オカルト研究部員の非日常な日常

秋月一花

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2章:異存

閉じ込められた?

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「……にげて?」

 部室内にただよう血の匂い。

 鉄のような匂いに、どろりとした血文字。

 途中に書かれている文字は、『よこせ』とは筆跡が違う。

「――どうやらこれは、キミの怪異のようだね、架瑠かけるくん」

 ぽん、と佑心うみが架瑠の肩を叩いた。びくりと身体を震わせて、彼を振り返るとにっこりと……まるでこの怪異を楽しんでいるかのように、佑心の露草色の瞳が輝いた。

「これ……本物の、血?」

 茉莉まつりが指先を震えさせながらも、黒板の血文字を指す。

 つむぎは腕を組み、なにかを探るように視線を巡らせた。

 そして、口を開く。

「……静かすぎないか?」

 ――と。

 中間テストが終わり、部活動が再開したというのに、この部室以外の音がしない。そのことに気付き、架瑠はぶるりと身体を震わせた。

 静寂が、耳に痛い。

 キィーンと音がするような気がして、架瑠は浅く息を繰り返した。

「大丈夫か?」

 心配そうな紬の声に、架瑠はハッとしたように顔を上げて、こくりとうなずく。

 自身の心を落ち着かせるように、深呼吸をしてから、じっと黒板の血文字を見つめた。

「……」

 架瑠の紫苑の瞳が、淡く光る。

 血文字から情報を読み取ろうと試みたが、なにも視えなかった。――いや、違う。ることを、彼の心が拒んだ。

 はっはっはっ、と架瑠の息が浅く早くなる。

 そのことに気付いた紬が、彼に近付いて「おい!」と乱暴に肩を掴んだ。

 架瑠と視線を合わせ、その瞳に確かな恐怖を見て、紬は困惑したように彼の目を大きな手で覆う。

(なにを視た――……?)

 紬は彼の様子に黒板の血文字を改めて凝視する。鮮やかな赤色が、段々と黒ずんだ赤色に変わっていくのがわかった。

 だが、『かける』『にげて』の文字だけ黒ずまず、鮮やかなままだ。

「黒板の血文字だけ……というわけではなさそうだ」

 いつの間にか佑心が部室の扉の前まで移動していた。引き戸の扉をぐっと開けようとしたが、ビクともしない。

「……私たち、閉じ込められた、のですか……?」

 茉莉が身体をカタカタと震わせながら、不安げに言葉をこぼす。

「どうやらそのようだ。……時刻は午後四時四十四分のまま、時計が動いていないようだね」

 佑心が壁時計を見上げる。紬は自身の銀色の腕時計に視線を落とし、彼の言う通り午後四時四十四分で止まっていることを確認してから、茉莉に顔を向けた。

「スマートフォンはどうだ?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね……!」

 茉莉がわたわたと鞄からスマートフォンを取り出し、時刻を見ようとして――待ち受け画面が文字化けしていることに気付く。

「え、えっ? 圏外!?」
「――この部室だけ、異界に取り込まれた……?」

 紬の手に自分の手を重ね、架瑠がつぶやいた。
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