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12話
しおりを挟む「立ち話もなんですから、どうぞ入って下さい」
「ありがとうございます」
≪おじゃましまーす!≫
わたくしとアリコーンが中へ入ると、ランシリル様がソファに座ることを勧めてくれた。ソファに座ると、反対側にランシリル様が座り、わたくしとアリコーンを見た。
「何か不便な点が?」
いや、来てからまだ一日も経ってませんから! と思いつつもふるりと首を横に振る。わたくしはアリコーンに視線を向けてから、ランシリル様に顔を向けて、
「アリコーンがこの神殿に居ることを、この子の家族に伝えたいのですけれども……」
≪多分もうこっちに向かっていると思うし!≫
「……多分、こっちにもう向かっている、とアリコーンが」
「ああ、構いませんよ。それを知らせに来てくださったのですね」
「はい。あの、お邪魔ですよね、それだけお伝えしたくて……」
わたくしが長居しないように立ち上がろうとすると、ランシリル様がそれを止めた。どうやらちょっとお話ししてくれるみたいだ。……でも、なんだろう、この重い雰囲気は。どちらも何も話さず、ただ沈黙だけが広がって、どうしようと考えていると……ランシリル様の視線がアリコーンの翼に注がれていることに気付いた。
「……アリコーンの翼が気になりますか?」
「……あ、いえ……。間近で見るのは初めてだったので、つい」
ふいと視線を逸らしてしまった。そこでわたくしはハッと気付いた。そうよね、わたくしはアリコーンが居ることに慣れてしまっているけれど、この国の人たちはそうじゃない。いきなり信仰の対象が現れたのだ。戸惑うのも当たり前と言えば当たり前なのだ。
「アリコーン様のご家族も、神殿で暮らすようにしますか?」
≪森が良いと思う!≫
わたくしはアリコーンの言葉をランシリル様に伝える。すると、ランシリル様が「ふむ」と呟いて、小さくうなずいた。
「この国にユニコーン様が来てくださるのはとてもありがたいです。イザベラ様に感謝ですね」
「……あの、ランシリル様はこの国のユニコーンの乙女の話を、どう思いますか?」
「ああ、あの子から聞いたのですか」
……? あの子? と首を傾げると、ランシリル様は悪戯っぽい笑みを浮かべてわたくしにこう言った。
「イザベラ様の父君は、私の甥ですよ」
……その時の衝撃と言ったら! だってどう見てもランシリル様のほうが若そうに見えるんだもの!
「ま、またまたご冗談を……え、冗談じゃないんですか? え? ランシリル様のほうがお父様より年上? え?」
≪若作り?≫
「アリコーン、その言葉どこから教えられたの!?」
ビックリして、さっきまでの重い雰囲気は何だったのかと思うくらいコミカルな空気が流れた、気がした。
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