか?
おばけ嫌い。ゴースト系もゾンビ系も嫌い。アンデッド系の魔物を見ると即座に浄化する癖があるのよ……。
「……はっ、陛下の所有するお屋敷って、曰くつきじゃないよね!?」
「俺が知るか!」
おばけ屋敷は絶対にイヤだよ! と思いながらバーナードと話していると、ディーンが戻って来た。早い。
「早いな、隊長」
「転移石を使ったから。はい、荷物。それとスーザンから伝言。『お疲れ様でした』だそうだ。はい、これ今までの分の給料」
「約十日でクビになったぁぁあああっ!」
ずしっとそれなりに重い小袋を渡された……。中身を確認すると全部金貨だった……。え、ナニコレホントにわたしがもらっていいヤツ……? とディーンに視線を向けると、「屋敷を浄化した代金も入っているよ」と、追加情報。
「そりゃ、王族かもしれないヤツを置いとくわけないよな……」
「良い職場だと思ったのに……」
「まぁまぁ。……ほら、これからいい職業に巡り合うかもしれないし」
「う~……。……ちょっとこれ多すぎない?」
戻って来るなという圧力を感じるんだけど……。
「瘴気を浄化したなら、そんなもんじゃないのか?」
「え?」
「ん?」
ディーンが変なことをいった? とばかりに首を傾げた。
……ダラム王国では、瘴気を浄化ってことも滅多になかったから、無料でやっていたんだけど……(あ、お礼の品はもらってたけどね!)、瘴気を浄化……。……はっ、もしやこれ仕事になるのでは!? ……って思ったけど、下手に人前で瘴気を浄化したら祀られたそうな気がする。却下。
「わたしの仕事を奪ったなぁ~」
「仕方ないって、こればかりは」
「もう陛下に仕事くださいって伝えたほうが早いんじゃね?」
「神殿行けって言われるー、やだー! 神殿は絶対ヤダー!」
「子どもか、お前はっ!」
神殿で暮らすのはもうごめんだよー。わたしが憧れている普通の世界で普通に暮らしたい。いっそそのお屋敷をもらって商売でも始めようか……。……なにを売るのよ! なにひとつ売るのを持ってないわ! ふぅ、心の中でノリツッコミを繰り返すのも大変だわ……。
「ちなみにディーンとバーナードならどうする?」
「……とりあえず、居場所は必要だから屋敷をもらうかな」
「金を要求してのんびり暮らす」
「……うん、ディーンはともかくバーナード、それホントに陛下にいえるの……?」
「俺はいえない」
「……だよねー……」
さすがにお金を要求するのはね……。はぁ、と小さくため息を吐くと、ディーンが苦笑した。それから三人でああでもない、こうでもないと話していると、いつの間にか陛下と食事を摂る時間になった。……ああ、気が重い……。
「そもそも……なんであんなに瘴気が満ちた森が?」
「聖女と聖者が結界を張っているのはこの帝都だけだ。各地方にそれぞれ聖女か聖者がいて、その人たちが地方の結界を張っている」
「はぁ!? 七人もいて帝都だけ!?」
「人口が多すぎるらしい。詳しくは知らんけど」
……確かに人口が多いと瘴気も発生しやすい。瘴気=人の悪意だ。人を妬んだり恨んだり……そういう気持ちが瘴気を生む。……だから、帝都だけを守って周りの森林は手が付けられなかった……? 七人もいて? ……瘴気の森って帝都に割と近かったはず。……もしかして、帝都の瘴気をその森に向けていた……とかないよね……?
