オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

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1章:始まり

加茂家の日常 1話

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 ――ぴちょん、ぴちょん。

 水滴が落ちる音がする。ぬちゃりと水よりも粘りのある液体。視線を下に落とせば、鮮血が足元を濡らしていた。

 ――息を呑む。自身の手に血はついていない。では、これは誰の血なのだろうか。いや、自分はそれを知っている――……

 これは、――の罪だ。

架瑠かける!」

 ――ハッと、顔を上げた。目の前には自分の保護者であり、とあることの師匠でもある加茂かも蓮也れんやが、眉を八の字にして架瑠を見つめている。

「どうやら、修行に集中できてないようだね。……大丈夫かい?」

 濡羽色の腰まである長い髪をさらりと流して、小豆色の瞳には心配を滲ませて架瑠に手を差し出す蓮也。

 彼の年齢は三十五歳だ。しかし、外見はまだ二十代後半に見える。彼の手を取って立ち上がる架瑠は、相変わらず年齢不詳の人だと考えながら視線を合わせた。

「すみません……大丈夫です」
「……まぁ、きみがそういうのなら、信じよう」

 ちくり、と架瑠の胸は痛くなる。だが、『大丈夫』以外になんて言えばいいのかわからず、視線を下げる。そんな架瑠に、蓮也は手を伸ばし――……

「れんちゃーん、るーくーん! 朝ごはん、そろそろできあがるよー!」

 明るい声に阻まれて、架瑠の肩に手を置くことはできなかった。

伊吹いぶきは今日も元気だ」
「……本当にね」

 蓮也の言葉に、架瑠は小さくうなずいた。それと同時にぐぅ、と腹の虫が鳴り、恥ずかしそうに顔を赤く染める。

「シャワーを浴びてさっぱりしてきなさい。まだ時間はあるだろう?」
「うん、そうするよ。蓮也さん、先に食べていていいよ」
「いや、みんな揃って食べるのが、加茂家の習慣だ。いつになったら慣れるんだか」

 架瑠が加茂家に引き取られて十一年。朝食と夕食は一緒に食べようと蓮也から言われていた。

 なので、いつも蓮也と加茂家に棲みついているお手伝いさんの伊吹、そして架瑠は同じ食卓を囲んでいる。

 シャワーを浴びるため離れから母屋まで歩いていると「おーいっ!」と元気な声が聞こえた。

「おはよう、架瑠! 今日も修行?」
「お、おはよう、架瑠くん。いい天気だね」

 声をかけてきたのは、加茂家の隣に住んでいる西谷にしたに咲良さくら茉莉まつりだ。

 二人は架瑠よりも一歳年下の双子だ。活発な姉である咲良と、おっとりとしている妹の茉莉。

「おはよう。ずいぶん早いんだな」
「あたしは朝練、茉莉は朝勉強」
「教室が静かだと、集中できるの」

 どちらも亜麻色の髪と焦げ茶の瞳だ。だが、真っ直ぐに髪を背中まで伸ばしている茉莉とは違い、咲良は運動しやすいようにショートカットにしているし、茉莉は垂れ目だが咲良は吊り目だ。双子とはいえとてもわかりやすい。

「おっと、そろそろ行かなきゃ遅刻だ! じゃあねー!」
「架瑠くん、またあとでね……!」

 慌てたように駆け出す咲良。彼女を追いかけるように茉莉も走り出した。一度足を止め、架瑠を振り返り大きく手を振るのを見て、手を振り返す。

 茉莉とは部活が同じなので、放課後に会うだろう。そう考えながら、架瑠は母屋まで足を運んだ。
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