オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

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2章:異存

聞き覚えのある声

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 ◆◆◆

 ――ぴちょん、ぴちょん。

(ああ、またあの夢か……)

 もう何度目になるのだろうか、この夢を見るのは。

 架瑠かけるは自身の手を染めている真っ赤な血に視線を落とし、耐えるように唇を噛み締めた。

 ぬちゃりと粘った液体が足元の血の海に落ち、波紋を広げる。鼻をつく鉄の匂い。そして、――生ぬるい、血の温度。

 架瑠の足をガシッと掴んで離さない。以前見たように、両親の姿が血の海の底に沈んでいる。

「――て」
「……ッ!?」

 どこからか、声がした。どんな言葉を口にしているのかはわからない。ただ、架瑠のことを心配しているような気がして、彼は大きく目を見開いた。

 鼓膜を揺らす音は、段々と大きくなる。だが、やはりなにを言っているのかは聞き取れない。

「――おれに、なにかを伝えたいの……?」

 血の海の底に見える両親の顔は、架瑠の目には黒いもじゃもじゃに邪魔されて確認できない。

 架瑠は思い切って血の海をじっと観察する。――自身の霊視を使って。

 彼の紫苑の瞳が淡く光る。ゆらり、と両親の姿が揺らいだ。徐々に姿を変えていくところを目にして、架瑠は息を呑んだ。

「……まだ、だめだよ」

 誰かの手が、架瑠の目を覆う。

「――えっ?」

 どこかで聞いたことのあるような、声だった。

「まだ、始まってはいけない」

 ぽつりとこぼされた言葉に、架瑠は戸惑いの表情を浮かべ――段々と意識が薄らいでいく。

 ――夢の終わりだ。

 ◆◆◆

 ハッとしたように目を開け、飛び起きる。辺りを見渡すと誰もいない。時刻を見るとまだ四時半にもなっていない。

 だが、カーテンからこぼれる日差しは明るかった。

 夏が近付くたびに、日が昇るのが早くなり暮れるのが遅くなる。

 夏が、すぐそこまで来ているのを感じ、架瑠は深呼吸を繰り返した。

 びっしょりと濡れたパジャマが気持ち悪く、その不快感に表情を歪める。

 着替えを持って風呂場に向かい、シャワーを浴びた。

 さっぱりとしたところで、離れに向かう。すでに蓮也れんやは架瑠のことを待っていたらしく、彼の姿を視界に入れるとすぐに「おはよう」と挨拶をしてきた。

「おはようございます、蓮也さん」
「――あれ? ……ちょっと失礼」

 蓮也がなにかに気付いたように架瑠に近付き、彼の長い前髪をすいと後頭部に撫でつけるように上げ、彼の瞳をじっと見つめる。

「蓮也さん?」
「架瑠、ここ最近、霊視を使ったかい?」
「えっと、はい。異界で……」

 それは聞いた、とばかりに蓮也が首を左右に振る。最近なら、そのくらいだと考え、ふと夢の中でも霊視を使ったことを思い出した。

「それ以外にもあるんじゃないかい?」
「……夢の、中で……」

 伝えるかどうか、数秒迷った。しかし、相手は自分の保護者だ。蓮也は昔から架瑠が嘘をついたり感情を誤魔化したりすることを嫌う。

『理性は大事だけど、感情を抑えつけすぎてはいけない』

 蓮也の言葉がよみがえり、架瑠は夢のことを打ち明けた。
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