「……それはまた、不思議ね……」
「不思議?」
「もしも聖女や聖者がひとりでも欠けたら、どうやってカバーするのかが……」
国が大きいとそういうことにもなるんだなぁ、と……。帝都だけは魔物に攻め入れられないとしても、周りの人たちはどうなるのだろうか。行商人とか旅人とか難民とか……、ここだけ守るってことは、他は守れないというわけで……。
「だから傭兵とか冒険者に護衛の仕事があるんだろ」
「傭兵と冒険者?」
「傭兵は金を積めばなんでもする、冒険者は依頼すれば検討する」
「冒険者……! 本で読んだことがあるわっ! 一国のお姫さまが城を抜け出して冒険者と一緒にドラゴンを倒す話!」
ダラム王国で執筆している人が、贈呈品として神殿に置いていったのよね。読まなきゃ悪いかなって思って、時間を見てちまちま読んでいたのよね。面白かったなぁ……。惜しむべきは一気に読めなかったこと。仕事の合間にちまちま読んでいたけどね。神官長には見逃されていたけど……。仕事していれば多少のことには目を……いや、そうでもなかったか。
「……盛り上がっているところ悪いが、お前は冒険者になれないからな?」
「なんで!?」
「王族が冒険者になる気かよ……」
……そうだ、わたしにはそんな血が流れているんだった……!
「あ、じゃあ騎士は?」
「は?」
「回復役なら任せてもらっていいのよ!」
「……実戦経験あるのかよ……?」
実戦……?
あるような……ないような……。あれはあるといって良いのか否か。ゴースト系の魔物に出会って即座に浄化したのは……実戦に入りますか?
おばけ嫌い。ゴースト系もゾンビ系も嫌い。アンデッド系の魔物を見ると即座に浄化する癖があるのよ……。
「……はっ、陛下の所有するお屋敷って、曰くつきじゃないよね!?」
「俺が知るか!」
おばけ屋敷は絶対にイヤだよ! と思いながらバーナードと話していると、ディーンが戻って来た。早い。
「早いな、隊長」
「転移石を使ったから。はい、荷物。それとスーザンから伝言。『お疲れ様でした』だそうだ。はい、これ今までの分の給料」
「約十日でクビになったぁぁあああっ!」
ずしっとそれなりに重い小袋を渡された……。中身を確認すると全部金貨だった……。え、ナニコレホントにわたしがもらっていいヤツ……? とディーンに視線を向けると、「屋敷を浄化した代金も入っているよ」と、追加情報。
「そりゃ、王族かもしれないヤツを置いとくわけないよな……」
「良い職場だと思ったのに……」
「まぁまぁ。……ほら、これからいい職業に巡り合うかもしれないし」
「う~……。……ちょっとこれ多すぎない?」
戻って来るなという圧力を感じるんだけど……。
「瘴気を浄化したなら、そんなもんじゃないのか?」
「え?」
「ん?」
ディーンが変なことをいった? とばかりに首を傾げた。
……ダラム王国では、瘴気を浄化ってことも滅多になかったから、無料でやっていたんだけど……(あ、お礼の品はもらってたけどね!)、瘴気を浄化……。……はっ、もしやこれ仕事になるのでは!? ……って思ったけど、下手に人前で瘴気を浄化したら祀られたそうな気がする。却下。
「わたしの仕事を奪ったなぁ~」
「仕方ないって、こればかりは」
「もう陛下に仕事くださいって伝えたほうが早いんじゃね?」
「神殿行けって言われるー、やだー! 神殿は絶対ヤダー!」
「子どもか、お前はっ!」
神殿で暮らすのはもうごめんだよー。わたしが憧れている普通の世界で普通に暮らしたい。いっそそのお屋敷をもらって商売でも始めようか……。……なにを売るのよ! なにひとつ売るのを持ってないわ! ふぅ、心の中でノリツッコミを繰り返すのも大変だわ……。
「ちなみにディーンとバーナードならどうする?」
「……とりあえず、居場所は必要だから屋敷をもらうかな」
「金を要求してのんびり暮らす」
「……うん、ディーンはともかくバーナード、それホントに陛下にいえるの……?」
「俺はいえない」
「……だよねー……」
さすがにお金を要求するのはね……。はぁ、と小さくため息を吐くと、ディーンが苦笑した。それから三人でああでもない、こうでもないと話していると、いつの間にか陛下と食事を摂る時間になった。……ああ、気が重い……。
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