オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

文字の大きさ
19 / 70
2章:異存

学校閉鎖

しおりを挟む
 ――ベッドに沈むような感覚に、目を覚ました。架瑠かけるは、ドッドッドッと早鐘を打つ鼓動を落ち着かせるように、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。

 ベッドから起き上がり、カーテンを開けて目の前に飛び込んできたのは――……一面の銀世界。

「……えっ?」

 昨日も確かに積もっていたが、ここまで積もってはいなかった。

 困惑するように眉間に皺を刻み、時刻を確認すると午前五時前。修行の時間までそろそろだが、身支度を整える前にスマートフォンが鳴った。慌ててスマートフォンを持つと、画面には佑心うみの名前が出ている。

「はい、もしもし」
『やぁ、おはよう。架瑠くん。外、見たかい?』
「おはようございます、羽井田はいた先輩。今、見たところです」

 どこか興奮気味な佑心の弾んだ声。ちらりと視線を窓に移すと、まだまだ積もりそうなくらい雪が降っていた。

『六月にこの異常気象! とても不思議なことではないかね? これは調査の対象だろう!』
「調査って……部活動禁止期間ですよ」
『なーに、おそらく今日は学校閉鎖になるさ。体調を崩す人たちがかなり多くなってきたからね。生徒たちも教師たちも。キミは崩していないかい?』

 この寒さで体調を崩す人は多いようだ。六月にこんなに雪が降り積もるなんて、と考えながら佑心の問いかけに答える。

「おれは大丈夫です。羽井田先輩は?」
『ワタシも元気だよ。むしろ体調が良いくらいだ!』

 テンション高めの佑心に、架瑠は心の中でそうだろうな、とつぶやいた。こういう非凡なことが起きると、目に見えて生き生きし出す。

 それが架瑠かけるの知っている、羽井田佑心というオカルト研究部部長だ。

『それに、茉莉まつりくんから少し気になることを聞いてね』
「茉莉から?」
『ああ。なんでも、あの幽霊屋敷に肝試しをしにいった生徒がいたらしくてね』

 架瑠は「えっ」と変に高い声を出した。ここら辺では有名な幽霊屋敷。そこに肝試しにいったのか、と。

 蓮也からも『近付かないほうがいい』と言われる場所だ。あの幽霊屋敷の玄関は異界に繋がっているという噂も昔からある。

「なんでまたそんなところに……」
『さぁ? 好奇心旺盛な子だったのでは?』

 中学生から高校生になって、最初の一ヶ月よりはだいぶ慣れて、刺激がほしくなったのかもしれないと思考し、架瑠は肩をすくめた。

『そういうわけで、確か加茂かも家は広かったよね。キミの家に集合してもいいかい?』
「ちょっと待ってください。蓮也れんやさんに聞いてみないと……」

 架瑠がそう言ったのと同時に、扉がノックされた。ハッとして時計に視線を向けると、修行の時間が過ぎていることに気付き、扉の外に蓮也がいるのだと感じ取る。

「架瑠? 寝坊かな?」
「あ、いえっ、起きています。えっと、あの……」

 どこから話せばいいのかと悩んでいると、蓮也の声が聞こえて返事をする。慌てているような彼の様子に、「開けるよ?」と一言断りを入れてから扉が開いた。

 スマートフォンを手にしているのを見て、ごめん、と片手を縦にジェスチャーし、そのまま去ろうとしたところを架瑠が引きとめる。

「あ、あの、蓮也さん。お願いがあるのですが……」
「お願い?」

 スマートフォンを差し出す架瑠に、小首を傾げながらも受け取り、「もしもし?」と電話の相手に声をかけた。

 蓮也の声しか聞こえなかったが、彼は「わかった、いいよ」と言って電話を切る。

 切ってから、架瑠にスマートフォンを差し出す。

「オカルト研究部の人たちが、この家にくるんだって」
「……いいのですか? 本当に」
「構わないよ。……でも、オカルト研究部の部長って言っていた羽井田佑心くん、どうして保護者よりも先に学校閉鎖のことを知っていたのだろう……?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...