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2章:異存
学校閉鎖
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――ベッドに沈むような感覚に、目を覚ました。架瑠は、ドッドッドッと早鐘を打つ鼓動を落ち着かせるように、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。
ベッドから起き上がり、カーテンを開けて目の前に飛び込んできたのは――……一面の銀世界。
「……えっ?」
昨日も確かに積もっていたが、ここまで積もってはいなかった。
困惑するように眉間に皺を刻み、時刻を確認すると午前五時前。修行の時間までそろそろだが、身支度を整える前にスマートフォンが鳴った。慌ててスマートフォンを持つと、画面には佑心の名前が出ている。
「はい、もしもし」
『やぁ、おはよう。架瑠くん。外、見たかい?』
「おはようございます、羽井田先輩。今、見たところです」
どこか興奮気味な佑心の弾んだ声。ちらりと視線を窓に移すと、まだまだ積もりそうなくらい雪が降っていた。
『六月にこの異常気象! とても不思議なことではないかね? これは調査の対象だろう!』
「調査って……部活動禁止期間ですよ」
『なーに、おそらく今日は学校閉鎖になるさ。体調を崩す人たちがかなり多くなってきたからね。生徒たちも教師たちも。キミは崩していないかい?』
この寒さで体調を崩す人は多いようだ。六月にこんなに雪が降り積もるなんて、と考えながら佑心の問いかけに答える。
「おれは大丈夫です。羽井田先輩は?」
『ワタシも元気だよ。むしろ体調が良いくらいだ!』
テンション高めの佑心に、架瑠は心の中でそうだろうな、とつぶやいた。こういう非凡なことが起きると、目に見えて生き生きし出す。
それが架瑠の知っている、羽井田佑心というオカルト研究部部長だ。
『それに、茉莉くんから少し気になることを聞いてね』
「茉莉から?」
『ああ。なんでも、あの幽霊屋敷に肝試しをしにいった生徒がいたらしくてね』
架瑠は「えっ」と変に高い声を出した。ここら辺では有名な幽霊屋敷。そこに肝試しにいったのか、と。
蓮也からも『近付かないほうがいい』と言われる場所だ。あの幽霊屋敷の玄関は異界に繋がっているという噂も昔からある。
「なんでまたそんなところに……」
『さぁ? 好奇心旺盛な子だったのでは?』
中学生から高校生になって、最初の一ヶ月よりはだいぶ慣れて、刺激がほしくなったのかもしれないと思考し、架瑠は肩をすくめた。
『そういうわけで、確か加茂家は広かったよね。キミの家に集合してもいいかい?』
「ちょっと待ってください。蓮也さんに聞いてみないと……」
架瑠がそう言ったのと同時に、扉がノックされた。ハッとして時計に視線を向けると、修行の時間が過ぎていることに気付き、扉の外に蓮也がいるのだと感じ取る。
「架瑠? 寝坊かな?」
「あ、いえっ、起きています。えっと、あの……」
どこから話せばいいのかと悩んでいると、蓮也の声が聞こえて返事をする。慌てているような彼の様子に、「開けるよ?」と一言断りを入れてから扉が開いた。
スマートフォンを手にしているのを見て、ごめん、と片手を縦にジェスチャーし、そのまま去ろうとしたところを架瑠が引きとめる。
「あ、あの、蓮也さん。お願いがあるのですが……」
「お願い?」
スマートフォンを差し出す架瑠に、小首を傾げながらも受け取り、「もしもし?」と電話の相手に声をかけた。
蓮也の声しか聞こえなかったが、彼は「わかった、いいよ」と言って電話を切る。
切ってから、架瑠にスマートフォンを差し出す。
「オカルト研究部の人たちが、この家にくるんだって」
「……いいのですか? 本当に」
「構わないよ。……でも、オカルト研究部の部長って言っていた羽井田佑心くん、どうして保護者よりも先に学校閉鎖のことを知っていたのだろう……?」
ベッドから起き上がり、カーテンを開けて目の前に飛び込んできたのは――……一面の銀世界。
「……えっ?」
昨日も確かに積もっていたが、ここまで積もってはいなかった。
困惑するように眉間に皺を刻み、時刻を確認すると午前五時前。修行の時間までそろそろだが、身支度を整える前にスマートフォンが鳴った。慌ててスマートフォンを持つと、画面には佑心の名前が出ている。
「はい、もしもし」
『やぁ、おはよう。架瑠くん。外、見たかい?』
「おはようございます、羽井田先輩。今、見たところです」
どこか興奮気味な佑心の弾んだ声。ちらりと視線を窓に移すと、まだまだ積もりそうなくらい雪が降っていた。
『六月にこの異常気象! とても不思議なことではないかね? これは調査の対象だろう!』
「調査って……部活動禁止期間ですよ」
『なーに、おそらく今日は学校閉鎖になるさ。体調を崩す人たちがかなり多くなってきたからね。生徒たちも教師たちも。キミは崩していないかい?』
この寒さで体調を崩す人は多いようだ。六月にこんなに雪が降り積もるなんて、と考えながら佑心の問いかけに答える。
「おれは大丈夫です。羽井田先輩は?」
『ワタシも元気だよ。むしろ体調が良いくらいだ!』
テンション高めの佑心に、架瑠は心の中でそうだろうな、とつぶやいた。こういう非凡なことが起きると、目に見えて生き生きし出す。
それが架瑠の知っている、羽井田佑心というオカルト研究部部長だ。
『それに、茉莉くんから少し気になることを聞いてね』
「茉莉から?」
『ああ。なんでも、あの幽霊屋敷に肝試しをしにいった生徒がいたらしくてね』
架瑠は「えっ」と変に高い声を出した。ここら辺では有名な幽霊屋敷。そこに肝試しにいったのか、と。
蓮也からも『近付かないほうがいい』と言われる場所だ。あの幽霊屋敷の玄関は異界に繋がっているという噂も昔からある。
「なんでまたそんなところに……」
『さぁ? 好奇心旺盛な子だったのでは?』
中学生から高校生になって、最初の一ヶ月よりはだいぶ慣れて、刺激がほしくなったのかもしれないと思考し、架瑠は肩をすくめた。
『そういうわけで、確か加茂家は広かったよね。キミの家に集合してもいいかい?』
「ちょっと待ってください。蓮也さんに聞いてみないと……」
架瑠がそう言ったのと同時に、扉がノックされた。ハッとして時計に視線を向けると、修行の時間が過ぎていることに気付き、扉の外に蓮也がいるのだと感じ取る。
「架瑠? 寝坊かな?」
「あ、いえっ、起きています。えっと、あの……」
どこから話せばいいのかと悩んでいると、蓮也の声が聞こえて返事をする。慌てているような彼の様子に、「開けるよ?」と一言断りを入れてから扉が開いた。
スマートフォンを手にしているのを見て、ごめん、と片手を縦にジェスチャーし、そのまま去ろうとしたところを架瑠が引きとめる。
「あ、あの、蓮也さん。お願いがあるのですが……」
「お願い?」
スマートフォンを差し出す架瑠に、小首を傾げながらも受け取り、「もしもし?」と電話の相手に声をかけた。
蓮也の声しか聞こえなかったが、彼は「わかった、いいよ」と言って電話を切る。
切ってから、架瑠にスマートフォンを差し出す。
「オカルト研究部の人たちが、この家にくるんだって」
「……いいのですか? 本当に」
「構わないよ。……でも、オカルト研究部の部長って言っていた羽井田佑心くん、どうして保護者よりも先に学校閉鎖のことを知っていたのだろう……?」
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